日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG58] 岩石―流体相互作用の新展開:表層から沈み込み帯深部まで

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:00 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、片山 郁夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、中島 淳一(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、座長:武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、片山 郁夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)

14:00 〜 14:15

[SCG58-07] 東北地方中央部における3次元地殻流体分布

*増田 章吾1小川 康雄1,2市來 雅啓3 (1.東京工業大学理学院地球惑星科学系、2.東京工業大学理学院火山流体研究センター、3.東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター)

キーワード:地殻流体

東北地方中央部では1990年以降火山や内陸地震を対象とした地殻構造研究のために多くの広帯域MT観測が行われてきた。(例えば Ogawa et al., 2014)。しかし、東北地方中央部の地殻構造は未だ広域的に解析されていない。本研究では過去30年間に行われた590地点の広帯域MTデータから、詳細な広域地殻構造とマントル構造を3次元的に解明し、活火山・内陸地震域における地殻流体の3次元分布の解明を目的とする。
本発表では、鬼首カルデラを中心とした南北50km、西40kmの範囲のデータから、3次元インバージョン解析を行った。利用データは410観測点における0.4秒〜1,300秒の8周期のインピーダンスとティッパーである。解析にはWSINV3DMTコード(Siripunvaraporn and Egbert, 2009)を用い、インピーダンスおよびティッパーのエラーフロアーはそれぞれ10%,20%とした。得られた最終モデルはRMS=2.99である。
最終モデルでは、地殻深部(深度20km〜30km)では火山弧に沿ってSSW-NNE方向に連続した低比抵抗帯が存在していることがわかり、Ichiki et al.(2015)で示しされ上部マントルの低比抵抗異常に連結する。前弧側の宮城県北部地域は、地殻深部にブロック状の低比抵抗異常が存在することが確認され、流体上昇域と考えられる。これら深部地殻の低比抵抗は、広域的な脊梁沿いと前弧側の歪集中域(Miura et al., 2004)と対応する。火山弧に沿った地殻深部の低比抵抗帯は、鳴子火山、栗駒山、鬼首カルデラ、高松岳に向かって枝分かれしながら深度10kmまで局所的に上昇している。この深度10kmの火山体の低比抵抗は、InSARによって推定される2011年の東北地方太平洋沖地震のコサイスミックな沈降域(Takada and Fukushima, 2013)と良い相関が見られる。