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[SSS10-P11] 時空間ハフ変換による震央マイグレーションの抽出: 能登半島北東部の群発地震への適用
キーワード:群発地震、震央マイグレーション、時空間ハフ変換、能登半島
震源分布の時空間発展 (震源マイグレーション) は, 群発地震やスロー地震に伴って観測されている. いずれの場合も震源マイグレーションの前線部が拡散的に時空間発展すること (拡散フロント) が観測され, 間隙流体圧の拡散や応力の拡散で説明される (e.g., Shapiro et al., 1997; Ando et al., 2012). そのため, 震源マイグレーションを調べることは地震活動の駆動要因を理解する手がかりになる. Sagae et al. (under review) では, 断層面上を一定の速度で移動する震源マイグレーションを客観的に抽出する時空間ハフ変換を開発し, テクトニック微動の拡散フロント内部で起きているさまざまな速度 (10–1000 km/day) をもつ震源マイグレーションの時空間的特徴を調べることに成功した. しかし, 群発地震においては拡散フロント内部でどのような震源マイグレーションが起きているかを調べた先行研究はほとんどない (e.g., Dublanchet, & De Barros, 2021). 時空間ハフ変換では断層面が不明瞭な場合でも, 地表面に投影された震源マイグレーション (震央マイグレーション) を抽出できる可能性がある. そこで本研究では, 能登半島北東部における群発地震に時空間ハフ変換を適用することで震央マイグレーションを抽出し, その時空間的特徴を詳細に調べた.
能登半島北東部で2018年から継続している群発地震の震源分布は, 空間的に南・西・北・北東の4領域に分けられる. 本研究ではそれぞれ領域をS・W・N・NEクラスタと定義する. 2018年にSクラスタで始まった群発地震活動は, 2020年12月末にSクラスタ東側の深部で活発化した. その後, 他のクラスタでも群発地震活動が開始した. 本研究では, 2018年5月から2022年6月にかけて発生したマグニチュード0.0以上の20,542個の地震についてDouble-Difference 法 (Waldhauser & Ellsworth, 2000) を用いて震源再決定された震源分布 (Amezawa et al., under review) を使用した.
時空間ハフ変換では, 時空間 (経度, 緯度, 時間) における直線 (震央マイグレーション) を原点から直線までの距離ρ, 天頂角θ, 方位角φ, 回転角ψの4つのパラメータを用いて表現する. 特にtanθは震央マイグレーションの移動速度を, φはその進行方向を示す. 幅をもつ直線 (円柱) を考えることで震源の不確かさ情報を考慮することができ, 最も多くの地震がその円柱内部に含まれるようなものを震央マイグレーションとして抽出する. さらに, 複数の直線が入り組んでいる場合でも, 各々の直線のパラメータ (ρ ,θ, φ, ψ) をもとに震央マイグレーションを分離することができる. 本研究では, ρは0–20 kmの範囲を0.2km間隔で, φとψは0–360°の範囲を10° 間隔で, tanθ は0.1–10km/dayの範囲を0.1km/day 間隔で, それぞれビンを設定した. 円柱の半径は0.25 kmに設定した. そして円柱内部に含まれる地震数の閾値を8個以上とし, 震央マイグレーションを客観的に抽出した.
解析の結果, 485個の震央マイグレーションをS・W・Nクラスタで抽出することができた. 震央マイグレーションの継続時間・移動速度の空間的な特徴を調べたところ, ほとんどのクラスタで継続時間の中央値が6日より長く, 移動速度が0.5 km/day より遅いという特徴が確認された. 一方でSクラスタの深部では, 継続時間の中央値が1日程度と短く, 移動速度の中央値が 1.5 km/day より速いという特徴が確認された.
Sクラスタ深部では震源がリング状に分布しており, その震央分布に沿って北上する高速な震央マイグレーションを複数確認した. これらの震央マイグレーションは間欠的に発生しており, Sクラスタ深部において高速かつ間欠的な間隙流体圧の時空間変化が起きている可能性を示唆する.本発表では, 抽出した震央マイグレーションに属する地震の深さ変化についても議論し, 深さの情報を含めた時空間ハフ変換の可能性について検討する.
参考文献:
[1] Kodai Sagae et al. Fine structure of tremor migrations beneath the Kii Peninsula, Southwest Japan, extracted with a space-time Hough transform. ESS Open Archive.
[2] Yuta Amezawa et al. Long-living Earthquake Swarm and Intermittent Seismicity in the Northeastern Tip of the Noto Peninsula, Japan. ESS Open Archive.
謝辞: 本研究はJSPS科研費 JP21H05205の助成を受けたものです. 記して感謝申し上げます.
能登半島北東部で2018年から継続している群発地震の震源分布は, 空間的に南・西・北・北東の4領域に分けられる. 本研究ではそれぞれ領域をS・W・N・NEクラスタと定義する. 2018年にSクラスタで始まった群発地震活動は, 2020年12月末にSクラスタ東側の深部で活発化した. その後, 他のクラスタでも群発地震活動が開始した. 本研究では, 2018年5月から2022年6月にかけて発生したマグニチュード0.0以上の20,542個の地震についてDouble-Difference 法 (Waldhauser & Ellsworth, 2000) を用いて震源再決定された震源分布 (Amezawa et al., under review) を使用した.
時空間ハフ変換では, 時空間 (経度, 緯度, 時間) における直線 (震央マイグレーション) を原点から直線までの距離ρ, 天頂角θ, 方位角φ, 回転角ψの4つのパラメータを用いて表現する. 特にtanθは震央マイグレーションの移動速度を, φはその進行方向を示す. 幅をもつ直線 (円柱) を考えることで震源の不確かさ情報を考慮することができ, 最も多くの地震がその円柱内部に含まれるようなものを震央マイグレーションとして抽出する. さらに, 複数の直線が入り組んでいる場合でも, 各々の直線のパラメータ (ρ ,θ, φ, ψ) をもとに震央マイグレーションを分離することができる. 本研究では, ρは0–20 kmの範囲を0.2km間隔で, φとψは0–360°の範囲を10° 間隔で, tanθ は0.1–10km/dayの範囲を0.1km/day 間隔で, それぞれビンを設定した. 円柱の半径は0.25 kmに設定した. そして円柱内部に含まれる地震数の閾値を8個以上とし, 震央マイグレーションを客観的に抽出した.
解析の結果, 485個の震央マイグレーションをS・W・Nクラスタで抽出することができた. 震央マイグレーションの継続時間・移動速度の空間的な特徴を調べたところ, ほとんどのクラスタで継続時間の中央値が6日より長く, 移動速度が0.5 km/day より遅いという特徴が確認された. 一方でSクラスタの深部では, 継続時間の中央値が1日程度と短く, 移動速度の中央値が 1.5 km/day より速いという特徴が確認された.
Sクラスタ深部では震源がリング状に分布しており, その震央分布に沿って北上する高速な震央マイグレーションを複数確認した. これらの震央マイグレーションは間欠的に発生しており, Sクラスタ深部において高速かつ間欠的な間隙流体圧の時空間変化が起きている可能性を示唆する.本発表では, 抽出した震央マイグレーションに属する地震の深さ変化についても議論し, 深さの情報を含めた時空間ハフ変換の可能性について検討する.
参考文献:
[1] Kodai Sagae et al. Fine structure of tremor migrations beneath the Kii Peninsula, Southwest Japan, extracted with a space-time Hough transform. ESS Open Archive.
[2] Yuta Amezawa et al. Long-living Earthquake Swarm and Intermittent Seismicity in the Northeastern Tip of the Noto Peninsula, Japan. ESS Open Archive.
謝辞: 本研究はJSPS科研費 JP21H05205の助成を受けたものです. 記して感謝申し上げます.