日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS09] 強震動・地震災害

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:林田 拓己(国立研究開発法人建築研究所 国際地震工学センター)、松元 康広(株式会社構造計画研究所)、座長:大堀 道広(福井大学附属国際原子力工学研究所)、中村 武史(一般財団法人電力中央研究所)

14:45 〜 15:00

[SSS09-10] 推計震度分布図の高解像度化・高精度化

*栢野 一正1佐藤 壮1、川合 亜紀夫1、阿部 正雄1、西田 貞明1岡 岳宏1鎌谷 紀子1 (1.気象庁)

キーワード:推計震度分布図、高解像度化、高精度化、震度、地震

推計震度分布図は、実際に観測された震度等を基に、地盤増幅度を使用して震度計のない場所の震度も推計して面的な分布図で震度を表現したものである。気象庁は、震度5弱以上の地震が発生した場合に、推計震度4以上の領域について推計震度分布図を提供しており、令和5年2月1日から、従来よりも高解像度化・高精度化した推計震度分布図の提供を開始している。具体的には、使用する地盤情報を1kmメッシュから250mメッシュに変更して高解像度化したほか、緊急地震速報の震度予測技術を用いることにより、停電等で震度データが入手できない観測点があった場合も高い精度の推計震度分布図を作成・提供することを可能とした。
今回高度化した推計震度分布図では、震源の深さに応じて(1)震源要素による推定値を用いる手法(震源が深くない地震の場合)と、(2)震度データによる手法(震源が深い地震の場合)の何れかの手法を使用する。その深さの閾値としては、緊急地震速報の震度予測手法の深さの制限と同じ150kmに設定している。
(1)の場合、以下の[1]から[6]までの処理を順次実施することにより、推計震度分布図を作成する。
[1]緊急地震速報の震度予測技術を用いて、工学的基盤上でのメッシュ毎の揺れの推定データを算出する。
[2]地盤増幅度を用いて地表面でのメッシュ毎の揺れの推定データを算出する。
[3]メッシュ毎に算出した地表の推定震度分布を作成する。
[4]観測点で実際に観測した震度と[3]で算出した同観測点における推定震度の差分を算出する。
[5][4]で算出した差分を補間し、面的な差分データを作成する。
[6]作成した[3]の推定震度分布と[5]で作成した面的差分データを足し合わせ、推計震度分布を作成する。(観測点を含むメッシュは、観測点の実測震度と同じ値になる。)
(2)の場合、以下の[1]から[4] までの処理を順次実施することにより、推計震度分布図を作成する。
[1]震度観測点で得られた揺れの大きさから、地盤増幅度を用いて工学的基盤上での揺れの大きさを推計する。
[2]観測点の間の工学的基盤上での揺れを補間し、面的な揺れの分布を作成する。
[3]地盤増幅度を用いて地表面での揺れの大きさを推計する。
[4]メッシュ毎に推計した地表の震度分布を作成する。
地震発生後約15分で提供する推計震度分布図は、地震発生直後の適切な救援ルート・避難場所の選定や、応急対応優先箇所の判別等にご利用いただける。推計震度分布図は、気象庁ホームページなどで提供するほか、地図情報と容易に重ね合わせができる作図用データ(総務省の標準地域メッシュに準拠)も提供するので、ご活用いただきたい。これらについて、紹介を行う予定である。

参考URL:https://www.data.jma.go.jp/eew/data/suikei/kaisetsu.html