10:45 〜 12:15
[SGD02-P13] 気象研究所におけるGNSS対流圏遅延補正プログラムの開発(第3報)
キーワード:GNSS、対流圏遅延、数値気象モデル
はじめに
気象研究所では2021年度より気象庁の数値気象モデルを用いたGNSS対流圏遅延補正プログラムの開発を進めている.2022年度には屈折による視線方向が変化する(Bending)効果を導入するなど、いくつかの点でプログラムを改良した(奥山他, 2022).今回、これまで平面として扱っていた地表面について、球面の効果を一部導入したので、その結果について報告する.
データと手法
GNSSの対流圏遅延補正は、何らかの遅延量分布を天頂遅延量とMapping Functionの形で先験的に与え、先験的モデルからの差異を座標値とともに推定する手法が一般的である.本研究では、既存の先験的対流圏遅延モデルであるVMF1(Boehm et al., 2006)を、2017~2019年の気象庁メソ解析モデル面データ(水平間隔:5km、鉛直面数:50面、時間間隔:3時間)から計算した遅延モデルで置き換える形で補正を行った.
今回、球面の効果を入れるため、積分距離と入射角について見直しを行った.厚さΔhの大気の層に下から仰角eで射出されるレイパスを考える場合、平面成層構造であれば積分距離はΔh/sin(e)であるが、球殻構造ではこれより短くなる.また、すぐ上にある層への入射角も、平面成層構造の場合(π/2-e)よりも小さくなる.これらの差を考慮した式で数値積分およびbending効果計算のルーチンを置き換えることで球面の効果を実装した.なお、GNSS解析には気象庁火山監視課による解析にあわせ、Bernese 5.2を使用した.
補正結果
新たに計算した遅延モデルを検証するため、VMF1と仰角10度でのMapping Functionを比較した所、地表面を平面として扱っていた場合は0.2ほど過剰となっていた所、球面の効果を導入することで0.04程度の差へと改善した.これは上で説明した効果を導入することで、過剰評価となっていた積分距離が適正化されたためと考えられる.これを用いて実際に基線解析を行った所、座標値に大きな変化は見られなかったが、リピータビリティの評価では小さいながらも改善が見られた.
今後の方針
積分距離と入射角については球面の効果を導入したが、レイパスと各層との交点の計算は地表面を平面として行っているため、地球を球と考えた遅延量計算としては不完全である.今後、全ての計算で球面の効果を導入する予定である.
謝辞
座標値の計算には国土地理院によるGEONET点のRINEXおよびF5解を使用した.また、GNSSの解析については日本原子力研究開発機構 渡部豪氏に数多くの助言を頂いた.ここに記して感謝致します.
気象研究所では2021年度より気象庁の数値気象モデルを用いたGNSS対流圏遅延補正プログラムの開発を進めている.2022年度には屈折による視線方向が変化する(Bending)効果を導入するなど、いくつかの点でプログラムを改良した(奥山他, 2022).今回、これまで平面として扱っていた地表面について、球面の効果を一部導入したので、その結果について報告する.
データと手法
GNSSの対流圏遅延補正は、何らかの遅延量分布を天頂遅延量とMapping Functionの形で先験的に与え、先験的モデルからの差異を座標値とともに推定する手法が一般的である.本研究では、既存の先験的対流圏遅延モデルであるVMF1(Boehm et al., 2006)を、2017~2019年の気象庁メソ解析モデル面データ(水平間隔:5km、鉛直面数:50面、時間間隔:3時間)から計算した遅延モデルで置き換える形で補正を行った.
今回、球面の効果を入れるため、積分距離と入射角について見直しを行った.厚さΔhの大気の層に下から仰角eで射出されるレイパスを考える場合、平面成層構造であれば積分距離はΔh/sin(e)であるが、球殻構造ではこれより短くなる.また、すぐ上にある層への入射角も、平面成層構造の場合(π/2-e)よりも小さくなる.これらの差を考慮した式で数値積分およびbending効果計算のルーチンを置き換えることで球面の効果を実装した.なお、GNSS解析には気象庁火山監視課による解析にあわせ、Bernese 5.2を使用した.
補正結果
新たに計算した遅延モデルを検証するため、VMF1と仰角10度でのMapping Functionを比較した所、地表面を平面として扱っていた場合は0.2ほど過剰となっていた所、球面の効果を導入することで0.04程度の差へと改善した.これは上で説明した効果を導入することで、過剰評価となっていた積分距離が適正化されたためと考えられる.これを用いて実際に基線解析を行った所、座標値に大きな変化は見られなかったが、リピータビリティの評価では小さいながらも改善が見られた.
今後の方針
積分距離と入射角については球面の効果を導入したが、レイパスと各層との交点の計算は地表面を平面として行っているため、地球を球と考えた遅延量計算としては不完全である.今後、全ての計算で球面の効果を導入する予定である.
謝辞
座標値の計算には国土地理院によるGEONET点のRINEXおよびF5解を使用した.また、GNSSの解析については日本原子力研究開発機構 渡部豪氏に数多くの助言を頂いた.ここに記して感謝致します.