日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT40] 空中からの地球計測とモニタリング

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (18) (オンラインポスター)

コンビーナ:小山 崇夫(東京大学地震研究所)、楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[STT40-P02] 地上ループ型ドローン空中電磁探査法による地質構造調査

*結城 洋一1、小島 真志2、城森 明3 (1.応用地質株式会社、2.株式会社大林組、3.有限会社ネオサイエンス)

キーワード:ドローン空中電磁探査、地上ループ型ドローン空中電磁探査、空中物理探査

トンネル建設プロジェクトにおける地下水リスク評価のために、シンガポールで地上ループ送信型ドローン空中電磁探査を実施した。探査は深度100m程度までの地下水分布状況や断層破砕帯など土木工事に影響するリスクを評価する基礎資料を得ることを目的に実施した。調査地の地形は丘陵地で、地質は表層がマサ化した真砂土が堆積する花崗岩地帯である。

ドローン空中電磁探査は、地上にループソースを送信源として空中から測定する地上ループ型ドローン空中電磁探査法で実施した。我々は、通常送信ケーブルを調査地近傍に直線状に設置するバイポール型で実施しているが、本調査は調査地をケーブルを囲うように設置したループソースを使用した。地上ループ型空中電磁探査の特徴は、ケーブルから大地に電気を流す電極棒が不要であり、送信装置も小型軽量である。可探深度は送信源からの距離によるが、本調査の仕様ではバイポール型空中電磁探査よりも浅く、バイポール型が可探深度約200mであるのに対し、ループソース型は約100mである。

測定はドローンから曳航した受信コイルで鉛直方向の磁場を測定した。GPS のPPS(Pulse Per Second)と高精度時計により送信器と受信器の同期を行い、受信器は最小1μsec のサンプリング間隔で電磁波の過渡応答を記録した。通電波形と受信波は1サイクル16.0msの波形を信号として使用し、1サイクルのデータ個数は16000個であった。
解析は、誘導磁場の遮断時の過渡応答を使用した。1サイクル16 ms の信号を2 秒間毎にスタッキングして1ファイルにした。解析は層構造モデルを仮定し,各層の比抵抗を非線形最小二乗法により求めた。調査結果は比抵抗断面図、比抵抗平面図、比抵抗三次元モデルで表し、比抵抗分布から深度100mまでの地質構造を検討した。

バイポール型ドローン空中電磁探査では、送信源の影響で送信源近傍に解析できない領域が発生する。例えば、送信源から50mの地点では、深度50m以深の領域は不感領域として解析データが得られない。しかし、地上ループソース型ではこの不感領域が狭く、ケーブル近傍でも探査可能であった。

地上ループ型ドローン空中電磁探査には、バイポール型と地上ループソース型がある。バイポール型は可探深度が深い分送信装置が大きい。一方で、地上ループソース型は調査地の周囲にケーブルを敷設しなければならないが、小型で軽量なため、軽車両しかはいらないような場所でも探査が可能である。
このように、ドローン空中電磁探査法は多様な仕様や調査条件に合わせて調査手段を提供できる探査法であり、今後多くの現場で活用されることが期待される。