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[SEM15-P13] 磁気分離継代培養によるMagnetospirillum magnetotacticum MS-1マグネタイト合成個体群の増加
キーワード:古地磁気、磁性細菌
Magnetospirillum magnetotacticum MS-1は微好気性の走磁性細菌で,直鎖状配列のマグネタイト粒子群を合成し,実験室での培養が可能である.しかし,実験室で培養するとマグネタイトを合成しない個体群が優勢になる傾向がある.例えば,堆積物が獲得する残留磁化へのMS-1個体群の量的重要性の検討を行うには,マグネタイト合成個体群が大量に必要であり,そのためには長期にわたるMS-1の大量培養サイクルが多数回必要になるなどの課題がある.
本研究では,MS-1のマグネタイト合成個体群の割合を増加させるため,磁気分離を適用してマグネタイト合成個体群を選択的に植え継ぐ「磁気分離継代培養」を行った.今回は,0代目から10代目まで,合計10回の磁気分離と植え継ぎを行った.磁気測定に十分な個体数を確保するため,2,4,6,8,10代目の少量培養をもとに,それぞれ大量培養を行い,MS-1を濃縮した懸濁液を用意した。この懸濁液と片栗粉0.1 gを混合して遠心分離し,真空凍結乾燥することで,磁気測定用試料を作製した.MPMSによる低温磁気測定の結果,磁気モーメントは4代目まで増加したが,以降減少に転じた.また,蛍光顕微鏡の視野下でMS-1の個体数も計数したところ,個体の総数は4代目まで増加したが,以降は減少に転じた.従って,4回目の磁気分離まではマグネタイト合成個体群の割合が増加していると考えられる.さらに,6代目及び10 代目を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ,マグネタイト合成個体群の割合は6 代目は3 %,10 代目は1 %であったが,1個体あたりの確認できたマグネタイト合成数は6代目で約30個,10代目は約50個であった.
磁気分離継代培養のサイクルを繰り返す中途で磁気モーメントと個体の総数が最大になったのには以下の要因が考えられる.実験室培養により,マグネタイトを合成しないが増殖速度が速い「非マグネット型」と,マグネタイトを合成するが増殖速度が遅い「マグネット型」の2つの型が発生したと考えられる.磁気分離を繰り返すと次第に後者が優勢になると共に,その性質が強化される結果,細胞内マグネタイトの数が増加する一方,培養後の個体総数は減少していくが,これらの傾向のバランスにより,4代目で最大になったと考えられる.
よって,磁気分離継代培養4代目で最大のMS-1マグネタイト合成個体群が得られることを結論とした.
本研究では,MS-1のマグネタイト合成個体群の割合を増加させるため,磁気分離を適用してマグネタイト合成個体群を選択的に植え継ぐ「磁気分離継代培養」を行った.今回は,0代目から10代目まで,合計10回の磁気分離と植え継ぎを行った.磁気測定に十分な個体数を確保するため,2,4,6,8,10代目の少量培養をもとに,それぞれ大量培養を行い,MS-1を濃縮した懸濁液を用意した。この懸濁液と片栗粉0.1 gを混合して遠心分離し,真空凍結乾燥することで,磁気測定用試料を作製した.MPMSによる低温磁気測定の結果,磁気モーメントは4代目まで増加したが,以降減少に転じた.また,蛍光顕微鏡の視野下でMS-1の個体数も計数したところ,個体の総数は4代目まで増加したが,以降は減少に転じた.従って,4回目の磁気分離まではマグネタイト合成個体群の割合が増加していると考えられる.さらに,6代目及び10 代目を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ,マグネタイト合成個体群の割合は6 代目は3 %,10 代目は1 %であったが,1個体あたりの確認できたマグネタイト合成数は6代目で約30個,10代目は約50個であった.
磁気分離継代培養のサイクルを繰り返す中途で磁気モーメントと個体の総数が最大になったのには以下の要因が考えられる.実験室培養により,マグネタイトを合成しないが増殖速度が速い「非マグネット型」と,マグネタイトを合成するが増殖速度が遅い「マグネット型」の2つの型が発生したと考えられる.磁気分離を繰り返すと次第に後者が優勢になると共に,その性質が強化される結果,細胞内マグネタイトの数が増加する一方,培養後の個体総数は減少していくが,これらの傾向のバランスにより,4代目で最大になったと考えられる.
よって,磁気分離継代培養4代目で最大のMS-1マグネタイト合成個体群が得られることを結論とした.