日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 地殻変動

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (11) (オンラインポスター)

コンビーナ:加納 将行(東北大学理学研究科)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、富田 史章(東北大学災害科学国際研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[SGD02-P09] 2018年フィジー深発地震に伴う広域的な地殻変動と、それに起因した重力変化

*田中 優作1 (1.名古屋大学地震火山研究センター)

キーワード:地震時重力変化、2018年フィジー深発地震、GRACE、GRACE-FO

本講演は、査読論文Tanaka (2023)の紹介である。

[論文]
Tanaka, Y. (2023) Coseismic Gravity Changes and Crustal Deformation Induced by the 2018 Fiji Deep-Focus Earthquake Observed by GRACE and GRACE-FO Satellites, Remote Sens. 15(2), 495, https://doi.org/10.3390/rs15020495

[概要]
地表面から 300 km 以深で発生した地震を深発地震と呼ぶ。今世紀に発生した Mw 8.0 以上の深発地震は、2013年のオホーツク深発地震(Mw8.3)と、2018年8月19日のフィジー深発地震(Mw8.2)のみである。このうち2013年オホーツク深発地震は、地震計が観測した地震波や、GNSS観測網によって検出された地表変位、そしてGRACE衛星によって検出された重力変化に基づいて多角的に研究されている。一方2018年フィジー深発地震は、地震波のデータに基づいた研究こそ活発に行われているものの、震央近傍にGNSS観測点が存在せず、地震に伴う地殻変動の観測報告は存在しなかった。また、GRACEやGRACE-FOで深発地震の地震時重力変化を検出するためには、地震前と地震後のデータを別々にスタックして差を取る必要があるため、地震後数年以上のデータが必要であり、これまで重力変化は検出されていなかった。

本研究では、2013年オホーツク深発地震の事例を参考に、データが既に十分に蓄積され、2018年フィジー深発地震の地震時重力変化を検出する準備が整ったと判断し、その検出を試み、それに成功した。しかも、その変化は2013年オホーツク深発地震の地震時重力変化より明瞭であった。この理由は、オホーツクの場合は重力の時系列に陸水の情報が強く含まれており、その分離が困難であった一方で、フィジーの場合は地震が海域で発生したため、陸水のシグナルが無く、地震のシグナルを明確に検出できたためである。

しかし、地震波のデータから推定される断層パラメータを用いて、深発地震を含め先行研究で広く利用されている計算方法[Sun et al., 2009]で重力変化を求めると、実際に検出された重力変化とは整合しなかった。この原因は、観測誤差や、地震波のデータから深発地震の断層破壊プロセスを求める際の不確かさ、そして2018年フィジー深発地震の発生源周囲の物理構造の特異的な複雑さにあるだろう。よって今後は、衛星重力計測と地震波のデータを組み合わせ、より現実的な地球モデルを利用した新たな研究が必要である。

なお、本研究ではさらに、検出された重力変化を説明する矩形断層モデルを構築し、固体地球表面の地震時変位を求めた。これは上記のような不確かさこそあるものの、2018年フィジー深発地震に伴う地殻変動を求めた最初の事例である。