日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP26] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2023年5月26日(金) 09:00 〜 10:15 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:針金 由美子(産業技術総合研究所)、中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、永冶 方敬(東京学芸大学)、座長:針金 由美子(産業技術総合研究所)、永冶 方敬(東京大学大学院理学系研究科)

09:45 〜 10:00

[SMP26-14] 地質構造のRank-1接続とキンク強化

*平野 光浩1、長濱 裕幸1 (1.東北大学)

キーワード:地質構造、バランス地質図、キンク褶曲、キンク強化、Rank-1接続

これまで結晶学や金属学を始めとする物質材料分野において、キンクバンドと呼ばれる物質中の局所で鋭利な屈曲部が報告されており、さまざまな研究がなされてきた。特に近年では、キンクバンド形成による材料の強化(キンク強化)が注目を集めており、この原理に基づく次世代構造材料が期待されている。地球科学においては顕微鏡スケールから露頭スケールでキンク褶曲として知られており、地質帯平面スケールでは、メガキンクと称されている。また、前縁褶曲-衝上帯などにおける地質断面図では、地質構造をキンク褶曲に近似して作図するバランス地質断面図(Balanced cross section)という手法が昔から利用されている。この手法は、1)変形が平面歪、(2)変形による体積変化は0、3)変形ブロックの平行性の仮定の下で作図され、このときキンク界面は対称傾角となる。しかし、これまでバランス地質断面図の作成上の仮定やそれに伴うキンク界面の対称傾角性の数学的妥当性について吟味されてこなかった。本発表では、バランス地質図の作成上のこれらの仮定を線形代数的なキンク形成条件(Rank-1接続)から見直す。Rank-1接続は、相異なる均一変形が発生した2つの領域が破壊せず連続性を保つ変形適合条件である。この条件下のキンク形成は破壊が伴わない連続的な変形であることから、材料強化が生じる。またRank-1接続を満たす、単一のすべり系で形成されたキンク界面は対称傾角となる。このことから、バランス地質断面図の作成上の仮定はRank-1接続に集約され、断面図上の地層変形はRank-1接続に基づいているといえる。さらに、地質図上で見られるRank-1接続の存在は、地質構造の強化を意味しており、地殻変形に対抗した自然な機構と見なすことができる。