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[SSS13-P01] LiDAR差分解析による熊本県西原村小森周辺の2016年熊本地震時の3次元変位量分布
キーワード:2016年熊本地震、西原村、LiDAR、スリップパーティショニング
1.はじめに
2016年4月16日にMj7.3の熊本地震が発生した.本地震によって,布田川断層を主断層とする地表地震断層が広範囲に出現した(Fujiwara et al., 2016).布田川断層以外に活動した活断層として,高野断層,水前寺断層,出ノ口断層,阿蘇カルデラ北西部の断層群などが挙げられる.中でも出ノ口断層はToda et al.(2016)によりSlip partitioningが生じたとされている.Slip partitioningとは,地下から地表に向かって断層が分岐し、地下での斜めすべりを地表では横ずれと縦ずれに分かれて解消していることを指す.海外では、Kokoxili地震(King et al., 2005)などで記載されており、地震時の地表付近での変位ハザードや変動地形を理解する上で重要な現象であると考えられる.
一方,近年ではInSAR,LiDAR解析,光学画像解析により面的な地震時変位量の情報が取得可能になってきた.そこで,本研究ではSlip partitioningが生じたとされる布田川断層・出ノ口断層併走区間において,LiDAR差分解析を実施することで定量的にSlip partitioningを評価する.
2.研究手法
本研究では,LiDAR差分解析(Mukoyama et al., 2011;品川ほか,2013;Ishimura et al., 2019)を2016年熊本地震に適用した.本研究では2013年1〜2月と2016年5月8日に計測された2時期のLiDARデータを用いて解析を行い,約3年間に生じた変位の3成分(上下・東西・南北)を明らかにした.ただし,解析の対象とした区間は,布田川断層の東部の東西約2.5 km,南北約3.5 kmの区間である.解析結果は,調査地域の布田川断層の一般走向がN57°Eであるため,水平成分を断層と平行方向と直交方向に再計算したものを使用した.これらの結果を既存の現地調査結果(Kumahara et al., 2022)と比較し,Slip partitioningに関する考察を行った.
3.結果・考察
対象地域では,布田川断層沿いの地表地震断層が主に1条(ステップしながら断続的に分布),出ノ口断層沿いの地表地震断層が主に3条(北落ちのものに加えて,南落ちの共役断層が2条)分布する.いずれの断層出現箇所でも現地調査と整合的な3次元変位量の不連続が認められた.また一部で現地調査では確認されていない地表地震断層出現地点も推定された.
変位量に関しては,全体的に3次元変位量の方が現地計測と比べて大きい傾向にあった.布田川断層沿いでは,現地計測では約1.5 mの右横ずれに対し,3次元変位量では約2 mの右横ずれが読み取れる.これはOn-faultの変位(現地調査で主に計測されている値)に加えて,Off-faultの変位(ブロードな変位)も3次元変位量に含まれているためと考えられる(e.g., Scott et al., 2018).一方,出ノ口断層沿いでは,現地計測により2 m近くの北落ち変位が記録されているが,3次元変位量では崩壊が多発しているためノイズが大きい.広い範囲で見ると出ノ口断層では,1 mほどの北落ち変位であるが,局所的には現地計測のように斜面変動も合わさり,より大きな断層変位になった可能性がある.
Slip partitioningについては,Toda et al. (2016)の模式図にあるように,布田川断層では右横ずれ,出ノ口断層では北落ち成分が分かれてそれぞれの断層で解消されていた.このことは断層深部の斜めずれが,横ずれ成分と縦ずれ成分にきちんと分割されていることを意味する.このような情報は,スリップパーティショニングが生じる条件(地下の断層形状,断層の強度・物性)などを考える上で重要な知見になると考えられる.
2016年4月16日にMj7.3の熊本地震が発生した.本地震によって,布田川断層を主断層とする地表地震断層が広範囲に出現した(Fujiwara et al., 2016).布田川断層以外に活動した活断層として,高野断層,水前寺断層,出ノ口断層,阿蘇カルデラ北西部の断層群などが挙げられる.中でも出ノ口断層はToda et al.(2016)によりSlip partitioningが生じたとされている.Slip partitioningとは,地下から地表に向かって断層が分岐し、地下での斜めすべりを地表では横ずれと縦ずれに分かれて解消していることを指す.海外では、Kokoxili地震(King et al., 2005)などで記載されており、地震時の地表付近での変位ハザードや変動地形を理解する上で重要な現象であると考えられる.
一方,近年ではInSAR,LiDAR解析,光学画像解析により面的な地震時変位量の情報が取得可能になってきた.そこで,本研究ではSlip partitioningが生じたとされる布田川断層・出ノ口断層併走区間において,LiDAR差分解析を実施することで定量的にSlip partitioningを評価する.
2.研究手法
本研究では,LiDAR差分解析(Mukoyama et al., 2011;品川ほか,2013;Ishimura et al., 2019)を2016年熊本地震に適用した.本研究では2013年1〜2月と2016年5月8日に計測された2時期のLiDARデータを用いて解析を行い,約3年間に生じた変位の3成分(上下・東西・南北)を明らかにした.ただし,解析の対象とした区間は,布田川断層の東部の東西約2.5 km,南北約3.5 kmの区間である.解析結果は,調査地域の布田川断層の一般走向がN57°Eであるため,水平成分を断層と平行方向と直交方向に再計算したものを使用した.これらの結果を既存の現地調査結果(Kumahara et al., 2022)と比較し,Slip partitioningに関する考察を行った.
3.結果・考察
対象地域では,布田川断層沿いの地表地震断層が主に1条(ステップしながら断続的に分布),出ノ口断層沿いの地表地震断層が主に3条(北落ちのものに加えて,南落ちの共役断層が2条)分布する.いずれの断層出現箇所でも現地調査と整合的な3次元変位量の不連続が認められた.また一部で現地調査では確認されていない地表地震断層出現地点も推定された.
変位量に関しては,全体的に3次元変位量の方が現地計測と比べて大きい傾向にあった.布田川断層沿いでは,現地計測では約1.5 mの右横ずれに対し,3次元変位量では約2 mの右横ずれが読み取れる.これはOn-faultの変位(現地調査で主に計測されている値)に加えて,Off-faultの変位(ブロードな変位)も3次元変位量に含まれているためと考えられる(e.g., Scott et al., 2018).一方,出ノ口断層沿いでは,現地計測により2 m近くの北落ち変位が記録されているが,3次元変位量では崩壊が多発しているためノイズが大きい.広い範囲で見ると出ノ口断層では,1 mほどの北落ち変位であるが,局所的には現地計測のように斜面変動も合わさり,より大きな断層変位になった可能性がある.
Slip partitioningについては,Toda et al. (2016)の模式図にあるように,布田川断層では右横ずれ,出ノ口断層では北落ち成分が分かれてそれぞれの断層で解消されていた.このことは断層深部の斜めずれが,横ずれ成分と縦ずれ成分にきちんと分割されていることを意味する.このような情報は,スリップパーティショニングが生じる条件(地下の断層形状,断層の強度・物性)などを考える上で重要な知見になると考えられる.