15:30 〜 17:00
[SVC28-P01] 蔵王火山,御釜火砕岩類における斜長石メルト包有物の含水量:マグマ上昇過程への示唆
キーワード:マグマ上昇、メルト包有物、減圧速度、H2O拡散、斜長石、蔵王火山
蔵王火山は東北日本の火山フロント中央部に位置する代表的な第四紀活火山である.最新の火口である御釜火口は西暦1200年ごろから活動を開始した.御釜火口の活動(御釜火砕物)は小規模(VEI=1–2)な水蒸気噴火またはマグマ水蒸気噴火で特徴づけられる.このような小規模噴火をもたらすマグマ上昇プロセスを明らかにすることは防災上重要にもかかわらず,研究例は多くない.本研究では,蔵王火山の最新期の活動である御釜火砕岩類に含まれる斜長石斑晶メルト包有物の分析から,マグマ上昇過程について検討した.
噴出物はカルクアルカリ・中間カリウム系列に属する玄武岩質安山岩~安山岩(~57 wt% SiO2)で,石基は安山岩~デイサイト組成(~62 wt% SiO2)である.斑晶鉱物として斜長石,直方輝石,単斜輝石,鉄チタン酸化物鉱物が含まれ,まれにかんらん石が認められる.斜長石と直方輝石のリム組成はそれぞれAn 67とMg# 66で単峰性の分布を示した.斜長石–メルト含水量計,直方輝石–メルト温度計,直方輝石–メルト圧力計をそれぞれの鉱物リム–バルク石基組成ペアに適用すると,温度・圧力・含水量は1025°C, 200 MPa, 3.0 wt% H2Oと制約された.
本研究では,FT-IR分析によって斜長石斑晶中に含まれるメルト包有物の含水量を測定した.その結果,メルト包有物の含水量は0.8–2.8 wt% H2Oであり,推定された温度において飽和含水量を仮定すると圧力は10–80 MPaに相当した.
斜長石メルト含水量計は噴火直前のマグマ溜まりの含水量を反映している一方で,メルト包有物は上昇中の脱ガスによる再平衡化を受けていると考えられる.メルト包有物が斜長石斑晶に完全に囲まれていたとしても,包有物中の水は斜長石中のH+拡散によって結晶の外へと散逸する.再平衡化の程度はメルト包有物のサイズや結晶リムからの距離に依存し,小さくリムに近い包有物ほど再平衡化が進みやすい.したがってメルト包有物中の含水量のバリエーションは再平衡の程度を反映していると考えられる.メルト包有物が再平衡化するには,比較的ゆっくりとマグマが上昇したと考えられる.メルト包有物の含水量の下限がマグマの破砕深度を反映すると考え,飽和圧力をマグマ密度2500 kg m−3,静岩圧を仮定して深度に換算すると,マグマは深さ<0.4 kmで破砕したと推定される.
噴出物はカルクアルカリ・中間カリウム系列に属する玄武岩質安山岩~安山岩(~57 wt% SiO2)で,石基は安山岩~デイサイト組成(~62 wt% SiO2)である.斑晶鉱物として斜長石,直方輝石,単斜輝石,鉄チタン酸化物鉱物が含まれ,まれにかんらん石が認められる.斜長石と直方輝石のリム組成はそれぞれAn 67とMg# 66で単峰性の分布を示した.斜長石–メルト含水量計,直方輝石–メルト温度計,直方輝石–メルト圧力計をそれぞれの鉱物リム–バルク石基組成ペアに適用すると,温度・圧力・含水量は1025°C, 200 MPa, 3.0 wt% H2Oと制約された.
本研究では,FT-IR分析によって斜長石斑晶中に含まれるメルト包有物の含水量を測定した.その結果,メルト包有物の含水量は0.8–2.8 wt% H2Oであり,推定された温度において飽和含水量を仮定すると圧力は10–80 MPaに相当した.
斜長石メルト含水量計は噴火直前のマグマ溜まりの含水量を反映している一方で,メルト包有物は上昇中の脱ガスによる再平衡化を受けていると考えられる.メルト包有物が斜長石斑晶に完全に囲まれていたとしても,包有物中の水は斜長石中のH+拡散によって結晶の外へと散逸する.再平衡化の程度はメルト包有物のサイズや結晶リムからの距離に依存し,小さくリムに近い包有物ほど再平衡化が進みやすい.したがってメルト包有物中の含水量のバリエーションは再平衡の程度を反映していると考えられる.メルト包有物が再平衡化するには,比較的ゆっくりとマグマが上昇したと考えられる.メルト包有物の含水量の下限がマグマの破砕深度を反映すると考え,飽和圧力をマグマ密度2500 kg m−3,静岩圧を仮定して深度に換算すると,マグマは深さ<0.4 kmで破砕したと推定される.