10:45 〜 12:15
[SVC29-P02] 海底火山への一次元噴煙モデルの応用
キーワード:混入係数、一次元噴煙モデル、海底火山
はじめに
火道流や噴煙などのモデリングについては数多くの研究がなされ、それぞれに対する外来水の影響は定量的に評価されて来たものの、海底火山噴火などで想定される海の中の噴煙柱をモデル化したものは少ない。今回Mastin(2007) の大気中の1次元定常噴煙モデルを応用することで水中での噴火ダイナミクスについて検討した。このような扱いを最初に提案したのはRowell et al. (2022)で、彼らは地下・海中・大気中の流れを統合的に計算している。しかし、彼らの目的は成層圏への二酸化硫黄放出への海水の影響を評価することにあり、海中の噴煙柱の挙動は詳細に議論されていない。また、噴煙柱ダイナミクスで最も重要な周辺流体の混入係数については、大気中の噴煙モデル同様、密度差の小さい流体間に成り立つCarrazzo et al.(2008)の式を適用しているが、その妥当性には検討の余地が残る。そこで、本研究では、混入係数の変化により、水中の一次元噴煙モデルがどのようなふるまいを示すのか調べてみた。
手法
Mastin(2007)のモデルでは、各高度における大気の圧力、密度、エンタルピー、水蒸気量を参照し、噴煙柱の速度と混入係数に従って取り込みつつ、質量・運動量・エンタルピーの式を積分することで噴煙の形と到達高度を計算している。今回、周囲の状態を海水に変化させ、また圧力を静水圧勾配に変化させ、水中の火口から水面までの計算を行った。入力パラメータは、Mastin(2007)モデルと同じ、噴出口の半径、噴出速度、マグマの温度、密度、比熱とガス質量分率、新しく加えた火口水深と混入係数である。今回は、水深を300m、噴出速度を200m/s、マグマ温度を1000℃、マグマ密度2500kg/m3、マグマ比熱1000J/kg/K、マグマ性ガスはすべて水蒸気としての質量分率を0.01に固定し、混入係数と火口半径を系統的に変化させて計算を行った。ここで、火口半径や噴出速度など海底での入力条件は、火道内の不足膨張流れが海底噴出直後に自由膨張した後の状態を想定している。
結果
まず、火口半径を15mに固定し混入係数の影響を観察した。一般的な一次元噴煙モデルで用いられる混入係数である0.09を用いた場合、噴煙柱は火口直上で水蒸気が増大し拡大するが、数メートルで凝縮し熱水に変化してしまうことが分かった。その結果、噴煙柱の半径は減少し火口半径と同程度にしぼみ、海水よりも重たい熱水と火砕物の混合物の流れに変化した。その後は初期の運動量によって10m/sのオーダーの速度を保ち湧昇する流れとなった。水面での水の質量分率は91%となり、温度は36℃となった。一方、十分に低い混入係数係数(0.001)では水蒸気を維持したまま低密度を保ち上昇する結果となった。このとき、水蒸気の凝縮に伴う半径の減少と圧力低下に伴う気体膨脹の効果がつり合い、筒状の外形となった。水面での水の質量分率は49%になった。
次に混入係数0.03の状態で、火口半径を変化させてふるまいを調べた。火口が十分に大きい場合(半径75m)、噴煙は低密度、初期の噴出速度を保ち水面に到達する。火口から50mほどまでは周囲の海水を取り込み水蒸気に変化させ噴煙径は拡大する。その後は水蒸気の凝縮が起こり半径は減少するものの完全に凝縮することはなく上昇する。水深が70mほどから気体の膨張の効果が卓越するようになり、水面に近づくにつれ急激に半径が拡大する結果となった。そのとき、海面からの噴出速度は、約204m/sであった。また取り込まれた水の質量分率は63%になった。火口が中程度の場合(半径25m)、噴煙は途中熱水の流れとなるものの、浅部で再沸騰し始める結果となった。水面付近では火口が十分に大きい場合の噴煙密度と同程度まで密度低下し、半径の拡大も起こった。最終的な噴出速度は110m/s、水の質量分率68%、混合物の温度は100℃となった。火口が十分に小さい場合(半径15m)、噴煙は海水に飲み込まれ、比較的穏やかな熱水の流れとなって上昇し、そのまま水面まで到達する結果となった。水面では39m/sで70℃の熱水が吹き上がる結果となった。
議論と今後の計画
大気中の噴煙と比べて海中の噴煙の場合、取り込む周囲流体が高密度・低エンタルピーであること、周囲の圧力勾配が大きいことから、凝縮や再沸騰に伴い、流れ方向に大きな半径変化が発生する。その形状は、混入係数や噴出半径(または質量流量)に依存することが明らかになった。このような形状および海中の噴煙体積が時間変化すれば、津波など海中波動を発生させる可能性がある。また、今回は一次元定常流れを仮定して計算したが、そのような流れが安定して存在できそうにない形状も計算された。今後は、海中の混入係数について妥当なモデルを開発し、一次元定常流れとしての解のパラメータ依存性(火口直径、混入係数、水深、質量流量)を整理するとともに、流れの安定性についても検討していく予定である。
火道流や噴煙などのモデリングについては数多くの研究がなされ、それぞれに対する外来水の影響は定量的に評価されて来たものの、海底火山噴火などで想定される海の中の噴煙柱をモデル化したものは少ない。今回Mastin(2007) の大気中の1次元定常噴煙モデルを応用することで水中での噴火ダイナミクスについて検討した。このような扱いを最初に提案したのはRowell et al. (2022)で、彼らは地下・海中・大気中の流れを統合的に計算している。しかし、彼らの目的は成層圏への二酸化硫黄放出への海水の影響を評価することにあり、海中の噴煙柱の挙動は詳細に議論されていない。また、噴煙柱ダイナミクスで最も重要な周辺流体の混入係数については、大気中の噴煙モデル同様、密度差の小さい流体間に成り立つCarrazzo et al.(2008)の式を適用しているが、その妥当性には検討の余地が残る。そこで、本研究では、混入係数の変化により、水中の一次元噴煙モデルがどのようなふるまいを示すのか調べてみた。
手法
Mastin(2007)のモデルでは、各高度における大気の圧力、密度、エンタルピー、水蒸気量を参照し、噴煙柱の速度と混入係数に従って取り込みつつ、質量・運動量・エンタルピーの式を積分することで噴煙の形と到達高度を計算している。今回、周囲の状態を海水に変化させ、また圧力を静水圧勾配に変化させ、水中の火口から水面までの計算を行った。入力パラメータは、Mastin(2007)モデルと同じ、噴出口の半径、噴出速度、マグマの温度、密度、比熱とガス質量分率、新しく加えた火口水深と混入係数である。今回は、水深を300m、噴出速度を200m/s、マグマ温度を1000℃、マグマ密度2500kg/m3、マグマ比熱1000J/kg/K、マグマ性ガスはすべて水蒸気としての質量分率を0.01に固定し、混入係数と火口半径を系統的に変化させて計算を行った。ここで、火口半径や噴出速度など海底での入力条件は、火道内の不足膨張流れが海底噴出直後に自由膨張した後の状態を想定している。
結果
まず、火口半径を15mに固定し混入係数の影響を観察した。一般的な一次元噴煙モデルで用いられる混入係数である0.09を用いた場合、噴煙柱は火口直上で水蒸気が増大し拡大するが、数メートルで凝縮し熱水に変化してしまうことが分かった。その結果、噴煙柱の半径は減少し火口半径と同程度にしぼみ、海水よりも重たい熱水と火砕物の混合物の流れに変化した。その後は初期の運動量によって10m/sのオーダーの速度を保ち湧昇する流れとなった。水面での水の質量分率は91%となり、温度は36℃となった。一方、十分に低い混入係数係数(0.001)では水蒸気を維持したまま低密度を保ち上昇する結果となった。このとき、水蒸気の凝縮に伴う半径の減少と圧力低下に伴う気体膨脹の効果がつり合い、筒状の外形となった。水面での水の質量分率は49%になった。
次に混入係数0.03の状態で、火口半径を変化させてふるまいを調べた。火口が十分に大きい場合(半径75m)、噴煙は低密度、初期の噴出速度を保ち水面に到達する。火口から50mほどまでは周囲の海水を取り込み水蒸気に変化させ噴煙径は拡大する。その後は水蒸気の凝縮が起こり半径は減少するものの完全に凝縮することはなく上昇する。水深が70mほどから気体の膨張の効果が卓越するようになり、水面に近づくにつれ急激に半径が拡大する結果となった。そのとき、海面からの噴出速度は、約204m/sであった。また取り込まれた水の質量分率は63%になった。火口が中程度の場合(半径25m)、噴煙は途中熱水の流れとなるものの、浅部で再沸騰し始める結果となった。水面付近では火口が十分に大きい場合の噴煙密度と同程度まで密度低下し、半径の拡大も起こった。最終的な噴出速度は110m/s、水の質量分率68%、混合物の温度は100℃となった。火口が十分に小さい場合(半径15m)、噴煙は海水に飲み込まれ、比較的穏やかな熱水の流れとなって上昇し、そのまま水面まで到達する結果となった。水面では39m/sで70℃の熱水が吹き上がる結果となった。
議論と今後の計画
大気中の噴煙と比べて海中の噴煙の場合、取り込む周囲流体が高密度・低エンタルピーであること、周囲の圧力勾配が大きいことから、凝縮や再沸騰に伴い、流れ方向に大きな半径変化が発生する。その形状は、混入係数や噴出半径(または質量流量)に依存することが明らかになった。このような形状および海中の噴煙体積が時間変化すれば、津波など海中波動を発生させる可能性がある。また、今回は一次元定常流れを仮定して計算したが、そのような流れが安定して存在できそうにない形状も計算された。今後は、海中の混入係数について妥当なモデルを開発し、一次元定常流れとしての解のパラメータ依存性(火口直径、混入係数、水深、質量流量)を整理するとともに、流れの安定性についても検討していく予定である。