15:30 〜 17:00
[SGD01-P14] 干渉SAR時系列解析の公共測量への活用に向けた取組
キーワード:干渉SAR時系列解析、だいち2号、公共測量
はじめに
国土地理院では、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の観測データを用いたSAR干渉解析を実施し、得られたSAR干渉画像により日本全国の地殻・地盤変動を監視している。これまでに、地震や火山活動に伴う詳細な地殻変動を把握し、得られた情報は地震や火山活動の評価等に活用されている。
一方、国土地理院による地殻変動監視の目的の一つには、公共測量をはじめ位置情報サービス等の様々な分野での位置情報の基準となる「国家座標」を高い精度で維持・管理することがある。干渉SARで得られる変動情報は、地震や火山活動評価等には活用されてきたものの、精度が十分ではなかったことなどの理由から、これまでは国家座標の維持・管理や公共測量等に直接活用されていなかった。しかしながら、ALOS-2の観測データが蓄積されたことで、多数のSAR干渉画像を統計的に処理する干渉SAR時系列解析を実施する環境が整い、より高い精度の変動情報を得ることが可能になってきた。
このような背景から、ALOS-2の観測データを用いて全国を対象とした干渉SAR時系列解析を行い、その結果を「国家座標」の維持・管理等に活用するための取組を進めている。2022年4月には国土地理院による干渉SAR時系列解析を基本測量(国土地理院が行うすべての測量の基礎となる測量)に位置づけ、2023年1月時点で、解析が完了した北海道地域及び東日本地域の解析結果について先行的に一般に公開している(https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/gsi_sar.html)。また、干渉SAR時系列解析と水準測量を用いて、一般の測量業者等がこれまでよりも空間分解能の高い上下変動情報を得るための測量方法を検討している。
本発表では、現在検討を進めている干渉SAR時系列解析結果と水準測量を用いた上下変動情報を得るための測量方法について報告する。
干渉SAR時系列解析の概要
干渉SAR時系列解析は、2014年から2021年の約7年間のALOS-2の観測データを、国土地理院で開発したGSITSA(小林ほか, 2018)により実施している。公開している解析結果は、衛星視線方向の変位速度(南行・北行軌道)、これらを用いた2.5次元解析(Fujiwara et al., 2000)による準上下・準東西方向の変位速度である。なお、干渉SAR時系列解析の入力データとなる干渉画像には、対流圏遅延補正、電離層遅延補正、GNSS補正を適用している。また、平常時の局所的な変動を把握するため、電子基準点から求めた広域な地殻変動や地震時の地殻変動は推定除去している。
上下変動量を得るための測量方法
公開している変位速度情報は、広域の地殻変動等を推定除去していること、得られる上下の変位速度が必ずしも実際の上下方向とは一致しないことなどから、従来から行われている水準測量の結果と一致するとは限らない。そのため、水準測量による結果と組み合わせることで、より正確な上下変動量の分布を得る方法を検討している。
検討している方法は、まず対象地域の一部において水準測量を実施し、水準点における水準測量と干渉SAR時系列解析結果との差を用いて干渉SAR時系列解析結果を補正し、上下変動量を求めるものである。本発表では、水準測量の作業量及び補正方法などの詳細について、検討した結果について報告する。
謝辞
解析に用いたALOS-2観測データは、「陸域観測技術衛星2号に関する国土地理院と宇宙航空研究開発機構の間の協定」に基づいて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から提供を受けた。原初データの所有権はJAXAにある。
対流圏遅延補正に用いた気象庁数値気象モデルは、「電子基準点等観測データ及び数値予報格子点データの交換に関する細部取り決め協議書」に基づき、気象庁から提供を受けた。
GNSS補正に用いたGNSSデータの一部は、気象庁、防災科学技術研究所から提供を受けた。
国土地理院では、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の観測データを用いたSAR干渉解析を実施し、得られたSAR干渉画像により日本全国の地殻・地盤変動を監視している。これまでに、地震や火山活動に伴う詳細な地殻変動を把握し、得られた情報は地震や火山活動の評価等に活用されている。
一方、国土地理院による地殻変動監視の目的の一つには、公共測量をはじめ位置情報サービス等の様々な分野での位置情報の基準となる「国家座標」を高い精度で維持・管理することがある。干渉SARで得られる変動情報は、地震や火山活動評価等には活用されてきたものの、精度が十分ではなかったことなどの理由から、これまでは国家座標の維持・管理や公共測量等に直接活用されていなかった。しかしながら、ALOS-2の観測データが蓄積されたことで、多数のSAR干渉画像を統計的に処理する干渉SAR時系列解析を実施する環境が整い、より高い精度の変動情報を得ることが可能になってきた。
このような背景から、ALOS-2の観測データを用いて全国を対象とした干渉SAR時系列解析を行い、その結果を「国家座標」の維持・管理等に活用するための取組を進めている。2022年4月には国土地理院による干渉SAR時系列解析を基本測量(国土地理院が行うすべての測量の基礎となる測量)に位置づけ、2023年1月時点で、解析が完了した北海道地域及び東日本地域の解析結果について先行的に一般に公開している(https://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/gsi_sar.html)。また、干渉SAR時系列解析と水準測量を用いて、一般の測量業者等がこれまでよりも空間分解能の高い上下変動情報を得るための測量方法を検討している。
本発表では、現在検討を進めている干渉SAR時系列解析結果と水準測量を用いた上下変動情報を得るための測量方法について報告する。
干渉SAR時系列解析の概要
干渉SAR時系列解析は、2014年から2021年の約7年間のALOS-2の観測データを、国土地理院で開発したGSITSA(小林ほか, 2018)により実施している。公開している解析結果は、衛星視線方向の変位速度(南行・北行軌道)、これらを用いた2.5次元解析(Fujiwara et al., 2000)による準上下・準東西方向の変位速度である。なお、干渉SAR時系列解析の入力データとなる干渉画像には、対流圏遅延補正、電離層遅延補正、GNSS補正を適用している。また、平常時の局所的な変動を把握するため、電子基準点から求めた広域な地殻変動や地震時の地殻変動は推定除去している。
上下変動量を得るための測量方法
公開している変位速度情報は、広域の地殻変動等を推定除去していること、得られる上下の変位速度が必ずしも実際の上下方向とは一致しないことなどから、従来から行われている水準測量の結果と一致するとは限らない。そのため、水準測量による結果と組み合わせることで、より正確な上下変動量の分布を得る方法を検討している。
検討している方法は、まず対象地域の一部において水準測量を実施し、水準点における水準測量と干渉SAR時系列解析結果との差を用いて干渉SAR時系列解析結果を補正し、上下変動量を求めるものである。本発表では、水準測量の作業量及び補正方法などの詳細について、検討した結果について報告する。
謝辞
解析に用いたALOS-2観測データは、「陸域観測技術衛星2号に関する国土地理院と宇宙航空研究開発機構の間の協定」に基づいて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から提供を受けた。原初データの所有権はJAXAにある。
対流圏遅延補正に用いた気象庁数値気象モデルは、「電子基準点等観測データ及び数値予報格子点データの交換に関する細部取り決め協議書」に基づき、気象庁から提供を受けた。
GNSS補正に用いたGNSSデータの一部は、気象庁、防災科学技術研究所から提供を受けた。