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[SSS13-P08] 山形県庄内平野に伏在する活断層の側方延長
キーワード:活断層、伏在衝上断層、庄内平野、重力異常
陸域の地殻浅部を震源とする地震の発生可能性に関する長期評価は,主に活断層の活動履歴に基づいている.一方,最近の日本列島における陸域での地震の多くは,活動履歴の求めにくい伏在断層の活動によるとされており,伏在断層について,その存在,地下構造および断層変位を明らかにする必要がある.東北本州背弧に位置する山形県庄内平野地下には,反射法地震探査により,伏在断層が存在していることが明らかにされてきている.この断層は,庄内地震の震源断層の可能性が指摘されている.本研究では,重力調査により,この伏在断層の断層構造や側方への連続性を明らかにすることを目的とする.
庄内平野およびその東の出羽丘陵西部の地質は,新第三紀中新世の玄武岩溶岩および同質火砕岩からなる青沢層,珪質シルト岩を主体とする草薙層,中新世から鮮新世の泥岩主体の北俣層,鮮新世の泥岩よりなる楯山層,シルト岩よりなる丸山層,泥質細粒砂岩からなる観音寺層および更新世の礫,砂,泥よりなる庄内層群から構成される.出羽丘陵西部から庄内平野東縁部には,東から順に,ほぼ南北方向の青沢断層群,酒田衝上断層群および庄内平野東縁断層帯(観音寺断層,通越断層,松山断層)などの断層群とこれと関連する褶曲構造が発達する.今回対象とする伏在断層はこれらの断層群より西側の庄内平野の下に存在する.東郷ほか(2007)によれば,庄内平野には,沖積面が変位している部分があり,平野下の背斜構造を示している.
重力調査は,3測線に沿って行い,それらは,ほぼ東西方向に設定した.それらは,北から順に,山楯測線,最上川測線,および余目測線と呼称する.測線間の南北方向の間隔は,約3kmである.重力測定点の標準的な間隔を200 mとし,それぞれの測線での重力測定点は,42点,116点,57点である.使用した重力計は,シントレックス社製重力計CG-5で,観測点の位置および標高は,RTK-GPSおよび電子レベルを用いて測定した。データの処理は、概ね地質調査総合センター(2004)に従った.ブーゲー補正および地形補正に用いた仮定密度は,2.10 g/cm3とした.
余目測線では,ブーゲー異常は東に向かって約12 mGal増加する.ただし,増加の割合は一様ではなく,全体の平均的な増加傾向に比べ,西端から5500 m付近で3 mGal程度を最大として上に凸のグラフの形状を示す.最上川測線でも,ブーゲー異常は東に向かって大きくなり,西端と東端の差は約55 mGalである.出羽丘陵西縁の観音寺断層以東では,観音寺断層,酒田衝上断層群および青沢断層群を境として段差状にブーゲー異常が増大する.観音寺断層以西の庄内平野側では,余目側線ほどではないが,全体の増加傾向に比べ,最大で2 mGal程度の上に凸状に増大する部分が認められる.山楯測線でも,ブーゲー異常が東に向かって増大する変化傾向は同様である.ただし,庄内平野内での全体の増加傾向に対して上に凸に増大する部分が1 mGal以下になっている.このことは,余目測線付近で確認された伏在断層による地下の地層の変位が北方に向かって減少し,伏在断層の北端が山楯測線よりやや北側にある可能性を示している.講演では,これらのブーゲー異常に対応する地下地質構造および断層構造の推定結果につても報告する予定である.
文献
地質調査総合センター,2004,日本重力CD-ROM,第2 版.
東郷正美,2007,庄内・余目活褶曲について.法政大学多摩研究報告,22,1-8.
庄内平野およびその東の出羽丘陵西部の地質は,新第三紀中新世の玄武岩溶岩および同質火砕岩からなる青沢層,珪質シルト岩を主体とする草薙層,中新世から鮮新世の泥岩主体の北俣層,鮮新世の泥岩よりなる楯山層,シルト岩よりなる丸山層,泥質細粒砂岩からなる観音寺層および更新世の礫,砂,泥よりなる庄内層群から構成される.出羽丘陵西部から庄内平野東縁部には,東から順に,ほぼ南北方向の青沢断層群,酒田衝上断層群および庄内平野東縁断層帯(観音寺断層,通越断層,松山断層)などの断層群とこれと関連する褶曲構造が発達する.今回対象とする伏在断層はこれらの断層群より西側の庄内平野の下に存在する.東郷ほか(2007)によれば,庄内平野には,沖積面が変位している部分があり,平野下の背斜構造を示している.
重力調査は,3測線に沿って行い,それらは,ほぼ東西方向に設定した.それらは,北から順に,山楯測線,最上川測線,および余目測線と呼称する.測線間の南北方向の間隔は,約3kmである.重力測定点の標準的な間隔を200 mとし,それぞれの測線での重力測定点は,42点,116点,57点である.使用した重力計は,シントレックス社製重力計CG-5で,観測点の位置および標高は,RTK-GPSおよび電子レベルを用いて測定した。データの処理は、概ね地質調査総合センター(2004)に従った.ブーゲー補正および地形補正に用いた仮定密度は,2.10 g/cm3とした.
余目測線では,ブーゲー異常は東に向かって約12 mGal増加する.ただし,増加の割合は一様ではなく,全体の平均的な増加傾向に比べ,西端から5500 m付近で3 mGal程度を最大として上に凸のグラフの形状を示す.最上川測線でも,ブーゲー異常は東に向かって大きくなり,西端と東端の差は約55 mGalである.出羽丘陵西縁の観音寺断層以東では,観音寺断層,酒田衝上断層群および青沢断層群を境として段差状にブーゲー異常が増大する.観音寺断層以西の庄内平野側では,余目側線ほどではないが,全体の増加傾向に比べ,最大で2 mGal程度の上に凸状に増大する部分が認められる.山楯測線でも,ブーゲー異常が東に向かって増大する変化傾向は同様である.ただし,庄内平野内での全体の増加傾向に対して上に凸に増大する部分が1 mGal以下になっている.このことは,余目測線付近で確認された伏在断層による地下の地層の変位が北方に向かって減少し,伏在断層の北端が山楯測線よりやや北側にある可能性を示している.講演では,これらのブーゲー異常に対応する地下地質構造および断層構造の推定結果につても報告する予定である.
文献
地質調査総合センター,2004,日本重力CD-ROM,第2 版.
東郷正美,2007,庄内・余目活褶曲について.法政大学多摩研究報告,22,1-8.