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[SSS09-11] 微動アレイ探査によるカトマンズ盆地の浅部S波速度構造の推定
キーワード:カトマンズ盆地、浅部S波速度構造、微動アレイ観測、微動H/Vスペクトル比
ネパールの首都カトマンズの位置するカトマンズ盆地は,更新世の湖成堆積物により形成されている[Sakai, 2001].この軟弱な堆積層は過去の大地震における被害の原因の一つであり,2015年ネパール・ゴルカ地震(Mw 7.8,深さ8.2 km)でも当該地域では大きな被害を受けている.我々は,カトマンズ盆地における強震観測点において,観測記録に基づき深部S波速度構造の推定,表面波探査に基づき最表層のS波速度構造の推定を実施してきた[Bijukchhen et al. 2017, Shigefuji et al. 2020].本検討では浅部の構造をより詳細に明らかにするために,小規模微動アレイ観測を実施し,浅部S波速度構造を推定した.
微動アレイ観測は,2022年9月16日~21日の6日間に,強震観測点の近傍および2015年ネパール・ゴルカ地震時に建物被害の集中した盆地東部のバクタプル市内の計18地点で実施した.円の中心と円周上に正三角形に配置した計4点の円形アレイを使用し,一地点に対して複数のアレイサイズで測定を行った.微動計および収録器は応用地質株式会社製McSEIS-AT 3chを用い,サンプリング周波数は250 Hz,ゲインは16 dBとした.
得られた微動記録からノイズの少ない区間を選択し,微動記録の水平2成分のスペクトルの2乗和の平方根を上下成分で除してH/Vスペクトル比を求めた.表層地質区分毎にH/Vスペクトル比のピーク周波数は明瞭に異なり,岩盤サイトでは約2.5~4.0 Hzと2.0 Hz以上の高周波数側,堆積層サイトの湖成堆積層サイトでは約0.3~0.8 Hz,河成堆積層サイトでは約0.3~1.0 Hzと1.0 Hz以下の低周波数側にピークが見られた.
次に,空間自己相関法[Okada, 2003]を用いてレイリー波の位相速度を求めた.高周波数側の位相速度は,岩盤サイトで約100~300 m/s,河成堆積層サイトでは100~250 m/s,湖成堆積層サイトでは100~200 m/sとなる.標高も高く,表層地質区分で岩盤に位置するChangu Narayan(CGN)では,他の岩盤サイトに比べて位相速度が遅かったが,当地点は表層に半固形の粘土・砂・礫が存在する地すべり発生地点であり[稲垣, 2015],この軟弱な表層が影響していると考えられる.
さらに,遺伝的アルゴリズム[Yamanaka and Ishida, 1996]を用いてレイリー波位相速度の逆解析を行い,S波速度構造を推定した.既往研究結果がある地点ではその速度構造を参考に,それ以外の場所では試行錯誤的に探索範囲を設定し,観測位相速度を満足するS波速度と層厚を求めた.観測と理論位相速度の差の二乗平均値で定義されるmisfit値が最小のモデルを最適解とした.地表から深さ30 mまでの平均S波速度(AVS30)を計算し,標高及び表層地質区分との対応を検討した.標高とAVS30との間には正の相関が見られ,岩盤サイトではCGNを除き約350~400 m/sと速く,河川堆積層サイトでは約200~350 m/s,湖成堆積層サイトでは約100~250 m/sと遅い.CGNは標高が高いにもかかわらず200 m/s程度であった.
今後さらに観測地点を増やすことで,カトマンズ盆地の浅部地盤構造モデルの精度を高めていく.
微動アレイ観測は,2022年9月16日~21日の6日間に,強震観測点の近傍および2015年ネパール・ゴルカ地震時に建物被害の集中した盆地東部のバクタプル市内の計18地点で実施した.円の中心と円周上に正三角形に配置した計4点の円形アレイを使用し,一地点に対して複数のアレイサイズで測定を行った.微動計および収録器は応用地質株式会社製McSEIS-AT 3chを用い,サンプリング周波数は250 Hz,ゲインは16 dBとした.
得られた微動記録からノイズの少ない区間を選択し,微動記録の水平2成分のスペクトルの2乗和の平方根を上下成分で除してH/Vスペクトル比を求めた.表層地質区分毎にH/Vスペクトル比のピーク周波数は明瞭に異なり,岩盤サイトでは約2.5~4.0 Hzと2.0 Hz以上の高周波数側,堆積層サイトの湖成堆積層サイトでは約0.3~0.8 Hz,河成堆積層サイトでは約0.3~1.0 Hzと1.0 Hz以下の低周波数側にピークが見られた.
次に,空間自己相関法[Okada, 2003]を用いてレイリー波の位相速度を求めた.高周波数側の位相速度は,岩盤サイトで約100~300 m/s,河成堆積層サイトでは100~250 m/s,湖成堆積層サイトでは100~200 m/sとなる.標高も高く,表層地質区分で岩盤に位置するChangu Narayan(CGN)では,他の岩盤サイトに比べて位相速度が遅かったが,当地点は表層に半固形の粘土・砂・礫が存在する地すべり発生地点であり[稲垣, 2015],この軟弱な表層が影響していると考えられる.
さらに,遺伝的アルゴリズム[Yamanaka and Ishida, 1996]を用いてレイリー波位相速度の逆解析を行い,S波速度構造を推定した.既往研究結果がある地点ではその速度構造を参考に,それ以外の場所では試行錯誤的に探索範囲を設定し,観測位相速度を満足するS波速度と層厚を求めた.観測と理論位相速度の差の二乗平均値で定義されるmisfit値が最小のモデルを最適解とした.地表から深さ30 mまでの平均S波速度(AVS30)を計算し,標高及び表層地質区分との対応を検討した.標高とAVS30との間には正の相関が見られ,岩盤サイトではCGNを除き約350~400 m/sと速く,河川堆積層サイトでは約200~350 m/s,湖成堆積層サイトでは約100~250 m/sと遅い.CGNは標高が高いにもかかわらず200 m/s程度であった.
今後さらに観測地点を増やすことで,カトマンズ盆地の浅部地盤構造モデルの精度を高めていく.