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[SGL21-P08] 千葉石のESR年代測定に向けたシリカクラスレートにおけるラジカルの安定性評価:イソプロピルアミンシリカクラスレートを例に
キーワード:千葉石、合成シリカクラスレート、ラジカル種、熱安定性、電子スピン共鳴
シリカクラスレートとは,二酸化ケイ素(SiO2)がかご状の結晶構造を形成し,そのかごの中に炭化水素などのガス分子を包接している化合物で,水分子(H2O)がかご状構造を形成している天然のガスハイドレート(メタンハイドレート)と同様の結晶構造を持つ包接化合物である.千葉石は,ガスハイドレートの構造II型にあたる結晶構造を持つシリカクラスレートで,十二面体のかごと十六面体のかごが組み合わさって結晶構造が形成されており,メタン,エタン,プロパンやイソブタンといった炭化水素ガスがかごに包接されている.千葉石は,千葉県南房総市荒川の海洋堆積層群の石英脈から発見された(Momma et al., 2011).石英脈から発見されたことから堆積岩層の形成後に千葉石は生成されたと考えられているが,千葉石の生成年代についてはよく分かっていない.天然の千葉石にはtert-ブチルラジカルなどの有機ラジカル種が残存していることが電子スピン共鳴(ESR)観察により示されており,私たちはこれらの有機ラジカルを用いて千葉石の年代測定を試みている.千葉石に含まれるtert-ブチルラジカルはγ線照射により増加し,その熱安定性は石英のESR年代測定に用いられているAl中心やTi中心と同程度のため,千葉石の年代を決めるESR信号の候補として考えられている.しかし,天然の千葉石試料には様々な種類のガス分子が入っており,千葉石のアニーリング実験の結果からラジカルとゲスト分子の間で水素引抜反応などが起こっていると考えられている.そのため,ESR年代測定に必要な総被曝線量の評価には,シリカクラスレートにおけるラジカルの挙動について調べなければならない.そこで一種類の炭化水素ガスとしてプロパンを包接するシリカクラスレートの合成を試みたが,プロパンの水への溶解度が低く,合成は困難であった.そのため本研究では,イソブタンと分子の大きさがよく似ているイソプロピルアミンに着目し,これを包接した千葉石と同様の結晶構造を持つシリカクラスレートを合成することで,γ線照射によりできたラジカル種の温度変化による挙動を調べ,千葉石と合成シリカクラスレートでの比較を行うこととした.
テトラエトキシシラン(TEOS)と水を混合し,加水分解させてオルトケイ酸を作製した.オルトケイ酸にイソプロピルアミンを混ぜ,耐圧容器に入れて180 ºCで約1.5ヶ月静置した.合成試料に77 Kでγ線を照射し(6.3 kGy),360-690 Kまでアニーリングをし,加熱前後でESRによりラジカル種の観察を行った.計測には,Xバンド(9 GHz)ESR分光器を用いた.磁場変調は100 kHz,0.1 mT,マイクロ波強度については1 mWで測定した.
γ線照射した合成した試料では,イソプロピルアミン由来のラジカル種のESR信号が観察された.そのラジカル種は480 Kで減少し始めて,690 Kで消失した.発表では,イソプロピルアミンシリカクラスレート中のラジカルの熱安定性について紹介し,これまで行ってきた千葉石に見られたラジカルとの比較を行う.
テトラエトキシシラン(TEOS)と水を混合し,加水分解させてオルトケイ酸を作製した.オルトケイ酸にイソプロピルアミンを混ぜ,耐圧容器に入れて180 ºCで約1.5ヶ月静置した.合成試料に77 Kでγ線を照射し(6.3 kGy),360-690 Kまでアニーリングをし,加熱前後でESRによりラジカル種の観察を行った.計測には,Xバンド(9 GHz)ESR分光器を用いた.磁場変調は100 kHz,0.1 mT,マイクロ波強度については1 mWで測定した.
γ線照射した合成した試料では,イソプロピルアミン由来のラジカル種のESR信号が観察された.そのラジカル種は480 Kで減少し始めて,690 Kで消失した.発表では,イソプロピルアミンシリカクラスレート中のラジカルの熱安定性について紹介し,これまで行ってきた千葉石に見られたラジカルとの比較を行う.