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[SSS12-P07] MES技術を用いた新しいシリコン振動式圧力センサの性能評価海底観測
キーワード:シリコン振動式圧力センサ、海底精密圧力観測、自由落下自己浮上式海底圧力計
海底上下変動や津波の観測には、精密海底圧力観測が有用である。現在、海底圧力観測には精密水晶振動子を用いたセンサが主に使用されている。近年、南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)への実装のためにMEMS技術を用いたシリコン振動子による新しい圧力センサが開発された。このセンサーは低消費電力、小型、高感度、高品質などの特長を持っている。特にMEMS技術を用いていることから製品のばらつきがほとんどないこと、計測部が極小であることから高い安定性を持っていることが期待される。さらに、計測する圧力を直接圧力センサに伝えており、センサ自身の振動等の影響がほとんどない。これらの長所は、海底精密圧力観測に向いていると考えられる。そこで、長期精密海底圧力観測にむけて、この新しいMEMSシリコン振動式圧力センサの評価観測を行った。
水晶振動子を用いた圧力センサを搭載した自由落下自己浮上式海底圧力計(OBP)はすでに開発されており、定常的に観測に用いられている。新型圧力センサは圧力の変化を周波数の変化として出力し、供給電圧も従来の圧力センサとほぼ同じであることから、従来のOBPのセンサ交換のみで、新型センサを搭載するOBPとすることができた。OBPに内蔵される記録器は圧力センサからの周波数を周波数カウンタを用いて計測し、計測値をSDカードに記録する。今回新たに制作した新型センサを搭載したOBPを用いて、実際に海底観測を行い、新型センサの評価を行うこととした。新型シリコン振動式圧力センサは、ステンレスの耐圧容器に収納され、圧力と温度による周波数変化を分離するために、2つの振動子を搭載している。計測の周波数基準には、記録器に搭載された小型原子時計(CSAC)を用い、周波数計測のゲート長を1秒とした。
房総半島沖ではプレート境界のスロースリップがたびたび発生しており、我々はOBPを用いたモニタリング観測を行っている。新型圧力センサの評価はこの観測と併せて行うこととした。新型センサ搭載のOBPは、2021年8月23日に、海洋研究開発機構「新青丸」KS21-19次研究航海で房総半島沖に設置した。水深は、3,436mである。設置点は海底上下変動や津波のモニタリング観測を行っている従来の水晶圧力センサを用いたOBPの一つと同一とした。そのため、従来の水晶圧力センサからのデータと新型圧力センサからのデータを比較して評価することが可能である。最初の新型圧力センサ搭載OBPは、2021年11月4日に、「新青丸」KS21-26次研究航海にて、回収された。また、評価を継続するために、別途の新型圧力センサを搭載したOBPを同一地点に、最初のOBPの回収直後に設置した。設置したOBPは2022年3月13日に、「第三開洋丸」にて、回収した。この2回の観測期間中を通して、同一地点にある従来の水晶圧力センサを搭載したOBPは観測を継続した。
2回の観測の結果、計203日の海底圧力記録が得られた。得られた記録を用いて、海底圧力の雑微動スペクトルを求め、新型圧力センサと従来の圧力センサを比較した。スペクトルの計算には約4.5時間長の記録を用いて、1時間ごとにスペクトルを求め、計算されたすべてのスペクトルを用いて、ノイズスペクトルの確率を計算した。周期50秒より長い帯域では、すべてのセンサで同一のノイズレベルとなった。一方、周期10秒から50秒の帯域では、2台の新型圧力センサのノイズレベルは、従来の水晶圧量センサーよりも、やや高い結果となった。2回目の観測期間中にトンガにおける大規模火山噴火が発生し、海面変動が世界中で観測された。OBPはこの海面変動を観測し、周期3600秒から10秒の帯域制限した記録では新型センサと従来センサで同一の波形を示し、圧力変化の振幅もどちらも約7hPaと同じであった。
水晶振動子を用いた圧力センサを搭載した自由落下自己浮上式海底圧力計(OBP)はすでに開発されており、定常的に観測に用いられている。新型圧力センサは圧力の変化を周波数の変化として出力し、供給電圧も従来の圧力センサとほぼ同じであることから、従来のOBPのセンサ交換のみで、新型センサを搭載するOBPとすることができた。OBPに内蔵される記録器は圧力センサからの周波数を周波数カウンタを用いて計測し、計測値をSDカードに記録する。今回新たに制作した新型センサを搭載したOBPを用いて、実際に海底観測を行い、新型センサの評価を行うこととした。新型シリコン振動式圧力センサは、ステンレスの耐圧容器に収納され、圧力と温度による周波数変化を分離するために、2つの振動子を搭載している。計測の周波数基準には、記録器に搭載された小型原子時計(CSAC)を用い、周波数計測のゲート長を1秒とした。
房総半島沖ではプレート境界のスロースリップがたびたび発生しており、我々はOBPを用いたモニタリング観測を行っている。新型圧力センサの評価はこの観測と併せて行うこととした。新型センサ搭載のOBPは、2021年8月23日に、海洋研究開発機構「新青丸」KS21-19次研究航海で房総半島沖に設置した。水深は、3,436mである。設置点は海底上下変動や津波のモニタリング観測を行っている従来の水晶圧力センサを用いたOBPの一つと同一とした。そのため、従来の水晶圧力センサからのデータと新型圧力センサからのデータを比較して評価することが可能である。最初の新型圧力センサ搭載OBPは、2021年11月4日に、「新青丸」KS21-26次研究航海にて、回収された。また、評価を継続するために、別途の新型圧力センサを搭載したOBPを同一地点に、最初のOBPの回収直後に設置した。設置したOBPは2022年3月13日に、「第三開洋丸」にて、回収した。この2回の観測期間中を通して、同一地点にある従来の水晶圧力センサを搭載したOBPは観測を継続した。
2回の観測の結果、計203日の海底圧力記録が得られた。得られた記録を用いて、海底圧力の雑微動スペクトルを求め、新型圧力センサと従来の圧力センサを比較した。スペクトルの計算には約4.5時間長の記録を用いて、1時間ごとにスペクトルを求め、計算されたすべてのスペクトルを用いて、ノイズスペクトルの確率を計算した。周期50秒より長い帯域では、すべてのセンサで同一のノイズレベルとなった。一方、周期10秒から50秒の帯域では、2台の新型圧力センサのノイズレベルは、従来の水晶圧量センサーよりも、やや高い結果となった。2回目の観測期間中にトンガにおける大規模火山噴火が発生し、海面変動が世界中で観測された。OBPはこの海面変動を観測し、周期3600秒から10秒の帯域制限した記録では新型センサと従来センサで同一の波形を示し、圧力変化の振幅もどちらも約7hPaと同じであった。