日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT39] 合成開口レーダーとその応用

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (17) (オンラインポスター)

コンビーナ:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、木下 陽平(筑波大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、朴 慧美(上智大学地球環境学研究科)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[STT39-P08] 2016年北カンタベリー地震におけるマールボロ地方の地殻変動の抽出

*吉永 誓也1島田 政信2 (1.東京電機大学大学院、2.東京電機大学)


キーワード:ALOS-2/PALSAR-2、2016年北カンタベリー地震、干渉SAR、2.5次元解析

2016年11月13日(現地時間14日0時02分)にニュージーランドのカイクラ(Kaikoura)付近で発生したM7.8の地震(2016年北カンタベリー地震)では、本震後にもM6を超える余震が複数発生し、震央を中心として大きな地殻変動が確認された。本研究ではALOS-2/PALSAR-2のデータを用いて、2016年北カンタベリー地震における地表変動量の推定を行う。また、高分解能モードのStripmapモードの画像を複数枚結合することで、測定範囲を広げる。
研究手順は、画像の結合、InSAR処理、アンラップ処理、2.5次元解析、GNSS点との比較の順とする。
まず、研究対象地域を地震が発生したカンタベリー地方とマールボロ地方とし、Ascending5シーン及び3シーン、Descending6シーンの結合を試みた。Ascendingは5シーンの結合、3シーンの結合ともにノイズは確認されなかったが、Descendingは3シーン以上の結合を行うとノイズが確認された。
次に、正しく結合が行えた画像に対してアンラップ処理を行ったところ、アンラップ処理が出来ていない箇所が確認された。アンラップ処理について検討を行ったところ、干渉縞の規則性が無くなると、アンラップ処理が正しく行われないことが分かった。また、震央やプレートの境界面だと思われる場所に近づくと干渉縞の規則性が無くなる傾向にあり、地震時に見られる極端に大きな変動は、位相差画像に大きな位相変化を生み出し、Lバンドの長波長でも捉えきらない変動が起きると考えられた。
これらの結果を踏まえて、Ascending2シーン、Descending2シーンで解析を行い、研究対象地域はマールボロ地方に限定した。
最後に2.5次元解析を行い、マールボロ地方の準上下成分、準東西成分と、画像内に含まれるGNSSデータ(MAHA点、WITH点)を比較したところ、MAHA点の上下の変動量の差は-4.6cmと近い値が得られ、WITH点の上下の変動量の差は-22.0cmと少しの差が生まれた。それに対し、東西の変動量の差はともに約-70.0cmと大きな差が生まれた。
本研究では、Stripmapモード(分解能10m)の画像を結合することで、広範囲の計測を可能にすることが出来た。また、ScanSARモード(分解能100m)の画像よりも高い精度の地表変位計測を行うことが出来、既往研究のピクセルオフセットの結果との調和的なデータが得られた。しかし、InSARよりもさらに精度の高いGNSSの結果とは違いが生まれ、東西の変動において特に誤差が大きかった。それから、画像の結合の優位性と問題点を確認し、Descendingの複数枚の画像の結合が可能になれば、高精度の地殻変動の抽出をより広範囲に渡って行えることを確認した。