14:45 〜 15:00
[STT39-10] InSARとGNSSによる跡津川断層帯周辺の地震間地殻変動および歪速度場の検出
キーワード:InSAR、GNSS、SSM、地震間変動、歪速度、断層
地震間の地殻変動を検出することは時間分解能に優れるGNSSを用いれば容易であるが,険しい山間地においては観測点が極めて少ないために,どうしても空間分解能が落ちる.このことは防災・減災の計画立案において本質的な問題点となり得る.これに対してInSAR解析を用いれば極めて高い空間分解能で面的に変位場を得ることができる.しかし日本のような険しい山間地においては波長の長い(L-band)マイクロ波を使わざるを得ないために感度が低く,成功例は限られている(e.g., Takada et al., 2018).さらにL-band SARは電離層擾乱の影響を強く受けるため,長波長の地震間地殻変動を求める上ではその補正が極めて重要となる.本発表ではInSAR画像における電離層擾乱の影響を補正することにウェイトを置き,その補正結果を用いてInSAR時系列解析により速度場を推定する.さらに,近年技術開発が進んでいるInSARとGNSSデータを組み合わせた3次元速度場および歪速度場の推定を行う(e.g., Franklin and Huang, 2023; Weiss et al., 2020).解析対象は跡津川断層周辺とした.この地域は(1)険しい山岳地帯に位置する,(2)新潟神戸歪集中帯(Sagiya et al., 2000)の一部を成す,(3)比較的密なGNSS観測網が存在する,という3つの条件を満たしている.
はじめに2014年から2022年に撮像されたALOS-2のSM1データを用いてInSAR時系列解析を行った.その際,下記の解析フローに従って電離層および対流圏の擾乱に起因するノイズを補正した.まずSplit Spectrum Method(SSM)(Gomba et al., 2016)により個々の干渉画像における電離層擾乱の影響を補正する.SSMにおいては外れ値の処理とS/N比の低下が大きな課題となる.本研究では,(1)Gomba et al. (2016)が提示した理論値に加えて経験的な閾値を独自に組み合わせて閾値を設けて外れ値を除去し,(2)コヒーレンスによる重みづけを考慮しつつウィンドウサイズを独自に改良したガウスフィルターを用いて空間的な平滑化を行う,という手順で電離層の影響を精密に補正した。次に,オープンソフトウェアGACOS(Yu et al., 2018)により気象モデルを用いた対流圏遅延の補正を行った.このように補正した画像を用いてInSAR時系列解析(Schmidt and Bürgmann, 2003)により短周期擾乱を軽減し,衛星視線方向(LOS)の平均速度場を推定した.推定結果はGNSSデータと調和的あった.
つづいてInSARにより推定した面的な速度場とGNSS解析による速度場を統合して3次元速度場および2次元歪速度場を推定した.まずInSARから得た面的速度場をサブサンプルしてグリッドデータを作る.次に全てのグリッドにGNSS観測点での速度3成分を内挿し,重み付き最小二乗法をもちいて各グリッドにおける3次元速度場を推定した.最後に,推定した速度場の水平成分を用いて平面歪速度を計算した.隣接するグリッド間で差分を行うと各グリッドのノイズの影響が極めて大きくなる.そこで各グリッドについて一定以内の距離に位置するグリッドのデータを集め,これらを平面で近似することにより変位の空間勾配を求め,さらに歪テンソルを計算した.推定した歪速度場(図)には跡津川断層系およびその東西端付近において歪の集中が見られる.高山大原断層帯の一部でも歪速度が大きく推定されている.現在の課題は(1)バリオグラムを考慮したGNSS観測点の内挿方法の導入,(2)SAR画像のパスの継ぎ目におけるギャップの軽減,(3)気象擾乱の影響の軽減,である.
謝辞:
本研究は東京大学地震研究所共同利用 (2021-B-03) の援助を受けた.本研究で用いたPALSAR-2データはPIXEL (PALSAR Interferometry Consortium to Study our Evolving Land surface) において共有しているものであり,宇宙航空研究開発機構 (JAXA) とPIXELとの共同研究契約に基づきJAXAから提供されたものである.PALSAR-2データの所有権はJAXAにある.
はじめに2014年から2022年に撮像されたALOS-2のSM1データを用いてInSAR時系列解析を行った.その際,下記の解析フローに従って電離層および対流圏の擾乱に起因するノイズを補正した.まずSplit Spectrum Method(SSM)(Gomba et al., 2016)により個々の干渉画像における電離層擾乱の影響を補正する.SSMにおいては外れ値の処理とS/N比の低下が大きな課題となる.本研究では,(1)Gomba et al. (2016)が提示した理論値に加えて経験的な閾値を独自に組み合わせて閾値を設けて外れ値を除去し,(2)コヒーレンスによる重みづけを考慮しつつウィンドウサイズを独自に改良したガウスフィルターを用いて空間的な平滑化を行う,という手順で電離層の影響を精密に補正した。次に,オープンソフトウェアGACOS(Yu et al., 2018)により気象モデルを用いた対流圏遅延の補正を行った.このように補正した画像を用いてInSAR時系列解析(Schmidt and Bürgmann, 2003)により短周期擾乱を軽減し,衛星視線方向(LOS)の平均速度場を推定した.推定結果はGNSSデータと調和的あった.
つづいてInSARにより推定した面的な速度場とGNSS解析による速度場を統合して3次元速度場および2次元歪速度場を推定した.まずInSARから得た面的速度場をサブサンプルしてグリッドデータを作る.次に全てのグリッドにGNSS観測点での速度3成分を内挿し,重み付き最小二乗法をもちいて各グリッドにおける3次元速度場を推定した.最後に,推定した速度場の水平成分を用いて平面歪速度を計算した.隣接するグリッド間で差分を行うと各グリッドのノイズの影響が極めて大きくなる.そこで各グリッドについて一定以内の距離に位置するグリッドのデータを集め,これらを平面で近似することにより変位の空間勾配を求め,さらに歪テンソルを計算した.推定した歪速度場(図)には跡津川断層系およびその東西端付近において歪の集中が見られる.高山大原断層帯の一部でも歪速度が大きく推定されている.現在の課題は(1)バリオグラムを考慮したGNSS観測点の内挿方法の導入,(2)SAR画像のパスの継ぎ目におけるギャップの軽減,(3)気象擾乱の影響の軽減,である.
謝辞:
本研究は東京大学地震研究所共同利用 (2021-B-03) の援助を受けた.本研究で用いたPALSAR-2データはPIXEL (PALSAR Interferometry Consortium to Study our Evolving Land surface) において共有しているものであり,宇宙航空研究開発機構 (JAXA) とPIXELとの共同研究契約に基づきJAXAから提供されたものである.PALSAR-2データの所有権はJAXAにある.