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[SSS13-P06] 岩盤河川の急峻度と活断層の上下変位速度の関係
キーワード:岩盤河川、活断層、河床勾配、隆起速度
侵食,隆起速度などの空間分布は,様々な時空間スケールでの地形発達を議論する上で欠かせない.しかし,調査場所,費用,時間などの制約から,地形変化速度を多地点で直接求めることは必ずしも容易ではない.そうした背景のもと,岩盤河川の急峻度(ks: channel steepness)を用いた地形変化速度の推定が広く行われている.ksは,河床勾配にその地点の集水域面積を乗じて得られる指標である.ksは侵食速度と正の相関があるため,侵食速度の指標として用いられている.また,長期的な侵食速度が隆起速度と概ね等しくなる動的平衡状態が仮定できる場合,ksは隆起速度の指標になると考えられている.実際,多数の野外調査結果や,数値モデル計算などからksが隆起速度(侵食基準面の低下速度)とともに増加することがわかっており,ksを用いた相対的な隆起速度分布の推定が行われている.しかし,河床勾配には隆起速度以外の様々な要素が影響するため,推定された隆起速度は不確実性が大きく,何によってどの程度の不確実性が生じるのかはよくわかっていない.また,ksのみから推定できるのはあくまで相対的な隆起速度である.こうした課題はあるものの,適用可能範囲が広く,計算が容易である点は非常に優れているため,隆起速度を含めた様々な要素がどの程度ksに影響するのかを明らかにすることは重要であると考えている.本研究では,日本全国の活断層帯を対象として,断層を横切る河川のksと断層の上下変位速度のデータをまとめ,両者の関係を検討した.
地震調査研究推進本部が指定した主要活断層帯を横断する87河川を対象に,国土地理院の10 mメッシュ数値標高モデルを用いて河床勾配と集水面積を計算すると共に,既存文献から断層の上下変位速度データを収集した.これらの河川は,流域面積と河床勾配の関係や,上下変位速度データの有無などをもとに選定した.ksが上下変位速度のべき乗に比例すると仮定して回帰式を求めると,決定係数が0.1程度となった.断層のずれる向きや,基盤地質ごとに分けた場合でも,決定係数は0.1–0.3程度であった.さらに,上下変位速度のデータが比較的多く(6–10地点)存在する6つの断層帯について個別に回帰式を作成したが,決定係数は0.02–0.3程度であった.以上の結果は,河床勾配に影響する要素が多様であることを考慮すると当然の結果である.岩盤強度や降水量など,ksに影響するその他の要素の影響を補正する手法が提案されており,そうした補正を行なうことで,ksと上下変位速度の相関がよくなる可能性がある.一方で,流路幅や河床材料の影響など,ksへの影響が定量化困難な要素も存在している.そのため,ksと上下変位速度との関係だけでなく,河床せん断力や超過シールズ数(シールズ数と限界シールズ数の差)と上下変位速度との関係も検討し,断層変位速度の推定に用いる手法を検討していくことが重要である.
地震調査研究推進本部が指定した主要活断層帯を横断する87河川を対象に,国土地理院の10 mメッシュ数値標高モデルを用いて河床勾配と集水面積を計算すると共に,既存文献から断層の上下変位速度データを収集した.これらの河川は,流域面積と河床勾配の関係や,上下変位速度データの有無などをもとに選定した.ksが上下変位速度のべき乗に比例すると仮定して回帰式を求めると,決定係数が0.1程度となった.断層のずれる向きや,基盤地質ごとに分けた場合でも,決定係数は0.1–0.3程度であった.さらに,上下変位速度のデータが比較的多く(6–10地点)存在する6つの断層帯について個別に回帰式を作成したが,決定係数は0.02–0.3程度であった.以上の結果は,河床勾配に影響する要素が多様であることを考慮すると当然の結果である.岩盤強度や降水量など,ksに影響するその他の要素の影響を補正する手法が提案されており,そうした補正を行なうことで,ksと上下変位速度の相関がよくなる可能性がある.一方で,流路幅や河床材料の影響など,ksへの影響が定量化困難な要素も存在している.そのため,ksと上下変位速度との関係だけでなく,河床せん断力や超過シールズ数(シールズ数と限界シールズ数の差)と上下変位速度との関係も検討し,断層変位速度の推定に用いる手法を検討していくことが重要である.