日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT41] 地震観測・処理システム

2023年5月21日(日) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (3) (オンラインポスター)

コンビーナ:松元 康広(株式会社構造計画研究所)、林田 拓己(国立研究開発法人建築研究所 国際地震工学センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[STT41-P05] 観測点からの逆伝播を利用した震源推定方法において出現する見かけの震源

*関口 渉次1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:震源決定手法

前回の発表において、波面を各観測点から逆に伝搬させることによって震源を簡便に推定する方法を開発したことを報告した。読み取り値の地震波位相の分別および地震毎のグルーピングが不用な点が特徴であった。人工的なデータセットを使って、有効に動作することを確認した。
今回は実際のデータに適用した結果について報告する。2022年1月22日日向灘で発生した地震、2016年熊本地震、日本列島全体の実際のデータに適用したところ、90%以上の震源の検出に成功した。さらに東北地方太平洋沖地震の直後の4時間のデータセットに適用したところ、震源検出率は低下(77%)したものの全体を把握するには十分であったが、見かけの地震が何点か沖合に現れてしまう、という好ましくない結果が出てきた (Figure 1)。
沖合に見かけの地震が現れてしまう原因としては、沿岸付近の1分程度発生時刻がずれた2つの地震からの波を沖合の一つの地震か発したP波、S波によるものと誤認識したことによると思われる。そこで、この見かけの地震を抑えるために、観測点からの距離が遠い地震は読み取り値の数が多いもののみを採用する、という条件を付けた。すると、検出率は多少落ちた(75%)が、うまく沖合の見かけ地震を抑えることができた (Figure 2)。
今回の計算例では、空間格子点間隔が速度で割って時間に換算した場合、時間格子点間隔より長くなっている。そこで、波面を格子点上で連続的に追跡できるように、時間軸上で波面の前後にも得点を与えている。具体的には三角形型の重みで前後1(P波),2(S波)格子点に得点を与えている。もし、到着時刻に対応する格子点のみに得点を与えると、我々のアルゴリズムでは、ある瞬間ある格子点で波面が存在しない、という状況が発生する。その瞬間が発震時刻にあたるとそれは検出困難となる。それを避けるため、前後にも得点を与え格子点上の得点分布をスムーズにしている。
他の重みの形を試してみた。三角形型ではなく一定に1を与えた場合、東北地方太平洋沖地震を除いて結果にほとんど違いはなかった。東北地方太平洋沖地震では検出率が著しく低下した(38%)。スムージングをせずに到着時刻のみに得点を与えた場合(デルタ関数型)、途中で検出できなくなることがここで紹介していない他の計算例で時々発生した。東北地方太平洋沖地震では、検出率は悪化した(64%)ものの一定値の場合よりは良い結果になった。したがって、重みの形は今のところ三角形型が最も良いようである。