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[SSS13-P04] 常時微動観測により推定した長野県白馬村堀之内地区周辺における地盤特性と断層の関係
キーワード:2014年長野県北部地震、白馬村、常時微動観測、神城断層
2014年11月22日に発生した長野県北部地震(M6.7)では長野県白馬村で震度5弱を観測し,震央から約5km離れた白馬村堀之内地区や三日市場地区に被害が集中した.また,堀之内地区周辺には神城断層など活断層が分布しており,2014年長野県北部地震の際に地表地震断層が出現した.堀之内地区や三日市場地区において被害が集中した要因として,断層の傾斜角の違い(中埜ほか,2015),地すべり起源の段丘の可能性(鈴木ほか,2015)が指摘されている.富田ほか(2018)では,堀之内地区内の被害において,全壊家屋が集中している地点では,AVS30(深度30mまでの平均S波速度)が小さく,地すべり起源の軟弱層が厚く堆積している可能性を指摘した.また,主断層とそのバックスラストの間では大きな被害が少ないことから,家屋被害の程度差には断層の影響は大きく現れていないとした.中島ほか(2022a)では,新潟県津南町宮野原断層周辺において常時微動観測を行い,断層周辺ではS波速度が一時的に遅くなる逆転層が見られたことから,破砕帯の存在の可能性を指摘し,断層運動によって低下側で軟弱層が厚く堆積したことにより,家屋被害に影響を与えた可能性を指摘した.その様な他地域での事例を考えると,より詳細に常時微動観測を実施することで,断層と家屋被害の関係,さらには堀之内地区や三日市場地区における被害集中の要因について解明することができると考えられる.
本研究では,断層と地震被害の関係を検討するため,白馬村堀之内地区周辺で常時微動観測を行なった.富田ほか(2018)の21点に加え,新たに観測した25点を追加し,計46点を用いた.
堀之内地区は新潟県津南町や長野県栄村・飯山市に比べると(中島ほか,2022b),AVS30が小さく基盤深度(主にS波速度300m/s以上になった深度)が深いことから(Fig1),揺れやすい地盤であることがわかった.また,集落内でAVS30や基盤深度が大きくばらついているため,局所的に地盤が悪いことがわかった.特に堀之内地区や神城断層周辺では特に地盤が悪く,新潟県津南町の宮野原断層周辺と同等もしくは悪い結果となった.
堀之内地区内のAVS30や被害の程度差については,堆積環境の差が要因であることが考えられる.断層の西側は古神城湖によるもの,断層の東側は地すべりによる堆積環境によって地盤が悪く,断層間は断層直上に被害が集中しており,破砕帯の影響が大きいことが考えられる.
断層周辺ではS波速度の逆転層が見られ,破砕帯の存在の可能性が指摘された.また,地表面の標高差が約5mであるのに対し,基盤深度標高差が15mであることから断層変位の累積が見られた(Fig2).このことから神城断層が繰り返し活動していることが示唆される結果となった.
参考文献
中埜ほか(2015)2014年長野県北部の地震で出現した地表地震断層における地中レーダ浅部地下構造調査.活断層研究,43,133-148.
中島ほか(2022a)常時微動観測により推定した宮野原断層周辺の地盤特性と2011年長野県北部地震の家屋被害との関係.日本地球惑星科学連合2022年大会.
中島ほか(2022b)新潟県津南町~長野県飯山市における地震被害と地形・地盤特性の関係.第76回地学団体研究会総会(長野).
鈴木ほか(2015)長野県神城断層地震が提起する活断層評価の問題.科学,85(2), 175-181.
富田ほか(2018)2014年長野県北部の地震による白馬村堀之内地区の建物被害と地形・表層地質との関係.日本地球惑星科学連合2018年大会.
本研究では,断層と地震被害の関係を検討するため,白馬村堀之内地区周辺で常時微動観測を行なった.富田ほか(2018)の21点に加え,新たに観測した25点を追加し,計46点を用いた.
堀之内地区は新潟県津南町や長野県栄村・飯山市に比べると(中島ほか,2022b),AVS30が小さく基盤深度(主にS波速度300m/s以上になった深度)が深いことから(Fig1),揺れやすい地盤であることがわかった.また,集落内でAVS30や基盤深度が大きくばらついているため,局所的に地盤が悪いことがわかった.特に堀之内地区や神城断層周辺では特に地盤が悪く,新潟県津南町の宮野原断層周辺と同等もしくは悪い結果となった.
堀之内地区内のAVS30や被害の程度差については,堆積環境の差が要因であることが考えられる.断層の西側は古神城湖によるもの,断層の東側は地すべりによる堆積環境によって地盤が悪く,断層間は断層直上に被害が集中しており,破砕帯の影響が大きいことが考えられる.
断層周辺ではS波速度の逆転層が見られ,破砕帯の存在の可能性が指摘された.また,地表面の標高差が約5mであるのに対し,基盤深度標高差が15mであることから断層変位の累積が見られた(Fig2).このことから神城断層が繰り返し活動していることが示唆される結果となった.
参考文献
中埜ほか(2015)2014年長野県北部の地震で出現した地表地震断層における地中レーダ浅部地下構造調査.活断層研究,43,133-148.
中島ほか(2022a)常時微動観測により推定した宮野原断層周辺の地盤特性と2011年長野県北部地震の家屋被害との関係.日本地球惑星科学連合2022年大会.
中島ほか(2022b)新潟県津南町~長野県飯山市における地震被害と地形・地盤特性の関係.第76回地学団体研究会総会(長野).
鈴木ほか(2015)長野県神城断層地震が提起する活断層評価の問題.科学,85(2), 175-181.
富田ほか(2018)2014年長野県北部の地震による白馬村堀之内地区の建物被害と地形・表層地質との関係.日本地球惑星科学連合2018年大会.