日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL21] 地球年代学・同位体地球科学

2023年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (7) (オンラインポスター)

コンビーナ:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(高知大学海洋コア総合研究センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SGL21-P07] 重晶石のプレドーズ効果とESR年代測定

*豊田 新1、山本 まりん2石橋 純一郎3 (1.岡山理科大学古生物学・年代学研究センター、2.岡山理科大学理学部応用物理学科、3.神戸大学海洋底探査センター)

キーワード:電子スピン共鳴、重晶石、年代測定、海底熱水域

海底の熱水域で生成する重晶石 (BaSO4) は、ESR(電子スピン共鳴)を用いて実用的に年代測定が行えることが示され[1]、沖縄や小笠原の海底熱水域に産する重晶石の年代が求められてきた[2, 3]。重晶石ではBaがRaに置換するため、これが主な自然放射線源となり、年代と共に生成するSO3ラジカルが鉱物中に蓄積する。このラジカル量をESRで定量することによって、年代を求める。

海底熱水性重晶石のESR年代測定を、より詳細で、確度、精度の高いものとするためには、総被曝線量をより正しく求める必要がある。このためには、これまで用いられてきた付加線量法よりも、測定誤差が小さくなる信号再生法が有利であると考えられる。重晶石の信号再生法を開発する過程で見いだされたプレドーズ効果について今回報告する。
試料として、70-150 yrとすでにESR年代の求められている沖縄トラフ海底熱水域から採取された試料(試料A)、また年代0と考えられる伊豆小笠原熱水域から採取した試料(試料B)を用いた。それぞれ、100, 300, 1000 Gyのガンマ線を照射した後に加熱を行って信号をいったん消去し、照射なしで同様の処理を行った試料と共に再度ガンマ線照射を行って、照射によるSO3ラジカルの生成効率を調べた。

その結果、試料Aについては照射を行った試料については信号の生成効率が変化したのに対し、試料Bについてはほとんど変化がなかった。試料による差異があるものの、生成効率が変化してしまう場合には総被曝線量を正しく求めることができない。昨年報告した、人為照射線量を再現できない場合があることについての原因が、このプレドーズ効果にあることが判明した。

References:
[1] Okumura, T., Toyoda, S., Sato, F., Uchida, A., Ishibashi, J., Nakai, S. (2010)ESR Dating of marine barites in chimneys deposited from hydrothermal vents. Geochronometria, 37, 57-61.
[2] Fujiwara, T., Toyoda, S., Uchida, A., Ishibashi, J., Nakai, S., and Takamasa, A. (2015) Subseafloor Biosphere Linked to Global Hydrothermal Systems; TAIGA Concept, Springer, Tokyo, 369-386.
[3] Fujiwara, T. (2018), Ph.D Thesis, Okayama University of Science.