日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT43] ハイパフォーマンスコンピューティングが拓く固体地球科学の未来

2023年5月22日(月) 09:00 〜 10:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:堀 高峰(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、八木 勇治(国立大学法人 筑波大学大学院 生命環境系)、汐見 勝彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:堀 高峰(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、汐見 勝彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

09:45 〜 10:00

[STT43-04] スーパーコンピュータ「富岳」を用いた日本近海の海溝型巨大地震の長周期地震動評価

*西本 昌1山本 優1縣 亮一郎2、廣部 紗也子2、日吉 善久2堀 高峰2 (1.大成建設技術センター、2.海洋研究開発機構)

キーワード:長周期地震動、3次元有限要素法、海溝型巨大地震、震源特性の不確実性

今後発生が懸念される海溝型地震では,長周期地震動の発生により,超高層建築物や免震建築物等の固有周期が長い建築物に大きな影響を与える可能性がある.一方で,発生確率が低い巨大地震による最大級の地震動に対して,軽微な被害に留める設計は経済的ではなく,地震動強さのばらつきと建築物の損傷程度を適切に考慮して設計することが望ましい.そのためには,巨大地震による長周期地震動の地震動強さとばらつきを把握しておくことが重要となる.そこで,本研究では,震源特性の不確実性を考慮した震源モデルを用い,3次元有限要素法により,日本近海の海溝型巨大地震による長周期地震動の強さおよびばらつきを評価した.

地震動評価は,地震動計算用大規模3D-FEM計算プログラム「E-wave FEM」を用い,スーパーコンピュータ「富岳」で計算した.地下構造は防災科研の浅部・深部統合地盤モデルの下部に地震本部の全国1次地下構造モデルのプレート構造を接続した.計算対象周期3.3秒以上で1波長あたり概ね5要素の大きさとなるよう,四面体2次要素に分割した.メッシュ分割には「地球シミュレータ」を用いた.震源モデルは,内閣府や川辺ほか(2013)のモデルを参考に,アスペリティサイズ,アスペリティ位置,破壊開始点位置の3つの震源特性に不確実性を考慮し設定した.その他の震源特性はレシピに従った.

以上の解析手法,地下構造モデル,震源モデルを用いて長周期地震動を計算したところ,長周期地震動の強さは深部地盤構造の影響を強く受ける結果となった.また,震源特性が長周期地震動の強さの空間的な分布に与える影響を分析した結果を報告する.

謝辞:本研究は,文部科学省「富岳」成果創出加速プログラム「大規模数値シミュレーションによる地震発生から地震動・地盤増幅評価までの統合的予測システムの構築とその社会実装」(JPMXP1020200203)の一環として実施されたものです.また,スーパーコンピュータ「富岳」の計算資源の提供を受け,実施しました(課題番号: hp220171).有限要素のメッシュ分割には海洋研究開発機構の地球シミュレータを用いました.本解析結果は,東京大学地震研究所が開発中のコードを「富岳」PJにおいて提供していただき,JAMSTECが独自に改変・運用し得られたものです.コードの提供について,ここに記して謝意を表します.また,防災科学技術研究所K-NETとKiK-netの強震記録,J-SHISの深部地盤構造,地震調査研究推進本部の全国1次地下構造モデルを使用しました.関係各位に記して謝意を表します.