10:45 〜 12:15
[SVC29-P09] 斑れい岩捕獲岩から探る三宅島火山すおう穴噴火の噴火準備過程
キーワード:三宅島火山、クリスタルマッシュ、噴火準備過程、深成岩捕獲岩
すおう穴テフラは, 三宅島で7世紀に発生した爆発的噴火の噴出物である. このすおう穴噴火では初期に安山岩質マグマを噴出した後, 続いて斜長石メガクリストや斑れい岩捕獲岩を含む玄武岩質マグマを噴出した. すおう穴テフラに含まれている斑れい岩は, 粒間にメルトを含むことからクリスタルマッシュの欠片と考えられ, 地下のマグマ溜まりの情報を有すると期待できる. そこで本研究ではEPMAとFE-EPMAを用い, すおう穴噴火の斑れい岩捕獲岩について岩石学的記載・組織観察および構成鉱物・ガラス組成分析を行った. さらに, これらの斑れい岩の親メルトもしくは共存メルトの化学組成と温度・圧力条件を制約し, この結果に基づいてすおう穴噴火の噴火準備過程を検討した.
本研究試料の斑れい岩捕獲岩は, すおうテフラのユニット2から採取した. これらの試料は, 構成鉱物の組み合わせから, 斜長石, かんらん石からなるアノーソサイト/トロクトライト (Group-A), 斜長石, かんらん石, 単斜輝石からなるトロクトライト/オリビンガブロ (Group-B), 斜長石, 単斜輝石, 斜方輝石, Fe-Ti酸化物からなるガブロノーライト (Group-C) の3グループに分類された. いずれの試料でも鉱物粒間は発泡したメルトで埋められていたが, Group-AとBでは著しく結晶化が進んでいたのに対し, Group-Cはガラス質であった. また, いずれのサンプルでも, Fe-Ti酸化物を除く構成鉱物中にメルト包有物が確認できた.
斑れい岩中の斜長石のAn# [=100Ca/(Ca+Na)] は, Group-A (~93-97) とGroup-B (~89-97) でおよそ一致するのに対し, Group-C (~72-89) は低い値を示した. 一方で, かんらん石のFo#は, Group-A (~82-85) に比べて, Group-B (~75-81) の方が低かった. 単斜輝石のMg#は, Group-B (~78-83) に比べてGroup-C (~73-78) の方が低かった. メルト包有物の化学組成は, Group-Aで玄武岩質, Group-Bで玄武岩質から玄武岩質安山岩質, Group-Cで安山岩質からデイサイト質であり, Group-AからB, Cの順に分化が進んでいた. Group-Cの粒間ガラスは, メルト包有物とほぼ同じ化学組成範囲を示した.
Group-Aの斑れい岩の構成鉱物およびかんらん石中のメルト包有物は, 斜長石メガクリストとこれに含まれるかんらん石, かんらん石中のメルト包有物とそれぞれの化学組成が一致する. このことから, Group-Aの親メルトの化学組成は, 清野ほか (2021火山学会) で見積もられた斜長石メガクリストの親メルト (SiO2~49.0wt%, MgO~7.2wt%) と同じと考えられる. 一方で, Group-Bの斑れい岩の親メルトについては, かんらん石中のメルト包有物の化学組成に基づく検討から, Group-Aの親メルトよりやや分化した玄武岩質組成 (SiO2~50.0-52.2wt%, MgO~5.0-5.8wt%) と見積もられた. Group-Cの斑れい岩は, その粒間ガラス組成から, 安山岩質メルト (SiO2~62.1wt%, MgO~2.6wt%) と共存していたと考えられる. これらのメルトの化学組成は, 三宅島火山の噴出物のソレアイト系列のトレンドと整合的である. このことは, この組成トレンドが結晶分化作用によることを示唆する. 親メルトについて見積もった温度・含水量条件はそれぞれ, Group-Aで~1110ºC, 4.9wt%, Group-Bで~1060-1090ºC, ~4.4-5.4wt%であった. また, Group-Cの粒間メルトでは, ~1000ºC, 4.7wt%の条件が見積もられた. 見積もられたメルト含水量からH2O飽和深度を求めたところ, 試料間で有意の差が見られず, ~8 ± 3 kmの値が得られた.
以上の結果に基づき, すおう穴噴火時の三宅島の噴火準備過程を提案する. すおう穴噴火より前に, 三宅島火山下の深さ~8 kmでGroup-Aの親メルトがマグマ溜まりを形成した. その後, このメルトが冷却・結晶作用をおこし, Group-A, B, Cのクリスタルマッシュ層と残液である安山岩質メルトが形成された. すおう穴噴火の際, このマグマ溜まりに新たに玄武岩質マグマが再注入することで, 初期にマッシュ層の上にあった安山岩質メルトが押し出されて噴出した. その後, 玄武岩質マグマがマッシュ層を貫いて, マッシュの欠片である斑れい岩を捕獲して噴出した.
本研究試料の斑れい岩捕獲岩は, すおうテフラのユニット2から採取した. これらの試料は, 構成鉱物の組み合わせから, 斜長石, かんらん石からなるアノーソサイト/トロクトライト (Group-A), 斜長石, かんらん石, 単斜輝石からなるトロクトライト/オリビンガブロ (Group-B), 斜長石, 単斜輝石, 斜方輝石, Fe-Ti酸化物からなるガブロノーライト (Group-C) の3グループに分類された. いずれの試料でも鉱物粒間は発泡したメルトで埋められていたが, Group-AとBでは著しく結晶化が進んでいたのに対し, Group-Cはガラス質であった. また, いずれのサンプルでも, Fe-Ti酸化物を除く構成鉱物中にメルト包有物が確認できた.
斑れい岩中の斜長石のAn# [=100Ca/(Ca+Na)] は, Group-A (~93-97) とGroup-B (~89-97) でおよそ一致するのに対し, Group-C (~72-89) は低い値を示した. 一方で, かんらん石のFo#は, Group-A (~82-85) に比べて, Group-B (~75-81) の方が低かった. 単斜輝石のMg#は, Group-B (~78-83) に比べてGroup-C (~73-78) の方が低かった. メルト包有物の化学組成は, Group-Aで玄武岩質, Group-Bで玄武岩質から玄武岩質安山岩質, Group-Cで安山岩質からデイサイト質であり, Group-AからB, Cの順に分化が進んでいた. Group-Cの粒間ガラスは, メルト包有物とほぼ同じ化学組成範囲を示した.
Group-Aの斑れい岩の構成鉱物およびかんらん石中のメルト包有物は, 斜長石メガクリストとこれに含まれるかんらん石, かんらん石中のメルト包有物とそれぞれの化学組成が一致する. このことから, Group-Aの親メルトの化学組成は, 清野ほか (2021火山学会) で見積もられた斜長石メガクリストの親メルト (SiO2~49.0wt%, MgO~7.2wt%) と同じと考えられる. 一方で, Group-Bの斑れい岩の親メルトについては, かんらん石中のメルト包有物の化学組成に基づく検討から, Group-Aの親メルトよりやや分化した玄武岩質組成 (SiO2~50.0-52.2wt%, MgO~5.0-5.8wt%) と見積もられた. Group-Cの斑れい岩は, その粒間ガラス組成から, 安山岩質メルト (SiO2~62.1wt%, MgO~2.6wt%) と共存していたと考えられる. これらのメルトの化学組成は, 三宅島火山の噴出物のソレアイト系列のトレンドと整合的である. このことは, この組成トレンドが結晶分化作用によることを示唆する. 親メルトについて見積もった温度・含水量条件はそれぞれ, Group-Aで~1110ºC, 4.9wt%, Group-Bで~1060-1090ºC, ~4.4-5.4wt%であった. また, Group-Cの粒間メルトでは, ~1000ºC, 4.7wt%の条件が見積もられた. 見積もられたメルト含水量からH2O飽和深度を求めたところ, 試料間で有意の差が見られず, ~8 ± 3 kmの値が得られた.
以上の結果に基づき, すおう穴噴火時の三宅島の噴火準備過程を提案する. すおう穴噴火より前に, 三宅島火山下の深さ~8 kmでGroup-Aの親メルトがマグマ溜まりを形成した. その後, このメルトが冷却・結晶作用をおこし, Group-A, B, Cのクリスタルマッシュ層と残液である安山岩質メルトが形成された. すおう穴噴火の際, このマグマ溜まりに新たに玄武岩質マグマが再注入することで, 初期にマッシュ層の上にあった安山岩質メルトが押し出されて噴出した. その後, 玄武岩質マグマがマッシュ層を貫いて, マッシュの欠片である斑れい岩を捕獲して噴出した.