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[SSS06-P11] 地震・スロースリップ・スティックスリップの面積-変位(A-D)関係
キーワード:地震、スロースリップ、スティックスリップ、スケーリング関係
地震モーメントMoを構成するパラメータのうち、断層面積Aと(平均)変位Dとの関係は、応力降下量が一定であるならばD~A0.5の関係となる(e.g., Kanamori and Anderson, 1975)。このような自己相似関係は、地震からAcoustic Emission (AE)に至るまで幅広い空間スケールでおよそ成り立つことが知られている(e.g., Abercrombie, 1995; Goodfellow and Young, 2014; Yoshimitsu et al., 2014)。ただし、これらの研究は、小さなイベントについて点震源モデルで扱っており、一定の破壊伝播速度を仮定したコーナー周波数の解析から議論が行われている。このため、破壊伝播速度が遥かに遅いスロースリップ(スロー地震)や、室内実験のスティックスリップとは、単純に比較できないと考えられる。
本研究では、地震・スロースリップ・スティックスリップのA-D関係をまとめて考察する。まず、中規模以上(Mw 5.4-9.2)の地震の有限断層モデルをコンパイルした先行研究(Thingbaijam et al., 2017)のデータについて、逆断層・正断層・横ずれ断層の区別なく、一般直交回帰を行った。その結果、D~A0.56を得た。また、スロースリップ(Mw 4.1-7.7)のスケーリング則を検討した先行研究(Gao et al., 2012)のデータについても同様の解析を行い、D~A0.54を得た。以上のことから、中規模以上の地震とスロースリップについては、応力降下量が異なるだけで、それぞれ自己相似関係にあると見て良いだろう。回帰結果を比較すると、同じAに対して地震のDはスロースリップのDより約101.5倍大きかった。一方、室内実験のスティックスリップに関する多数の先行研究から、実験試料のすべり面積Aと論文中の代表的な結果の変位Dを読み取り、同様の解析を行ったところ、スティックスリップは地震・スロースリップの回帰線の延長より系統的にDが大きいことがわかった。たとえば、同じAに対してスティックスリップのDは地震のDより約102倍大きかった。このことは、自然現象と室内実験の条件の違い(境界条件・スティッフネス)を反映しているのかもしれないが、中規模地震とスティックスリップには空間スケールに大きな隔たりがあるため、中間スケールの現象を調べる必要がある。
そこで我々は、小規模地震の有限断層モデルを研究対象に追加した。具体的には、Mw 0.6-1.4の鉱山地震(Yamada et al., 2005)とMw 2.0-2.1の小繰り返し地震(Dreger et al., 2007)である。これらのA-D関係を調べたところ、中規模以上の地震の回帰線延長より系統的にDが大きく、A-D関係の図上で中規模地震とスティックスリップのおよそ中間に位置することがわかった。試行的に、小規模なものを含む地震・スティックスリップのデータをまとめて回帰したところ、D~A0.40となった。なお、この回帰線と比較しても、スティックスリップは系統的にDが大きい。これらの結果が何を意味するか現時点では必ずしもはっきりしないが、1つの考え方として、検討した小規模地震が中規模以上の地震に比べて局所的な摩擦特性を反映しているため、実験室のスティックスリップにより近い状況にある、と考えられるかもしれない。言い換えると、自然地震やスロースリップの自己相似性は、局所的な摩擦特性が卓越しなくなるような、不均質性が十分に高い断層でのみ見られるのかもしれない。
本研究では、地震・スロースリップ・スティックスリップのA-D関係をまとめて考察する。まず、中規模以上(Mw 5.4-9.2)の地震の有限断層モデルをコンパイルした先行研究(Thingbaijam et al., 2017)のデータについて、逆断層・正断層・横ずれ断層の区別なく、一般直交回帰を行った。その結果、D~A0.56を得た。また、スロースリップ(Mw 4.1-7.7)のスケーリング則を検討した先行研究(Gao et al., 2012)のデータについても同様の解析を行い、D~A0.54を得た。以上のことから、中規模以上の地震とスロースリップについては、応力降下量が異なるだけで、それぞれ自己相似関係にあると見て良いだろう。回帰結果を比較すると、同じAに対して地震のDはスロースリップのDより約101.5倍大きかった。一方、室内実験のスティックスリップに関する多数の先行研究から、実験試料のすべり面積Aと論文中の代表的な結果の変位Dを読み取り、同様の解析を行ったところ、スティックスリップは地震・スロースリップの回帰線の延長より系統的にDが大きいことがわかった。たとえば、同じAに対してスティックスリップのDは地震のDより約102倍大きかった。このことは、自然現象と室内実験の条件の違い(境界条件・スティッフネス)を反映しているのかもしれないが、中規模地震とスティックスリップには空間スケールに大きな隔たりがあるため、中間スケールの現象を調べる必要がある。
そこで我々は、小規模地震の有限断層モデルを研究対象に追加した。具体的には、Mw 0.6-1.4の鉱山地震(Yamada et al., 2005)とMw 2.0-2.1の小繰り返し地震(Dreger et al., 2007)である。これらのA-D関係を調べたところ、中規模以上の地震の回帰線延長より系統的にDが大きく、A-D関係の図上で中規模地震とスティックスリップのおよそ中間に位置することがわかった。試行的に、小規模なものを含む地震・スティックスリップのデータをまとめて回帰したところ、D~A0.40となった。なお、この回帰線と比較しても、スティックスリップは系統的にDが大きい。これらの結果が何を意味するか現時点では必ずしもはっきりしないが、1つの考え方として、検討した小規模地震が中規模以上の地震に比べて局所的な摩擦特性を反映しているため、実験室のスティックスリップにより近い状況にある、と考えられるかもしれない。言い換えると、自然地震やスロースリップの自己相似性は、局所的な摩擦特性が卓越しなくなるような、不均質性が十分に高い断層でのみ見られるのかもしれない。