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[SVC29-P05] 気泡と結晶を含む玄武岩質安山岩マグマの動的粘弾性測定
キーワード:レオロジー、懸濁液、マグマ
マグマのレオロジーは、マグマの移動のしやすさ、破砕の閾値、地震波の伝播特性を決める。よって、火山の噴火ダイナミクス及び地下のマグマのモニタリングにおいて最も重要な物性量の1つと言える。融けたマグマの粘性率測定は数多くあるものの、レオロジーの直接的測定は限られている。1990年代にBagdassarovらにより、比較的低温(≤1050℃)の測定があり、Maxwell流体に近い挙動の報告がある。一方、マグマは気泡と結晶を含む複雑な流体であるが、コロイドや懸濁液で知られているようなマグマ中の粒子が作る構造に依存する性質については、高温におけるレオロジー測定の技術的困難の為、直接的な測定は行われていない。
そこで、本研究では市販のレオメータと高温炉を用いて高温におけるレオロジー測定の方法を開発した。これを用いて、比較的低粘性の玄武岩質安山岩マグマのレオロジーを測定した。サンプルには阿蘇山で噴出した火山灰を使用した。測定は1080~1180 ℃で行った。この温度はソリダスとリキダスの間の温度で、火山灰は融けてメルト中に結晶が浮いた状態になる。また、融ける前の火山灰の間にあった空隙が気泡となる。測定には2種類の方法を用いた。1種類目は、周波数依存性を測定するために、歪み振幅を一定にした状態で角周波数を変えた。2種類目は、歪み依存性を測定するために、角周波数を一定にした状態で歪み振幅を変えた。測定後には冷却したサンプルを観察し、測定中の気泡と結晶量を推定した。
この温度範囲において、固体的から液体的の遷移が観察された。1130 ℃以上では液体的で、1105 ℃では変形速度と歪みによって液体的か固体的かが変わり、1080 ℃では固体的となった。また、固体的に振る舞う1080 ℃の場合、剛性率は107Pa程度と通常用いられている値と比較して極めて低くなった。周波数依存性測定は、複素粘度は角周波数が大きいほど低く、低温ほど角周波数によって変化した。1080 ℃では、測定した角周波数の範囲内で複素粘度が2桁変化した。この結果は、マグマのレオロジーは温度と気泡・結晶量だけでは決まらないことを示す。歪み依存性測定は、周波数依存性測定ほどは依存性が見られなかった。ただし、1080 ℃では、歪み振幅がある一定値を超えると複素粘度が急激に低下した。これは、歪みが大きいことで、マグマ中にある構造が壊れたことが原因であると考えられる。測定した複素粘度がメルトの粘性率に対して何倍であるか、MELTS(Giordano et al., 2008)を利用して求めた。メルトの粘性率は温度低下と共に上昇するため、測定温度におけるメルトの粘性率と比較した。その結果、すべての温度で10倍以上となった。
以上の結果を天然の系へ応用すると、次のようなことが考えられる。気泡や結晶が含まれると、温度低下はメルトの粘性率の上昇だけでなく、粘性率の歪み依存性も大きくする。低温のマグマは大きな歪みで粘性率が低下するという結果は、大地震などによるマグマ溜まりの活性化を説明できる可能性がある。また、マグマを通過するS波速度について、1080 ℃の測定で得られた剛性率を用いると、約40 m/sと推定できる。これは典型的な地殻のS波速度よりも2桁遅い値である。
そこで、本研究では市販のレオメータと高温炉を用いて高温におけるレオロジー測定の方法を開発した。これを用いて、比較的低粘性の玄武岩質安山岩マグマのレオロジーを測定した。サンプルには阿蘇山で噴出した火山灰を使用した。測定は1080~1180 ℃で行った。この温度はソリダスとリキダスの間の温度で、火山灰は融けてメルト中に結晶が浮いた状態になる。また、融ける前の火山灰の間にあった空隙が気泡となる。測定には2種類の方法を用いた。1種類目は、周波数依存性を測定するために、歪み振幅を一定にした状態で角周波数を変えた。2種類目は、歪み依存性を測定するために、角周波数を一定にした状態で歪み振幅を変えた。測定後には冷却したサンプルを観察し、測定中の気泡と結晶量を推定した。
この温度範囲において、固体的から液体的の遷移が観察された。1130 ℃以上では液体的で、1105 ℃では変形速度と歪みによって液体的か固体的かが変わり、1080 ℃では固体的となった。また、固体的に振る舞う1080 ℃の場合、剛性率は107Pa程度と通常用いられている値と比較して極めて低くなった。周波数依存性測定は、複素粘度は角周波数が大きいほど低く、低温ほど角周波数によって変化した。1080 ℃では、測定した角周波数の範囲内で複素粘度が2桁変化した。この結果は、マグマのレオロジーは温度と気泡・結晶量だけでは決まらないことを示す。歪み依存性測定は、周波数依存性測定ほどは依存性が見られなかった。ただし、1080 ℃では、歪み振幅がある一定値を超えると複素粘度が急激に低下した。これは、歪みが大きいことで、マグマ中にある構造が壊れたことが原因であると考えられる。測定した複素粘度がメルトの粘性率に対して何倍であるか、MELTS(Giordano et al., 2008)を利用して求めた。メルトの粘性率は温度低下と共に上昇するため、測定温度におけるメルトの粘性率と比較した。その結果、すべての温度で10倍以上となった。
以上の結果を天然の系へ応用すると、次のようなことが考えられる。気泡や結晶が含まれると、温度低下はメルトの粘性率の上昇だけでなく、粘性率の歪み依存性も大きくする。低温のマグマは大きな歪みで粘性率が低下するという結果は、大地震などによるマグマ溜まりの活性化を説明できる可能性がある。また、マグマを通過するS波速度について、1080 ℃の測定で得られた剛性率を用いると、約40 m/sと推定できる。これは典型的な地殻のS波速度よりも2桁遅い値である。