日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC29] 火山噴火のダイナミクスと素過程

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (14) (オンラインポスター)

コンビーナ:新谷 直己(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、並木 敦子(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻)、田中 良(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、村松 弾(東京大学地震研究所)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[SVC29-P13] 十和田火山御倉山溶岩ドームディクティタキシティック組織部の浸透率と空隙構造

*関谷 夏子1中村 美千彦2新谷 直己2竹内 晋吾3諏訪 由起子4 (1.東北大学理学部地球惑星物質科学科、2.東北大学理学研究科地学専攻、3.電力中央研究所、4.セレス)

キーワード:浸透率、空隙率、蒸発―凝縮、脱ガス、ガスピクノメーター

溶岩ドームの形成は、沈み込み帯での普遍的な火山噴火様式の一つである。ブルカノ式爆発やメラピ型火砕流を伴うことがあり、ドーム溶岩の爆発性や自破砕性を左右するガス浸透性構造を理解することは重要である。十和田火山御倉山溶岩ドーム(後カルデラ期・7.6cal kyr BP; 工藤, 2010)では、新鮮な溶岩ドーム内部が露出しており、ディクティタキシティック組織と呼ばれる多孔質な石基組織が観察される(宮城・工藤, 2013)。この組織は、近年その脱ガスや溶岩ドームの爆発性に対する効果が注目されている。櫻井ほか(2019 JpGU)は水熱実験によって本組織の形成条件を調べ、中村ほか(JpGU2022)では浸透率の予察的な測定結果を報告した。本発表では、露頭での産状と浸透率の測定値・ガスピクノメーターによる空隙構造の分析結果を併せて、蒸発―凝縮作用によるメルト成分の再配置と脱ガス経路を検討する。
調査した露頭は同溶岩ドームの南南東から西北西縁にかけて露出する比高約50 mの急崖部の一部である。露頭表面の大部分は平滑であり、冷却節理の表面が露出していると考えられる。表面の大部分は薄赤紫色で、一方、破断面内部は灰色であった。連結・全空隙率;浸透率は、灰色試料で約30~34%,32~36%,4.78×10-15~9.65×10-15m2、赤色で23~27%,27~30%,1.22×10-15~2.68×10-15m2であり、灰色試料は赤色試料に比べて統計的に有意に空隙率・浸透率ともに高かった。空隙率に対する浸透率の値は、溶岩ドームからの脱ガス経路の一つとされているtuffisite脈の報告値(Kendrick et al., 2016)よりも少なくとも2桁程度低いが、本組織が溶岩ドーム内部で広汎に形成されているとすれば、脱ガスに対する効果は無視できないものとなる。また孤立空隙率はごく小さく、絶対浸透率の低さは空隙の開口径が小さいことによるサイズ効果によるという中村ほか(2022JpGU)の結論を支持する。
ディクティタキシティック組織を持つ試料の空隙率は、もともとのマグマが持っていた気泡量と、その後の蒸発凝縮作用による変化の二段階で考えることができる。赤色と灰色の試料の露頭での分布は、節理の表面と内部の違いなので、初期の気泡量が系統的に異なったとは考えにくく、蒸発凝縮作用によると考えられる。節理面近傍(赤色試料)は内部(灰色)より冷却が速いことから、赤色と灰色試料の空隙率・浸透率の違いは、赤色部で蒸発作用が進行しなかったか、あるいは節理面を流れるガスからの凝縮作用が内部より効果的に進んだかの二つの可能性がある。今後、FE-SEM-EDSを用いた分析によりこの点を検討し、空隙率・浸透率の時間発展をモデル化する予定である。