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[STT39-P14] PALSAR-2 Lバンドマイクロ波を用いた熱帯泥炭地の排水路探知
キーワード:湿地環境、人間活動、深層学習
熱帯雨林や北方林に形成される泥炭地は陸域の2−3%に過ぎない面積を占めるがその単位面積あたりの炭素貯蔵量は膨大な量であると知られており、この泥炭地環境を保全することは地球温暖化の緩和の面で極めて重要だとされる。特に、熱帯泥炭地はインドネシアとマレーシアの一部に広く分布しているが、近年人間活動により多くの泥炭が消失しつつあることが懸念されている。土壌中で有機質として存在する炭素を分解することで大気へのCO2排出を促進する代表的な人間活動は、泥炭湿地の排水である。泥炭地における排水状況を調べることは、気候変動の適応と持続可能な開発目標達成のために重要な課題である。雲と降水量の多い熱帯泥炭地の排水路を探知するためには二つの要素、つまり、高解像度かつ雲を透過するマイクロ波を用いる必要がある。本研究では25m解像度のPALSAR-2のHH偏波を用いてピクセル単位のCNN深層学習法を適用し、排水路探知モデルを作成することを目的とした。さらに考察では、可視光や近赤外線画像を用いた他の研究と比較するためにLANDSAT-8のNDVIとPALSAR-2のL-band SARによる排水路、非排水路のデータ分布を明らかにし、マイクロ波の有効性を実証した。まず目視判読で水路の検証データを作成した。LANDSAT-8のNDVIは2020年1月から8月の平均値を計算した。PALSAR-2は2020年のHH偏波データの後方散乱係数を計算したものを使用した。その結果、LANDSAT-8のNDVIの排水路サンプルの平均値は0.6、排水路じゃないサンプルの平均値は0.63であった。PALSAR-2の排水路サンプルの平均値は-10.46dB、排水路じゃないサンプルの平均値は-9.54dBを示した。可視光線と近赤外線から計算されるNDVIを用いる方法は排水路の特徴が0.03という比較的小さな差で決まる。しかし、マイクロ波を使用すると差分の範囲が0.92であり、より大きな差を示すため、分類が容易であるという事が示唆された。さらに、NDVIは雲があると空間的に連続的なデータの取得が難しいという限界を考慮すると、マイクロ波データを利用して排水路を検出することは必須であると言える。