13:45 〜 15:15
[SSS06-P10] 相模トラフにおける大地震とスロースリップ:プレート境界の力学的固着との定量関係
キーワード:巨大地震、ゆっくり地震、GNSS
プレート境界において剪断応力の増加速度が大きい箇所を力学的固着箇所として推定する方法を開発し (Saito and Noda 2022 JGR),相模トラフのプレート境界へ適用した.その結果,房総スロースリップや,1703年元禄地震・1923年大正地震の震源域に対応して,相模トラフ沿いのプレート境界には大きく4つの力学的固着箇所(小田原、三浦、安房、房総)が存在することが明らかとなった.房総半島東岸に位置する力学的固着(房総)に対して,実際に観測されているスロースリップイベントに基づいて再来間隔を5年と仮定し,その期間に蓄積された応力がスロースリップを引きおこす応力降下量となると考え,スロースリップのすべり分布モデルを作成した.得られたすべり分布やそのモーメントマグニチュード(MW6.5)は,観測されているスロースリップの特徴を再現することができる.加え,Kanamori (1977)の考えに基づき,最小歪みエネルギー解放量を使って定義する地震マグニチュードを導入した.これを歪みエネルギーマグニチュードと呼ぶことにする.スロースリップの歪みエネルギーマグニチュードはMW0 4.8 (J)となり,モーメントマグニチュードに比べて1.7も小さい.これはスロースリップの応力降下量が小さいため,同規模のモーメントマグニチュードの地震に比べて,歪みエネルギー解放量がかなり小さくなることが原因である.さらに,1923年大正地震の震源域に対応して求まっている力学的固着箇所(小田原・三浦)には1923年以降の応力蓄積が,1703年元禄地震以降破壊していない力学的固着箇所(安房)には1703年以降からの応力蓄積があると仮定し,2023年までにプレート境界に蓄積される応力量をもとめた.この応力量によって,例えば,元禄地震と同様に,三浦と安房の力学的固着箇所が破壊し,蓄積していた応力が解放すると考えると,モーメントマグニチュードMw 7.8,最小歪みエネルギ−解放量 J (MW0 7.5)となる.この歪みエネルギー解放量は, Noda et al. (2021 JGR)で導入した断層運動が実現するための必要条件を満たしている.