15:30 〜 17:00
[SGD01-P05] 日本縦断測線を用いたバネ式相対重力計のスケールファクター検定
キーワード:重力、スケールファクター、相対重力計、絶対重力計、火山
重力は質量分布の空間積分値であるため、可搬型バネ式相対重力計を用いたキャンペーン重力測定によって火山内部の質量時空間変動を把握することができる。そもそも、相対重力計は内部にバネを有しており、読取値x(バネの伸びに相当)をメーカー作成の変換関数fに代入することで相対重力値を推定している。ただし、この変換関数fが真の値からずれている場合には相対重力値に系統誤差が含まれてしまう。真の相対重力値gを求めるには、相対重力計と絶対重力計を用いた並行測定を実施し、相対重力計のスケールファクター(SF;Sと記す)を決定する必要がある。SFは相対重力差に対する絶対重力差の比として計算でき、正しい相対重力値はg=f(x)*Sと表現できる。
従来SFは各相対重力計に固有の定数値として扱われていた。しかし、Onizawa (2019)はある1台の Scintrex型CG5相対重力計のSFが読取値に対して1次依存していること(S=S(x))、および読取値が器械ドリフトにより時間変化することにともなってSFも結果的に時間変化すること(S=S(x(t)))を示した。ただし、Onizawa (2019)は1つの相対重力計についてのみ議論しており、SFの読取値依存性がLaCoste型や他のScintrex型の個体にも見られるかについては言及していない。火山地域での重力観測にはScintrex型のみならずLaCoste型も多く用いられるため、火山地域の重力時空間変化を正確に把握するにはLaCoste型のSFについても調査する必要がある。
そこで我々は、LaCoste型5台とScintrex型1台のSFを検定するため、2020年〜2022年に北海道から沖縄の複数重力点で並行測定を実施し、各種補正を施すことで相対重力値を決定した。次に、相対および絶対重力値に対して陸水補正を施した上で、SF値を決定した。その結果、6台の相対重力計についてSFが読取値に対して線形変化することが明らかになり、変化量の最大値は LaCoste型G791 相対重力計で 1.003 * 10^(-6) /mGalとなった。このことは、500 mGalの読取値範囲においてSFが最大0.0005変化することを意味し、もし0.0005の誤差を含むSFを用いて200 mGalの重力差を補正すると最大100 microGalの系統誤差が生じる可能性がある。
また、我々は2020年10月〜2022年9月に阿蘇地域で相対重力キャンペーン観測を実施し、得られた相対重力値に対して3通りの方法でSF補正を行った。[1] SFを1とする方法。[2] SFに定数を用いる方法。[3] SFの読取値依存性を考慮する方法。その結果、異なる相対重力計での系統誤差は[1]→[2]→[3]の順に低減した。また、相対重力平均値の誤差は[1] 49 microGal、[2] 13 microGal、[3] 10 microGalとなり、[3]の方法で最も相対重力値を精度よく決定できることが分かった。
さらに我々は、2022年10月に阿蘇地域のAVL重力点と他の絶対重力点間で相対重力測定を実施し、[1]〜[3]の方法でSF補正を行った。その結果、[3]の方法で補正した場合にAVLの絶対重力値を20 microGalの精度で決定することに成功した。また、この重力値を2022年11月の絶対重力実測値と比較したところ両者のずれは1 microGalとなり、SFの読取値依存性を考慮する(方法[3])ことで絶対重力値を高精度かつ高確度で推定できることが分かった。
従来SFは各相対重力計に固有の定数値として扱われていた。しかし、Onizawa (2019)はある1台の Scintrex型CG5相対重力計のSFが読取値に対して1次依存していること(S=S(x))、および読取値が器械ドリフトにより時間変化することにともなってSFも結果的に時間変化すること(S=S(x(t)))を示した。ただし、Onizawa (2019)は1つの相対重力計についてのみ議論しており、SFの読取値依存性がLaCoste型や他のScintrex型の個体にも見られるかについては言及していない。火山地域での重力観測にはScintrex型のみならずLaCoste型も多く用いられるため、火山地域の重力時空間変化を正確に把握するにはLaCoste型のSFについても調査する必要がある。
そこで我々は、LaCoste型5台とScintrex型1台のSFを検定するため、2020年〜2022年に北海道から沖縄の複数重力点で並行測定を実施し、各種補正を施すことで相対重力値を決定した。次に、相対および絶対重力値に対して陸水補正を施した上で、SF値を決定した。その結果、6台の相対重力計についてSFが読取値に対して線形変化することが明らかになり、変化量の最大値は LaCoste型G791 相対重力計で 1.003 * 10^(-6) /mGalとなった。このことは、500 mGalの読取値範囲においてSFが最大0.0005変化することを意味し、もし0.0005の誤差を含むSFを用いて200 mGalの重力差を補正すると最大100 microGalの系統誤差が生じる可能性がある。
また、我々は2020年10月〜2022年9月に阿蘇地域で相対重力キャンペーン観測を実施し、得られた相対重力値に対して3通りの方法でSF補正を行った。[1] SFを1とする方法。[2] SFに定数を用いる方法。[3] SFの読取値依存性を考慮する方法。その結果、異なる相対重力計での系統誤差は[1]→[2]→[3]の順に低減した。また、相対重力平均値の誤差は[1] 49 microGal、[2] 13 microGal、[3] 10 microGalとなり、[3]の方法で最も相対重力値を精度よく決定できることが分かった。
さらに我々は、2022年10月に阿蘇地域のAVL重力点と他の絶対重力点間で相対重力測定を実施し、[1]〜[3]の方法でSF補正を行った。その結果、[3]の方法で補正した場合にAVLの絶対重力値を20 microGalの精度で決定することに成功した。また、この重力値を2022年11月の絶対重力実測値と比較したところ両者のずれは1 microGalとなり、SFの読取値依存性を考慮する(方法[3])ことで絶対重力値を高精度かつ高確度で推定できることが分かった。