13:45 〜 15:15
[SSS09-P17] 応答スペクトルに関する確率論的地震動ハザード評価
-東京・名古屋・大阪を対象とした試算-
キーワード:応答スペクトル、確率論的地震動ハザード評価、ハザードカーブ、一様ハザードスペクトル
地震調査研究推進本部地震調査委員会は、国民の防災意識の向上や効果的な地震防災対策を検討する上での基礎資料として活用されることを目的として、地震発生の長期的な確率評価と地震動の評価を組み合わせた「確率論的地震動予測地図」、及び特定の地震に対して、ある想定されたシナリオに対する詳細な強震動評価に基づく「震源断層を特定した地震動予測地図」を作成し、これらを全国地震動予測地図として公表してきた(例えば、「全国地震動予測地図2020年版」)。他方で、地震調査委員会は耐震設計等における工学的利活用に資することを目的として、地震動の応答スペクトルに関する地震動予測地図に向けた検討を進めており、2022年11月に「応答スペクトルに関する地震動ハザード評価(試作版)」(以下、試作版)を公表した。本稿では、試作版のポイント、評価条件、試算結果等について概説する。
試作版は、工学的利活用をはじめとした様々なニーズを踏まえた成果のあり方を検討する基礎資料となるよう、評価条件や試算結果を中心にまとめている。試作版の地震動評価では、応答スペクトルに関する地震動予測式を用いており、複数の固有周期を考慮した地震応答振幅の確率評価を行うことが可能となる。
試作版では、東京・名古屋・大阪の3地点を対象に、工学的基盤上での加速度応答スペクトル(減衰定数5%)について、ハザードカーブ及び一様ハザードスペクトルを試算し、ハザード再分解による影響度評価を実施した。一様ハザードスペクトルは超過確率レベル4種類(50年2%, 50年5%, 50年10%, 50年39%)、周期8ポイント(0.1, 0.2, 0.3, 0.5, 1.0, 2.0, 3.0, 5.0秒)で試算した。なお、地震活動モデルは「全国地震動予測地図2020年版」と同じモデルを使用し、地震動予測式はMorikawa and Fujiwara (2013)を使用した。
試算結果の一例として、東京都庁位置の一様ハザードスペクトルの評価結果を図1に示す。全地震、活断層などの浅い地震、海溝型地震それぞれの一様ハザードスペクトル(図1(a)~(c))を見ると、(a)全地震と(c)海溝型地震のスペクトル形状と振幅はよく似ており、海溝型地震の一様ハザードスペクトルの寄与が大きい傾向にある。50年超過確率5%(再現期間は約1,000年)の一様ハザードスペクトルを活断層などの浅い地震と海溝型地震に再分解し、周期ごとの影響度を図1(d)に示す。どの周期ポイントにおいても、海溝型地震の影響度が卓越している。長期評価がなされ震源断層が特定されている地震や震源断層を予め特定しにくい地震などに、より詳細に再分解した結果を図1(e)に示す。周期0.5秒以下の短周期帯域では、海溝型地震のうちフィリピン海プレートのプレート間やプレート内の震源断層を予め特定しにくい地震の影響度が大きい。一方、周期1.0秒から長周期になるにつれて太平洋プレートのプレート間やプレート内の震源断層を予め特定しにくい地震や、相模トラフ及び南海トラフの地震など、震源が遠くても規模の大きい地震の影響度が大きくなっている。周期が長い地震動ほど距離減衰が小さく、遠くまで伝わりやすいことが現れている。
今後、応答スペクトルに関する地震動ハザード評価が進むことによって、確率レベルに応じた建物の揺れの評価やそれを考慮した地震荷重の検討等に利活用されることが想定される。今後の利活用に関する議論等も踏まえ、評価結果の表現方法や提供方法などの検討を進める予定である。
試作版は、工学的利活用をはじめとした様々なニーズを踏まえた成果のあり方を検討する基礎資料となるよう、評価条件や試算結果を中心にまとめている。試作版の地震動評価では、応答スペクトルに関する地震動予測式を用いており、複数の固有周期を考慮した地震応答振幅の確率評価を行うことが可能となる。
試作版では、東京・名古屋・大阪の3地点を対象に、工学的基盤上での加速度応答スペクトル(減衰定数5%)について、ハザードカーブ及び一様ハザードスペクトルを試算し、ハザード再分解による影響度評価を実施した。一様ハザードスペクトルは超過確率レベル4種類(50年2%, 50年5%, 50年10%, 50年39%)、周期8ポイント(0.1, 0.2, 0.3, 0.5, 1.0, 2.0, 3.0, 5.0秒)で試算した。なお、地震活動モデルは「全国地震動予測地図2020年版」と同じモデルを使用し、地震動予測式はMorikawa and Fujiwara (2013)を使用した。
試算結果の一例として、東京都庁位置の一様ハザードスペクトルの評価結果を図1に示す。全地震、活断層などの浅い地震、海溝型地震それぞれの一様ハザードスペクトル(図1(a)~(c))を見ると、(a)全地震と(c)海溝型地震のスペクトル形状と振幅はよく似ており、海溝型地震の一様ハザードスペクトルの寄与が大きい傾向にある。50年超過確率5%(再現期間は約1,000年)の一様ハザードスペクトルを活断層などの浅い地震と海溝型地震に再分解し、周期ごとの影響度を図1(d)に示す。どの周期ポイントにおいても、海溝型地震の影響度が卓越している。長期評価がなされ震源断層が特定されている地震や震源断層を予め特定しにくい地震などに、より詳細に再分解した結果を図1(e)に示す。周期0.5秒以下の短周期帯域では、海溝型地震のうちフィリピン海プレートのプレート間やプレート内の震源断層を予め特定しにくい地震の影響度が大きい。一方、周期1.0秒から長周期になるにつれて太平洋プレートのプレート間やプレート内の震源断層を予め特定しにくい地震や、相模トラフ及び南海トラフの地震など、震源が遠くても規模の大きい地震の影響度が大きくなっている。周期が長い地震動ほど距離減衰が小さく、遠くまで伝わりやすいことが現れている。
今後、応答スペクトルに関する地震動ハザード評価が進むことによって、確率レベルに応じた建物の揺れの評価やそれを考慮した地震荷重の検討等に利活用されることが想定される。今後の利活用に関する議論等も踏まえ、評価結果の表現方法や提供方法などの検討を進める予定である。