日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM14] Electric, magnetic and electromagnetic survey technologies and scientific achievements

2023年5月23日(火) 13:45 〜 15:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:馬場 聖至(東京大学地震研究所)、後藤 忠徳(兵庫県立大学大学院理学研究科)、Yuguo Li(Ocean University of China)、Wiebke Heise(GNS Science, PO Box 30368, Lower Hutt, New Zealand)、座長:馬場 聖至(東京大学地震研究所)、鈴木 健士(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)

14:15 〜 14:30

[SEM14-03] Electrical conductivity of rocks containing smectite computed by finite element method

*青山 健太郎1橋本 武志1 (1.北海道大学)

キーワード:導電率、スメクタイト

電磁探査で得られる地下の比抵抗構造は、岩石の空隙率、間隙流体の塩分濃度、温度など様々な物理的特性を反映する。特に、約50℃から230℃の温度で熱力学的に安定な粘土鉱物であるスメクタイトは、地下浅部の低比抵抗構造に多く含まれることが知られている。しかし、スメクタイトがバルク比抵抗に及ぼす影響は定量的に十分解明されていない。先行研究では、アイスランドのKrafla火山のコアデータを用いて、スメクタイトを含む岩石のバルク導電率を計算できる等価回路モデルが提案された(Levy et al., 2018)。しかし、先行研究で使用されたコア中のスメクタイトの質量分率は最大でも50 wt%であり、また、スメクタイト粒子の配列パターンや温度とバルク導電率の関係は依然として明らかになっていない。そこで、本研究ではスメクタイトを含む岩石のバルク導電率を、有限要素法により、スメクタイトの体積分率、温度、間隙水のNaCl濃度、空隙率の4つの条件を変化させて計算した。空隙率や、石英の基質に占めるスメクタイトの体積分率などのマクロな物性に基づき、各要素にランダムに、鉱物または液相の導電率テンソルを割り当てる方針を採用した。なお、スメクタイトの導電率テンソルは、T-O-T層に対して水平方向は層間水の導電率とし、鉛直方向はSiO4四面体の導電率(定数で10-12 S/m)とした。また、石英とNaCl流体の導電率テンソルは、等方テンソルを仮定した。シミュレーションの結果、空隙率が 0.01 から 0.4 の場合、バルク導電率は鉱物と液相の配列パターンに大きく依存することが分かった。一方、空隙率が0.01以下では、バルク導電率は配列パターンの影響を受けにくく、スメクタイトの体積分率、温度、間隙水のNaCl濃度、の関数として近似的に表されることがわかった。本研究で得られた結果は、スメクタイトの体積分率、温度、塩分濃度、空隙率、鉱物と液相の配置パターンを、コア物性試験や地化学調査等により得られたデータをもとに、先見的に適切な範囲に拘束することで、岩石のバルク導電率からこれらの値を統計的に逆推定できる可能性を示唆するものであった。