日本地球惑星科学連合2023年大会

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[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS06] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2023年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[SSS06-P01] 宮崎県日向市における付加体と火成岩を貫く低角衝上断層の地質構造,及び衝上断層の上盤側に発生した縦節理近傍の高温・高圧流体通過の痕跡

*後藤 繁俊1,2,3,4,5,6,7 (1.(株)九州土木設計コンサルタント、2.日本地質学会、3.日本応用地質学会、4.九州応用地質学会、5.宮崎応用地質研究会、6.てるはの森の会、7.宮崎の自然と環境協会)

キーワード:衝上断層、デュープレックス、吻合構造、水圧破砕、膨縮構造、球状ブロック

1.まえがき
 宮崎県日向市に分布する漸新世~初期中新世の上部四万十累層(日向層群・門川層群)と14~15Maの尾鈴山火山深成複合岩体をせん断する東西走向,15°前後北傾斜の衝上断層を約5km追跡でき,断層滑動時に生じたと考えられる様々な地質構造を観察したので以下に紹介する.

2.観察事項
1)尾鈴山火山深成複合岩体
 竹島に分布するデイサイト質溶結凝灰岩中に東西走向,10°北傾斜の衝上断層が存在し,波長30m~50mの大規模な吻合構造やデュープレックス構造(高さ4m×長さ14m)が発達する.また,衝上断層近傍の縦節理には白色(厚さ数mm)の鉱物が沈殿している.
2)上部四万十累層(日向層群・門川層群)
 尾鈴山火山深成複合岩体の熱によってやや接触熱変成を被った頁岩砂岩中に,走向N80E~N80W,傾斜16Nほどの衝上断層が走り,2条に分岐することがある.構造的下位の衝上断層は断層ガウジが風化して厚さ1m以上の白色粘土層となっている.一方,構造的上位の衝上断層は波長数mの吻合構造が発達する.また,坑道跡があり恒常湧水も見られる.さらに,衝上断層の上盤側には衝上断層に直交する共役系の特徴的な縦節理が観察され,縦節理の周辺には局部的に複合面構造(膨縮構造),水圧破砕,熱変成,石英脈,流体自体の回転(直径10mm~20mm)等の構造が見られ,節理から離れるにしたがって消滅する.さらに,縦節理に近接して直径10mの球状の砂岩テクトニックブロックがあり,砂岩球状ブロックと周辺の頁岩との境界には小規模なデュープレックス構造が連続する.また,球状ブロック縁辺部には流動化した石英粒子が顕微鏡下で確認できる.

3.まとめ及び考察
 東西走向で北へ緩く傾斜する衝上断層は,吻合構造やデュープレックスが発達する一方で断層面は不明瞭であることから,断層形成の初期段階でその活動を止めたと考えられる.一方,衝上断層から派生したと考えられる上盤側の共役系の縦節理沿いに観察される高温・高圧場を示す様々な構造は,縦節理沿いに高温・高圧の流体が流れたことを示している.この高温・高圧の流体は衝上断層の滑動に伴って生じた摩擦熱と運動エネルギーが断層帯の地下水に伝播して生じたと考えられる.