日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM15] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2023年5月23日(火) 09:00 〜 10:15 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:吉村 由多加(九州大学大学院比較社会文化研究院)、臼井 洋一(金沢大学)、座長:吉村 由多加(九州大学大学院比較社会文化研究院)、加藤 千恵(九州大学比較社会文化研究院)、北原 優(九州大学 大学院 比較社会文化研究院)


09:00 〜 09:15

[SEM15-01] 阿蘇中岳火山2019-2020年噴火に伴う噴出火山灰の岩石磁気学的研究―噴火プロセスと磁性鉱物の磁気的特徴の変化―

*穴井 千里1大倉 敬宏2、吉川 慎2望月 伸竜3 (1.高知大学海洋コア総合研究センター、2.京都大学火山研究センター、3.熊本大学)


キーワード:阿蘇中岳火山、岩石磁気

本研究では、2019年7月にマグマ噴火を開始した阿蘇中岳火山から噴出した火山灰試料を準リアルタイムで採取し、各種岩石磁気測定を行い磁気特性の時系列変化の有無を確認した。試料採取時期は2019年8月から2020年6月の噴火停止までの期間で、全39試料を解析している。
まず、熱磁気分析および3軸IRM熱消磁実験を行い、キュリー温度および含有磁性鉱物の推定を行なった。火山灰中の主要な磁性鉱物はチタンに富むチタン磁鉄鉱であり、これ以外に、チタンに乏しいチタン磁鉄鉱も確認された。飽和磁化(Ms)、飽和残留磁化(Mrs)、保磁力(Bc)および残留保磁力(Bcr)をヒステリシス測定から抽出し、Day plotで検討を行なった結果、およそ1年間の連続的な噴火活動から得られた火山灰の系統的な磁気特性は、時期により変化していることが明らかとなった。より詳細に時間変化を確認すると、Mrs/MsとBcの値が上昇する期間が存在しており、通常の期間はMrs/Msが0.25前後であるのに対し、上昇している期間はおよそ0.45となった。FORC測定の結果、Mrs/MsとBcの値が上昇する期間では、” 相互作用のない単磁区粒子(non-interacting single-domain grains)”が出現しており、Mrs/MsとBcの上昇は、相互作用のない単磁区粒子の影響である可能性が示唆された。また、熱磁気分析の結果から推定したキュリー温度も、チタンに富むチタン磁鉄鉱については、わずかながら変動していることが確認された。キュリー温度とMrs/Msの関係を確認すると、逆相関関係にあることがわかった。これは、Mrs/MsとBcが上昇する期間は、チタンに富むチタン磁鉄鉱のキュリー温度が低くなる、つまりチタン含有量がわずかに増加していることを示す。
岩石磁気特性の時間変化と火山現象との関係性に着目すると、Mrs/MsとBcの値が上昇する期間は、火映現象が観測された時期とよく一致していることが明らかとなった。火映現象が起こるプロセスは未だ詳細に解明されていないが、マグマヘッドの位置や温度など、火道内部の物理現象に起因するものであると考えられる。これらの結果は、火山灰中のチタン磁鉄鉱の磁気特性が、火道内部の物理的条件の変化を反映していることを示唆する。