日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC29] 火山噴火のダイナミクスと素過程

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (14) (オンラインポスター)

コンビーナ:新谷 直己(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、並木 敦子(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻)、田中 良(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、村松 弾(東京大学地震研究所)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[SVC29-P10] 繰り返し発生する爆発的噴火におけるマグマ上昇過程の変化:有珠火山1977年噴火の例

*堀田 修平1奥村 聡1、宮本 毅1、新井田 清信2 (1.国立大学法人東北大学、2.ジオラボ・アポイ岳(様似町地質研究所))


キーワード:爆発的噴火、マグマ噴出率、減圧率、石基結晶組織

火山噴火はマグマ溜まりで生じた過剰圧の解消によって発生すると考えられる. そのためマグマ噴出率は時間と共に減少すると予想されるが, 実際の噴火において噴出率は複雑な振る舞いを示す. 例えば有珠火山1977年噴火では3回のサブプリニー式噴火に続いてブルカノ式噴火が発生し, 再びサブプリニー式噴火が発生した後, 2回目のブルカノ式噴火が発生した. つまり, 1977年噴火の噴出率は一旦減少した後に増大し, 最終的には再び減少していた. このような噴出率の変動が発生するメカニズムを理解するために, 本研究では有珠火山1977年噴火の噴出物の岩石学的研究からマグマ上昇過程を調べた.

本研究で用いた試料は, 噴火当時に採取され, 完全に噴火推移との対応がついている試料である. バルク密度を測定し, 最頻値の密度をもつ軽石から2–4粒を選択した. それらの試料を樹脂に埋包, 研磨した後, 電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて反射電子線画像を得た. 1試料に対して4枚の画像を, 1000倍の倍率で取得した. また, 斜長石斑晶中のメルト包有物の含水量を, 反射赤外分光法を用いて測定した. 含水量決定に必要な検量線は, 濃度既知の含水流紋岩ガラスを用いて作成した. また, 上記とは別の試料に対してXRFを用いて全岩化学組成の測定も行った.

分析の結果は次の4点にまとめられる. (1) 全岩化学組成には明瞭な時間変化は見られず,メルト包有物中の含水量は噴火推移とともにやや減少した. (2) 軽石のバルク密度分布は3回目と4回目のサブプリニー式噴火の噴出物がやや高い空隙率を持つことを示した. (3) 斜長石マイクロライトの結晶数密度は噴火推移に伴って増加したが, 4回目のサブプリニー式噴火以降では減少した. (4) 結晶度は噴火推移に伴い, わずかに増加した. 以上の結果から,斜長石マイクロライトの結晶数密度と減圧率の間に正の相関関係があると仮定すれば, 噴火が進むにつれてマグマ減圧率が変化していたと考えられる. つまり, 最初のサブプリニー式噴火から3回目のサブプリニー式までは減圧率が増加し, 続くブルカノ式噴火と4回目のサブプリニー式噴火では減圧率がほとんど同じであったと考えられる. 最後のブルカノ式噴火では, 上昇速度は減少した. 3回目と4回目のサブプリニー式噴火の間に発生したブルカノ式噴火では,メルト包有物中の含水量に変化が見られず,また減圧率の減少が見られないことから, 3回目のサブプリニー式噴火からブルカノ式噴火への遷移はマグマ溜まりの過剰圧の減少によって引き起こされたものではなく, 火道の閉塞のような外的な要因によるものであると考えられる. 本研究の結果は, マグマ噴出率と噴火様式の時間変化はマグマ溜まりの状態と火道の崩壊などの浅部過程の二つの要因によって支配されている可能性を示している.