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[SCG62-P01] 海洋リソスフェアにおける自発的沈み込み開始の数値シミュレーション実験:含水断裂帯のレオロジー効果について
キーワード:断裂帯、自発的沈み込み開始、数値シミュレーション、拡散クリープ、アンチゴライト、断層強度
海洋プレート間の断裂帯やトランスフォーム断層では,密度のコントラストが存在するため,海洋内で自発的に沈み込みが開始される可能性がある.海洋トランスフォーム断層などで採取されたかんらん岩試料を用いた最近の岩石学的研究から,トランスフォーム断層への海水浸透により含水鉱物(例えば,角閃石,緑泥石,蛇紋岩)が生成すること,動的再結晶したかんらん石が拡散クリープ変形することが明らかになった.そこで本研究では,沈み込み開始に対する含水断裂帯のレオロジー効果を理解するために,海洋リソスフェアにおける自発的沈み込み開始の2次元粘弾塑性数値シミュレーションを実施した.数値モデルでは,断裂帯への海水の浸入により,間隙流体圧の存在とともに,蛇紋岩化(アンチゴライト化)と,マントルかんらん岩の水和が起こると仮定した.モデルでは,沈み込むプレートと沈み込まれるプレートの間のある年齢差において,断裂帯全体にアンチゴライトのべき乗クリープ則とかんらん石の拡散クリープ則(粒径10 μm以下)を考慮すると,プレートの沈み込みを促進する働きをする低粘性の剪断帯の形成につながることが示された.しかし,断裂帯にアンチゴライトの脱水深度を考慮すると,沈み込みを開始させるためには,著しく低い有効摩擦係数μ'(=0.01以下)が必要であることが分かった.