日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 地震活動とその物理

2023年5月22日(月) 10:45 〜 12:00 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:楠城 一嘉(静岡県立大学)、直井 誠(京都大学)、座長:勝俣 啓(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、福田 孔達(東京大学地震研究所)

10:45 〜 11:00

[SSS10-05] HYPODDによる余震分布の再決定:1969年と1994年北海道東方沖地震および1975年津波地震

*勝俣 啓1 (1.北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

キーワード:HYPODD、北海道東方沖地震、余震分布

1.はじめに
北海道東方沖(色丹島沖)では,異なるタイプの3つの地震が発生している.1つ目は,典型的なプレート境界型地震である1969年北海道東方沖地震(Mw8.0; Ioki and Tanioka, 2016),2つ目は,津波地震である1975年6月10日の地震(Mw7.8; Ioki and Tanioka, 2016),そして3つ目は,スラブ内地震である1994年北海道東方沖地震(Mw8.3; Global CMT)である.これら3つの地震の内,1994年の地震の断層面は,走向が海溝軸に平行であるという主張(例えば,Kikuchi and Kanamori, 1995; Katsumata et al., 1995)と海溝軸にほぼ直交するという主張(例えば,Tanioka et al., 1995)があり,未だに議論が続いている.本研究では,3つの地震の余震分布をHYPODDにより再決定し,3つの地震の震源断層について検討した.
2.データ
 ISC Bulletinで公開されている震源パラメータとP波到着時を使用した.本震発生から7日間,実体波マグニチュード(mb) 5.3以上,および深さ100 km以浅の余震を選択した.北海道東方沖の震源域から5000 km以内,かつ,3つの地震全てのP波検測値が記録されているという条件を満たす80観測点を使用した.
3.手法
震源決定には,二重差分を利用したHYPODD (Waldhauser and Ellsworth, 2000)を使用した.ただし,HYPODDは水平成層構造を仮定して走時を計算しているが,遠地P波を使用するためには球面成層構造で走時を計算する必要がある.本研究では,一次元速度構造iasp91を仮定し,iaspei-tau package (Kennett and Engdahl, 1991; Snoke, 2009)を使用して走時を計算した.使用した本震・余震は,1969年が25個,1975年が12個,1994年が29個,合計66個である.これらの震源距離が50 km以下の場合に二重差分を取り,6382組のデータを使用した.インバージョンにはダンビングを30としてLSQR法を適用した.
4.結果
P波走時の残差のrmsは,ISC震源に対する初期の値が2.36秒であり,HYPODDの2回のiteration後に1.39秒 (-41%) まで低下した.1969年の場合は,本震と余震共に沈み込む太平洋プレート上面付近に位置しているが,震央は海溝軸から50km以上離れている.1975年の場合も本震・余震共にプレート境界付近に位置しているが,震央は海溝軸から50km以上離れている.Ioki and Tanioka (2016)が主張する海溝軸に近接した大滑り域では余震は発生していない.1994年の場合は,1969年と1975年とは明らかに異なり,プレート境界付近への震源集中は見られない.走向が海溝軸にほぼ直交し,南西方向に30-40度で傾き下がる面上に余震が分布している.この余震分布は,Tanioka et al. (1995)が主張する断層面と調和的である.