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[STT44-P09] 観測点選択法を用いた震源決定のための地震観測網デザイン:数値実験による検証
キーワード:地震震源、震源決定、観測点選択
地震の震源位置は地震学において最も基礎となる情報である.特に,大規模地震の余震や群発地震の震源位置を精度良く決定することは,それらの活動の時空間的特徴や地震発生場の環境を理解する上で非常に重要である.このため,余震や群発地震のような,定常地震観測網の観測点間隔よりも小さな空間スケールでの地震活動に対しては,より精緻な震源位置の推定などを目的として臨時の地震観測網がしばしば展開される.その際,新たに追加する観測点の配置は震源位置の推定精度に大きく影響を与える[e.g., Kraft et al., 2013].このため,観測点配置を適切にデザインすることで,より正確な震源位置の推定の実現につながることが期待される.
本研究では,地震の震源決定を目的として,最適化実験計画法と貪欲法による準最適な観測点配置の探索を検討した.具体的には,地震波動場再構成の問題に対してNakai et al. [arXiv]が提案した観測点選択法を震源決定の問題へ応用し,数値実験によりその有用性を検証した.この観測点選択法では,問題を真値周りで線形化し,選択済み観測点および観測点候補の震源情報(震源位置と起震時刻)に対する感度を表す感度行列から計算する.線形逆問題におけるFisher情報行列の行列式(D最適指標)を観測点の評価に利用する.既に選択された観測点と次に追加する観測点をD最適指標に基づき評価し,その指標を最大化する候補観測点を逐次的に選択する.このプロセスは既存観測点群にある地点の観測情報を追加した際に,震源情報の線形推定における信頼楕円を最も小さくすることが期待される観測点を選択することを意味しする.
震源決定に使用するP波やS波の到着時刻データは必ずしもすべての観測点で得られるとは限らない.そのようなデータセットの性質による不安定化を避けるため,本研究では,正則化付きのD最適指標 [Saito et al., 2021]を目的関数とした.なお,D最適指標を用いた震源決定問題に対する最適な観測点配置の探索手法はKraft et al. [2013]でも提案されている.彼らのアプローチに対して,観測点選択法は計算コストが小さいことが利点となる.
数値実験では震央距離30 km以内に候補観測点を配置し,貪欲法による選択順序を評価した.地震は1つとして,その震源は領域中心の深さ10 kmに仮定した.なお,簡単のため,本研究はP波のみを扱い,速度は一様の5.8 km/sとした.実観測で震源決定を行うためには,4観測点以上で到達時刻が検測される必要がある.このため,4観測点以上のケースについてのみ考える.なお,4観測点の場合,震源直上と円周上に三角形を成す,良く知られた観測点レイアウトが得られた.提案手法で選択された観測点組み合わせは,ランダムに選択した場合に比べて,目的関数を平均的に大きくすることが確認できた.
謝辞:本研究はJST CREST [JPMJCR1763]の支援をいただきました.記して感謝申し上げます.
本研究では,地震の震源決定を目的として,最適化実験計画法と貪欲法による準最適な観測点配置の探索を検討した.具体的には,地震波動場再構成の問題に対してNakai et al. [arXiv]が提案した観測点選択法を震源決定の問題へ応用し,数値実験によりその有用性を検証した.この観測点選択法では,問題を真値周りで線形化し,選択済み観測点および観測点候補の震源情報(震源位置と起震時刻)に対する感度を表す感度行列から計算する.線形逆問題におけるFisher情報行列の行列式(D最適指標)を観測点の評価に利用する.既に選択された観測点と次に追加する観測点をD最適指標に基づき評価し,その指標を最大化する候補観測点を逐次的に選択する.このプロセスは既存観測点群にある地点の観測情報を追加した際に,震源情報の線形推定における信頼楕円を最も小さくすることが期待される観測点を選択することを意味しする.
震源決定に使用するP波やS波の到着時刻データは必ずしもすべての観測点で得られるとは限らない.そのようなデータセットの性質による不安定化を避けるため,本研究では,正則化付きのD最適指標 [Saito et al., 2021]を目的関数とした.なお,D最適指標を用いた震源決定問題に対する最適な観測点配置の探索手法はKraft et al. [2013]でも提案されている.彼らのアプローチに対して,観測点選択法は計算コストが小さいことが利点となる.
数値実験では震央距離30 km以内に候補観測点を配置し,貪欲法による選択順序を評価した.地震は1つとして,その震源は領域中心の深さ10 kmに仮定した.なお,簡単のため,本研究はP波のみを扱い,速度は一様の5.8 km/sとした.実観測で震源決定を行うためには,4観測点以上で到達時刻が検測される必要がある.このため,4観測点以上のケースについてのみ考える.なお,4観測点の場合,震源直上と円周上に三角形を成す,良く知られた観測点レイアウトが得られた.提案手法で選択された観測点組み合わせは,ランダムに選択した場合に比べて,目的関数を平均的に大きくすることが確認できた.
謝辞:本研究はJST CREST [JPMJCR1763]の支援をいただきました.記して感謝申し上げます.