日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL21] 地球年代学・同位体地球科学

2023年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (7) (オンラインポスター)

コンビーナ:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(高知大学海洋コア総合研究センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SGL21-P01] 過去1200年間の日本産樹木年輪の単年輪炭素14年代測定

*坂本 稔1,2、箱﨑 真隆1、光谷 拓実3中塚 武4、中尾 七重5、横山 操6、門叶 冬樹5 (1.国立歴史民俗博物館、2.総合研究大学院大学、3.奈良文化財研究所、4.名古屋大学、5.山形大学、6.京都大学)

キーワード:炭素14年代法、年輪年代法、較正曲線、地域効果、微細構造

北半球の標準較正曲線であるIntCal20には,水月湖の年縞堆積物に加え,計10点の埋没樹および建築部材から得られた日本産樹木年輪の炭素14年代が採用された。しかしながら,その多くは5年輪ないし3年輪を1試料として測定した値である。Miyake et al. (2013) が屋久杉の年輪中に宇宙線イベントを検出して以来,その検証および同様なイベントの検出を目的とした,単年輪の炭素14年代が世界各地で急速に進んでいる。その過程で,大気中の炭素14濃度の地域差や,年単位の微細な変動も明らかになってきた。
発表者らは,日本列島周辺の大気中14C濃度の時間的・空間的な変動の解明と年代較正の高精度化を目的として,日本産樹木年輪の単年輪炭素14年代測定に取り組んでいる。年輪年代の判定は従来の幅による方法に加え,酸素同位体比年輪年代法の実用化により進捗し,各地・各時期の樹木年輪資料の入手が容易となった。測定試料の調製も酸素同位体比年輪年代法に用いるセルロース抽出法を応用することで効率化が進み,加速器質量分析法による単年輪の炭素14年代測定が蓄積しつつある。そこで今回,これまで断片的に報告してきた日本産樹木の単年輪炭素14年代をまとめて呈示する。
日本産樹木年輪の炭素14年代はこれまで,北半球用の標準較正曲線であるIntCalと,南半球用のSHCalの中間に位置する傾向にあり,南半球的な大気の進入の可能性が指摘されてきた。今回の資料も基本的には同様の挙動を示しているが,IntCalに沿った時期も見られる。単年輪での炭素14年代は未測定だが,IntCal20に採用された甲州市栖雲寺ツガ材はむしろIntCalと整合的で,SHCalに近づく伊勢神宮神域スギとは異なる挙動を示している。
箱根埋没スギと飯田市遠山川埋没ヒノキの炭素14年代の採用で,1世紀から3世紀にかけてのIntCal20の形状は,旧版のIntCal13から改訂された。しかしながら,炭素14年代の地域効果は日本列島内でも異なっている可能性があり,改訂の是非は十分に議論されなければならない。
本研究は科研費(23300325, 25282075, JP18H03594, JP22H00026),人間文化研究機構広領域連携型基幹研究プロジェクト,国立歴史民俗博物館共同研究,地球研プロジェクト(H-05),京都大学生存圏データベース(材鑑調査室)共同利用・共同研究の支援を受けた。

図1 過去1,200年間の日本産樹木年輪の炭素14年代の範囲。青線はIntCal20に採用された,5年輪ないし3年輪を1サンプルとして測定した資料。圓教寺ケヤキと青葉神社ヒノキはそれぞれ同一材