15:30 〜 17:00
[STT41-P04] SITES法による地震波反射面探査の適用条件に関する検討
解析に用いるSITES(Seismic Interferometry Tomography for the Estimation of tectonic Structure)法(大久保, 2009)は,一般的には鉛直成分記録のみを用いる地震波干渉法を3成分の記録全てを用いるように発展させた解析手法であり,地震波反射面(例:断層,帯水層)の空間的な広がりを一観測点での記録からも評価可能である利点を持つ.これまでに阿寺断層,スマトラ断層アチェセグメント,スリムンセグメントの近傍で得られた微動記録に適用し,断層面からの反射波に相当すると考えられる自己相関関数のピークが得られることを報告している(阿寺断層:大久保(2009); スマトラ断層: Yamashina et al. (2019),山品ほか(2020, 2021)).SITES 法の特徴やこれまでの適用例から,観測の計画・事前調査のためや,調査地域の制約から広範囲に受震点を展開できない,または少数の発震点しか確保できない場合などにおいて,SITES 法は従来の反射法地震探査に対する作業の容易さや制約の少なさ,コスト面から有効な手法となり得る.地震波反射面調査における容易さを秘める SITES 法ではあるが,手法を一般化するためには観測や解析における条件,例えば,必要な観測時間(解析時の重ね合わせ数に関連),サンプリング周波数,地震計の種類(速度計:例えば,Yamashina et al. (2019); 加速度計: 大久保(2009)),フィルターの周波数帯,などを明らかにする必要がある.また,スマトラ断層についてはその位置や地下構造が明確でないことから,既報の反射面についてその妥当性を判断するためにも適切な観測・解析条件を示す必要がある.
本発表では,反射面(断層)や地下構造の情報がある程度得られている中央構造線断層帯の岡村断層,畑野断層,石鎚断層の近傍での微動記録へ様々な解析条件で適用したSITES 法の結果を示し,検討しているSITES 法の適用条件について報告する.データには,高知大学土居地震観測室(KC.DOI;愛媛県四国中央市)においてサンプリング周波数 200 Hz で連続記録された,東京測振社製 VSE-11 (水平動)および VSE-12 (上下動) による速度および加速度記録を用いた.KC.DOI は,岡村断層の東端部,畑野断層の西端部,石鎚断層からそれぞれ約 500 m,約 2 km,約2.5 km にある観測点である.また,KC.DOI から各断層への方位は概ね N160°E である.KC.DOI の西約 10 km では,岡村断層および石鎚断層を調査対象にした反射法地震探査が行われ,反射断面が得られている(堤ほか, 2007).本報告では,使用するデータ長(15分,30分,1時間,1日など)やフィルターの帯域などを変えた解析条件での SITES 法による結果と堤ほか(2007)による反射断面の結果との位置関係を比較することにより,SITES 法の適用条件を検討した.初期解析では,上記3断層のいずれかからの反射波を示唆する自己相関関数のピークが得られている.結果の一例を図に示す.この例における解析条件は,1時間の速度波形記録,バンドパスフィルターの帯域は 0.1 – 50 Hz,自己相関関数の計算におけるラグは 5.0 秒,方位・傾斜方向の間隔は 10°である.様々な解析条件での試行から,これまでのスマトラ断層などに対する解析結果の解釈についてサポートする情報を得られる可能性がある.
今後は,断層と観測点との距離の違いによる影響を評価するために他の観測点での記録への適用結果の検討,既報のスマトラ断層に対する結果についての再検討を行う計画である.なお,スマトラ断層に関してはデータ長を変えた解析を開始しており,観測地点の地形などの環境に左右される可能性はあるが数時間程度の観測データで地震波反射面の推定が十分に可能と評価している.
図の説明:
(a):土居地震観測室(KC.DOI)周辺の中央構造線断層帯分布と堤ほか(2007)による反射法地震探査測線「新居浜測線(2022 Niihama Line)」.堤ほか(2007)の Fig. 1B へ加筆.
(b):新居浜測線に対する重合時間断面.KC.DOI および畑野断層(HF)の位置については,KC.DOI 付近での,それぞれ岡村断層(OF)と石鎚断層(IzF)との距離に応じて示している.堤ほか(2007)の Fig. 7a へ加筆.
(c):KC.DOI における微動に対して SITES 法により得られた自己相関関数分布の例.OF,HF,IzF の各断層へ直交する方位 N160°E についての断面.
(d):(c) と同じで,傾斜角 30° の場合の分布.径方向はラグを示し,(c) と同じ 1.5 sec. である.
文献:
大久保 慎人, 2009, 地震波干渉法による地下構造の評価, 日本地球惑星科学連合2009年大会予稿集, S157-015
堤 浩之ほか, 2007, 四国の中央構造線断層帯の浅層反射法地震探査-2002年新居浜測線と2003年阿波測線-, 東京大学地震研究所彙報, 82, 105-117, doi:10.15083/0000032491
Yamashina, T. et al., 2019, Exploration of the Fault Extension using SITES Method; Aceh and Seulimeum Segments of the Sumatran Fault, Indonesia, AGU Fall Meeting 2019, S11D-0373.
山品 匡史ほか, 2020, SITES法によるスマトラ断層の断層面推定, 日本地震学会2020年度秋季大会講演予稿集, S10P-12
山品 匡史ほか, 2021, SITES法によるスマトラ断層の断層面推定 (2), 日本地震学会2021年度秋季大会講演予稿集, S16P-11
本発表では,反射面(断層)や地下構造の情報がある程度得られている中央構造線断層帯の岡村断層,畑野断層,石鎚断層の近傍での微動記録へ様々な解析条件で適用したSITES 法の結果を示し,検討しているSITES 法の適用条件について報告する.データには,高知大学土居地震観測室(KC.DOI;愛媛県四国中央市)においてサンプリング周波数 200 Hz で連続記録された,東京測振社製 VSE-11 (水平動)および VSE-12 (上下動) による速度および加速度記録を用いた.KC.DOI は,岡村断層の東端部,畑野断層の西端部,石鎚断層からそれぞれ約 500 m,約 2 km,約2.5 km にある観測点である.また,KC.DOI から各断層への方位は概ね N160°E である.KC.DOI の西約 10 km では,岡村断層および石鎚断層を調査対象にした反射法地震探査が行われ,反射断面が得られている(堤ほか, 2007).本報告では,使用するデータ長(15分,30分,1時間,1日など)やフィルターの帯域などを変えた解析条件での SITES 法による結果と堤ほか(2007)による反射断面の結果との位置関係を比較することにより,SITES 法の適用条件を検討した.初期解析では,上記3断層のいずれかからの反射波を示唆する自己相関関数のピークが得られている.結果の一例を図に示す.この例における解析条件は,1時間の速度波形記録,バンドパスフィルターの帯域は 0.1 – 50 Hz,自己相関関数の計算におけるラグは 5.0 秒,方位・傾斜方向の間隔は 10°である.様々な解析条件での試行から,これまでのスマトラ断層などに対する解析結果の解釈についてサポートする情報を得られる可能性がある.
今後は,断層と観測点との距離の違いによる影響を評価するために他の観測点での記録への適用結果の検討,既報のスマトラ断層に対する結果についての再検討を行う計画である.なお,スマトラ断層に関してはデータ長を変えた解析を開始しており,観測地点の地形などの環境に左右される可能性はあるが数時間程度の観測データで地震波反射面の推定が十分に可能と評価している.
図の説明:
(a):土居地震観測室(KC.DOI)周辺の中央構造線断層帯分布と堤ほか(2007)による反射法地震探査測線「新居浜測線(2022 Niihama Line)」.堤ほか(2007)の Fig. 1B へ加筆.
(b):新居浜測線に対する重合時間断面.KC.DOI および畑野断層(HF)の位置については,KC.DOI 付近での,それぞれ岡村断層(OF)と石鎚断層(IzF)との距離に応じて示している.堤ほか(2007)の Fig. 7a へ加筆.
(c):KC.DOI における微動に対して SITES 法により得られた自己相関関数分布の例.OF,HF,IzF の各断層へ直交する方位 N160°E についての断面.
(d):(c) と同じで,傾斜角 30° の場合の分布.径方向はラグを示し,(c) と同じ 1.5 sec. である.
文献:
大久保 慎人, 2009, 地震波干渉法による地下構造の評価, 日本地球惑星科学連合2009年大会予稿集, S157-015
堤 浩之ほか, 2007, 四国の中央構造線断層帯の浅層反射法地震探査-2002年新居浜測線と2003年阿波測線-, 東京大学地震研究所彙報, 82, 105-117, doi:10.15083/0000032491
Yamashina, T. et al., 2019, Exploration of the Fault Extension using SITES Method; Aceh and Seulimeum Segments of the Sumatran Fault, Indonesia, AGU Fall Meeting 2019, S11D-0373.
山品 匡史ほか, 2020, SITES法によるスマトラ断層の断層面推定, 日本地震学会2020年度秋季大会講演予稿集, S10P-12
山品 匡史ほか, 2021, SITES法によるスマトラ断層の断層面推定 (2), 日本地震学会2021年度秋季大会講演予稿集, S16P-11