日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 広域観測・掘削・微視的実験協働沈み込み帯地震の場とメカニズム

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (20) (オンラインポスター)

コンビーナ:木下 正高(東京大学地震研究所)、荒木 英一郎(海洋研究開発機構)、Hiroko Kitajima(Texas A&M University College Station)、廣瀬 丈洋(国立研究開発法人海洋研究開発機構 高知コア研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[SCG61-P05] 南海トラフ室戸沖プレート境界断層周辺に発達する充填鉱物の分布解明:掘削コア試料のX線CTデータからのアプローチ

*野村 夏希1藤内 智士1、福島 颯1 (1.高知大学)


キーワード:方解石、重晶石、X線コンピュータートモグラフィー、海洋掘削計画、国際深海科学掘削計画、南海沈み込み帯

地殻における充填鉱物の分布は地殻の強度や浸透率に影響する可能性があり,地殻変動を理解する上で重要な情報である.高知県室戸岬沖でInternational Ocean Discovery Program(IODP)において掘削された室戸沖付加体先端部に当たるC0023サイトでは,海底下775–1121 mにて熱水性の充填鉱物が報告され,複数の時期や成因によってできている可能性が示唆された.そこで本研究では,複数回の国際海洋科学掘削において採取された,Ocean Drilling Program(ODP)の1173,1174,808サイトの3サイトのコア試料のX線コンピュータートモグラフィー(XCT)データを用いて,室戸沖海底下にて充填鉱物帯の空間分布について調べた.これらのうち,1173サイトは南海トラフの海側に位置し,その他のサイトは南海付加体の先端部に位置する.これらのサイトでは,基盤である玄武岩の上に中期中新世以降の半遠洋性堆積物および海溝充填堆積物が重なり,これらは岩相に基づいて下位から,下部四国海盆相,上部四国海盆相,海溝充填相に分けられる.
3つのサイトごとに作成したXCTデータを様々な空間スケールで解析した.全体に焦点を置き,まず堆積層の平均CT値に注目すると,深度方向に約1100から1800まで徐々に上昇していく.その中で,平均CT値が2000から9000に達するスパイクの集中領域が複数の深度で見られる.トラフ海側斜面に位置する1173サイトでは,このスパイクの集中領域が明瞭であり,海溝充填相から上部四国海盆相の上部まで,下部四国海盆相の最上部からデコルマン相当層準まで,および下部四国海盆相の下部の3箇所に発達する.また,他の2サイトでも1173サイトと同層準に高CT値のスパイクが集中する.高い平均CT値のスパイクが集中する領域では,厚さ数cmほどの高い平均CT値の箇所が数mから数十mに1つの間隔で分布している.高い平均CT値が集中する3箇所は,XRDデータや肉眼観察で報告されているカルサイトが多い箇所とほぼ一致する.このことから,カルサイトの濃集が高い平均CT値の原因と考えられる.高いCT値が集中する層準が全てのサイトで共通していることから,カルサイトの濃集は対象地域の広域に側方で広がっており,濃集は付加作用の前に発生したと考えられる.
次に,サイトごとの高CT値領域の詳細な分布を調べるために,高CT値を,主にカルサイトに対応する3000–4000,主にパイライトに対応する4000–10000,バライトに対応する10000以上,の3つに区分して,それらの分布を解析した.その結果,10000以上の高いCT値は,上記の平均CT値が高いスパイクが集中する領域のうち,下位の2箇所で抽出された.