日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山の熱水系

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、神田 径(東京工業大学科学技術創成研究院多元レジリエンス研究センター)、大場 武(東海大学理学部化学科)、座長:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、大場 武(東海大学理学部化学科)、神田 径(東京工業大学理学院火山流体研究センター)

14:42 〜 15:00

[SVC30-04] 統合物理探査による九重火山深部地下構造と地熱系概念モデル

*西島 潤1、北村 圭吾1相澤 広記1石橋 純一郎2、Prasitwuttisak Wipoo1辻 健3池田 達紀1副田 宜男4、稲垣 陽大4、齋藤 博樹4 (1.九州大学、2.神戸大学、3.東京大学、4.西日本技術開発株式会社)

キーワード:九重火山、大岳・八丁原地熱地域、超臨界地熱資源、地熱系概念モデル

大分県中部に位置する九重火山は、東西約13km、南北約10kmの中に約20個のドーム状火山が存在している。その中の九重硫黄山は現在も活発な噴気地域が存在し、1995年には水蒸気爆発を起こした活火山である。本地域では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による超臨界地熱資源量評価(九重地域)が2021年より進行している。本プロジェクトでは九重火山深部に推定される低比抵抗域(Aizawa, 2022)の辺縁部に存在が推定されている超臨界地熱貯留層の位置や形状をMT探査、反射法地震探査、微小地震モニタリング、重力探査などの各種物理探査や噴気ガスの地化学分析に加えて、既存の地質データ、ボーリングデータなどを統合することによって本地域の深部から浅部までの熱水流動概念モデルの作成し、深部超臨界地熱資源量評価に取り組んでいる。
 まず、Aizawa et al.(2022)で示された本地域の比抵抗分布では、長者原を中心とした直径約5km、海抜下3km以深に20Ωm以下の低比抵抗体が存在している。この低比抵抗体の東縁には九重硫黄山、西縁には大岳・八丁原地熱地域がそれぞれ位置している。この低比抵抗体は重力異常から推定される低密度域とほぼ一致しており、この低密度域の東西及び南側は高密度域が分布しており、古い時代に活動した火山体や本地域の基盤(変成岩及び花崗岩)を反映したものと考えられる。
 また、九州中部の応力は南北伸張場で基本的に東西方向の断層が多く分布しているが、低比抵抗体の西側に位置する大岳・八丁原地熱発電所周辺では南西方向もしくは北東方向の横ずれ成分を伴った正断層が分布しており、これらの断層が地熱貯留層を形成している。これらの断層上に分布する噴気・地獄ガスの同位体分析(H2, He)(Ishibashi et al., 2022)では、マグマ性流体の関与が推定されていることから、これらの断層の一部は基盤深部まで続いており、深部からのマグマ性流体の流路になっている可能性が考えられる。微小地震モニタリングで推定された本地域の震源位置は黒岩山の西側に集中しており、震源は海抜下5kmぐらいまで分布している(Tsuji et al., 2022)。また、一部は九重硫黄山近辺にも集中域が観測されている。これらの震源位置は低比抵抗体の西縁(大岳・八丁原)及び東縁(九重硫黄山)に沿うように分布している。さらに、本地域に掘削された坑井の温度分布から、黒岩山の西側に高温部が検出されており、観測された震源位置はこの高温部に多く検出されている。このことから黒岩山西部には深部からマグマ性流体を伴った高温の地熱流体の上昇路が存在することが考えられる。以上の観測結果及び解釈を先行プロジェクトの地熱系概念モデル(Kitamura et al., 2023)に取り込み本地域の地熱系概念モデルを作成した。
本発表では以上の知見を統合・解釈して作成された地熱系概念モデルについて報告する。