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[SCG58-15] 四万十帯メランジュにおける構造地質学的・地球化学的特徴:海溝型地震における断層での岩石−水相互作用
キーワード:地震、断層、沈み込み帯
本研究では,プレート沈み込みに関連したメランジュユニット内での滑り挙動や,主断層の特徴を理解するために,紀伊半島四万十帯日高川層群美山累層三尾メランジュ内のスリップゾーンを研究対象とした.断層とその周辺の母岩のフィールド調査を実施し,そこで採取したサンプルを用いて,微小構造観察・鉱物組成分析・地球化学的分析・流体岩石相互作用の数値解析的評価・アルバイト化の数値解析的評価を行った.微小構造観察の結果,スリップゾーンでは,複合面構造が発達し,鉱物の粒子やその破片がR1面や Y面に沿って優先的に配列しており,サブミクロンサイズのアルバイト粒子が多く存在している.鉱物組成分析の結果,スリップゾーンは母岩と比較して,石英とイライトの減少,斜長石の増加が確認された.また,地球化学的分析の結果,スリップゾーンではSr, Rb, Csなどの流体に濃集しやすい元素の濃度が,母岩と比較して大きく変化をしていることが分かった.これらの元素濃度データを用いた数値解析により,三尾メランジュ内のスリップゾーンでは,アルバイト化を伴う,350 ℃程度の高温での流体−岩石相互作用が生じたことが示唆される.このようなスリップゾーンでの高温流体の発生は,地震時の断層での摩擦発熱によるもので,有効垂直応力を低下させ,急激な動的弱化(熱圧化:thermal pressurization)を引き起こし,大きな海底面の変動及び巨大津波発生を引き起こす可能性がある.