10:45 〜 12:15
[STT44-P07] 複素スペクトル行列の固有値分解に基づく偏波解析と低SN比イベント検出への適用
キーワード:偏波解析、粒子軌跡、スペクトル行列解析、イベント検出、固有値分解
大量の地震波形の時系列データ解析は地震現象の理解や地下構造の推定,地下資源開発におけるリスク評価に有用である.特に,SNRが低い小規模な地震動を検出・解析できれば,データ数の増加による解析精度の向上につながる.イベント検出手法には,波形振幅の急激な時間変化を利用するshort-time average/long-time average法,地震波形のテンプレートを利用するマッチドフィルタ法,ニューラルネットワークを利用した方法などがある.これらの方法は,手法の性質により低SNRイベントの検出に不向きな場合や,事前の準備が検出性能に影響を与える場合がある.これに対し,3成分の波形データで生成する粒子軌跡とそのスペクトル行列を解析して波形を特徴づけることで,P波を検出する手法がある.この手法は3成分の波形データとそのスペクトル行列の固有値や固有ベクトルで計算される指標のみでP波を検出でき,テンプレートや事前の学習を必要としない.
本研究では,前述のスペクトル行列解析を複素数に拡張した.従来手法では本来1ランク複素対称行列であるスペクトル行列について,その対角成分の実部を取り,2ランクの実対称行列として解析する.そのため,P波以外の全ての情報が第二固有ベクトルに含まれる.提案手法では,時間遅延成分を導入し,固有値・固有ベクトルの数を増やすことで,P波検出におけるノイズフロアを下げた.また,固有ベクトルが複素数で得られるため,第一固有ベクトルの実部と虚部から計算する位相の情報も併用して波形の特性を評価できる.この特性を利用した新たな評価指標も提案し,従来の指標と併せて波形の特性を評価することでより低SNRのイベントを検出可能にした.
提案手法を人工波形と実データに提案手法を適用し,性能評価を行った.人工波形はイベント波形が2周期の10 Hzのサイン波に4-10 Hzのバンドリミテッドノイズを重畳したものを用いた.ノイズ強さを変化させてP波検出に対する感度テストを行った結果,時間遅れ幅を適切に設定することでコヒーレントなシグナルの検出感度が向上することを示した.SNRが-5 dBの条件ではシグナルの1周期程度の時間遅れを取ることで,ノイズとシグナルをほぼ分離できた.実データでのテストはオランダのグローニンゲンガス田で記録された実波形を用いて行い,既存手法では検出されなかった低SNRイベントを複数検出した.
本研究では,前述のスペクトル行列解析を複素数に拡張した.従来手法では本来1ランク複素対称行列であるスペクトル行列について,その対角成分の実部を取り,2ランクの実対称行列として解析する.そのため,P波以外の全ての情報が第二固有ベクトルに含まれる.提案手法では,時間遅延成分を導入し,固有値・固有ベクトルの数を増やすことで,P波検出におけるノイズフロアを下げた.また,固有ベクトルが複素数で得られるため,第一固有ベクトルの実部と虚部から計算する位相の情報も併用して波形の特性を評価できる.この特性を利用した新たな評価指標も提案し,従来の指標と併せて波形の特性を評価することでより低SNRのイベントを検出可能にした.
提案手法を人工波形と実データに提案手法を適用し,性能評価を行った.人工波形はイベント波形が2周期の10 Hzのサイン波に4-10 Hzのバンドリミテッドノイズを重畳したものを用いた.ノイズ強さを変化させてP波検出に対する感度テストを行った結果,時間遅れ幅を適切に設定することでコヒーレントなシグナルの検出感度が向上することを示した.SNRが-5 dBの条件ではシグナルの1周期程度の時間遅れを取ることで,ノイズとシグナルをほぼ分離できた.実データでのテストはオランダのグローニンゲンガス田で記録された実波形を用いて行い,既存手法では検出されなかった低SNRイベントを複数検出した.