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[SSS08-P06] 地震探査技術の進展による地殻構造解明への貢献と今後への期待
キーワード:反射法地震探査、深部地殻構造、フルウェーブインバージョン
日本国内における地殻構造探査においては、多様なノイズに被覆された微弱な深部反射波を抽出し、地下構造のイメージングを図る上で、不均質速度推定と地下構造可視化技術の高度化に向けたデータ取得仕様の最適化とデータ解析技術の高度化が、長年の課題であった。特に、発震エネルギーの減衰・遮蔽及び地表後方散乱に起因するS/N低下によって、深部反射波抽出と速度推定が極めて困難となる事例が、火山岩類が階層的に分布する場合に顕在化すると共に、海陸を横断する探査領域を中心として、不規則なデータ取得ジオメトリー・発震点分布による'Acquisition Footprint'の発現や発震点-受振点レスポンスの不均一等も深部反射波を抽出する上で大きな課題となってきた。本研究では、地殻構造可視化に向けた地震探査技術適用に関わる約20年に亙るアプローチを検証する。第一に、多様な異種震源と可変型の受発震間隔を前提とした屈折波、反射波及び'Pre-critical'広角反射波の同時取得によって、長波長から短波長速度不均質の順に、ランダム化初期モデル法による屈折トモグラフィ解析、FWI速度解析及び重合前マイグレーションを段階的に組み合わせた複合型解析が可能になった点が挙げられる。こうしたマルチモード型地震探査では、従来型の有線テレメトリーに、軽量化されたWiFi伝送型データ収録システムを複合化させた長大展開の標準化が可能となった。第二に、受発震点間隔の稠密化を通じて、空間エイリアジング抑制、共通受振-発震-オフセット領域における均一サンプリングの実現、’Acquisition Footprint’の抑制及び有効重合数の飛躍的確保が可能となり、静補正,各種コヒーレントノイズ抑制,正規化処理及び高精度イメージング精度向上に貢献したと考えられる。第三に、受発震システム応答の広帯域化を通じて、低周波伝播エネルギーの拡充を通じた深部反射波の抽出と共に時間分解能の向上が実現した。また、高精度の速度推定手法であるFull Waveform Inversion(FWI)解析において、有効低周波成分の拡張によって、解の収斂性、安定性及び解像度を担保することを可能となった。本講演では、国内における深部地殻構造探査データを対象事例として、深部反射波抽出と広域速度構造の結果を検証すると共に、光ファイバーセンシングを中心とした探査・モニタリング技術の進展による地殻構造解明への将来像に関して展望する。