日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS06] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:00 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:澤井 みち代(千葉大学)、金木 俊也(産業技術総合研究所)、奥脇 亮(筑波大学)、浦田 優美(産業技術総合研究所)、座長:金木 俊也(京都大学防災研究所)、浦田 優美(産業技術総合研究所)


11:15 〜 11:30

[SSS06-08] 振動が誘発するせん断ガウジ層の動的弱化

*坂本 龍之輔1波多野 恭弘1 (1.大阪大学)


キーワード:動的誘発地震、粉体、個別要素法

ある震源から放射された地震波は他の地震を誘発しうる。観測研究は、地震の応力降下量(O(10MPa))よりもはるかに小さな地震波による応力変化(O(100~0.1kPa))によって、動的誘発地震が発生することを示した (e.g., Hill 2015)。こうした小さな応力変化が地震を誘発できる理由の一つは、振動による断層ガウジの強度弱化のためと考えられている。というのも、振動が断層ガウジの強度を弱化させることがいくつかの実験によって示されたためだ (e.g., Johnson et al., 2005)。しかし、これらの実験の大半は非剪断条件下で行われた。数値シミュレーションにおいては、せん断ガウジ層に振動を印加した研究がいくつか存在する (Ferdowsi et al., 2015;Giacco et al., 2015)。しかし、これらのモデルは粒子間接触力が粒子間の相対速度によらなかったり、縦波速度と横波速度が同じであるため、妥当ではないかもしれない。このため、振動によるせん断ガウジ層の強度弱化に関する理解は未だ十分とは言えない。

そこで本研究では、せん断ガウジ層の強度弱化が振動によって生じるメカニズムを個別要素法を用いて明らかにすることに焦点を当てた。我々のモデルは断層ガウジが2枚の基板で閉じ込められており、片方の基板がバネ定数kのバネを介して一定速度Vで引っ張られるというものである。このモデルに一過性の振動を印加することによって、振動に対するせん断ガウジ層の応答を調べた。

数値計算の結果は、振動によるせん断ガウジ層の強度弱化の原因がslipping contact ratio(全粒子間接触数に占める滑り接触数の割合)の増加であることを示している。この結果は滑り接触が接触剛性の低下を引き起こし、結果として断層ガウジのmodulus softening(強度弱化)を引き起こすことを意味している (Jia et al., 2011;Tong et al., 2020)。更に、断層ガウジの厚みと印加する振動波長が同スケールの場合、この強度弱化が顕著に生じることも分かった。