09:00 〜 10:30
[SVC30-P06] 長崎県雲仙地獄に分布する熱水変質帯と温泉水による酸性変質作用
キーワード:火山、熱水変質、雲仙、地熱
雲仙地獄は長崎県島原半島の雲仙火山南西に存在する地熱徴候地である。本地域では白色変質帯が露出し、活発な噴気や温泉水の湧出が確認されている。さらに近年では、新たな噴気帯の露出も確認されている(いぶき地獄)。本研究では、雲仙地獄の形成史を明らかにする目的の一環で、域内に露出する全ての白色変質帯を詳細に記載し変質帯を区分した。さらに、現世における熱水変質反応について併せて議論するため、現世で湧出している温泉水の地球化学的検討を行った。
野外調査では変質岩の産状を観察し、複数地点で試料を採取した。また恒常的な湯だまりでは泉温, pH, ORP, ECを測定した後、温泉水試料を採取した。変質岩試料は肉眼および顕微鏡観察による産状記載と粉末X線回折分析による鉱物同定を行った。あわせて温泉水試料の溶存イオン種濃度を分析し、化学組成による分類と溶存する鉱物種の安定度計算を行った。
変質帯の地表観察から、噴気活動は北部地域でより活発であることが確認された。温泉湧出時の泉温もこれに対応し、北部の方が高い傾向を示した。
XRD分析によって明らかになった構成鉱物組み合わせでは、全ての変質岩にQuartzかCristobaliteのいずれかが含まれ、その分布に偏りがあることが明らかになった。Quartzが含まれる場合鏡下において不定形を示し、熱水変質による二次的な生成が示唆された。さらに変質鉱物であるAlunite, Kaoliniteについても偏った分布が認められた。これらの鉱物の分布に基づき、雲仙地獄全域を珪化帯として定義した。さらにその下位区分としてAlunite, Kaoliniteが分布する領域を酸性変質帯、これらが含まれずシリカ鉱物のみからなる領域を珪化残留帯とした。酸性変質帯はさらに、Aluniteを含む領域を明礬石帯、Kaoliniteを含む領域を粘土化帯に区分した。
温泉水の化学組成は、全て硫酸に著しく富む(SO4 > 300ppm)特徴を示した。対照的にClは1~7ppm程度と乏しいことから、本地域の温泉水は全て火山性熱水から分離された蒸気によって二次的に生成された蒸気加熱水であることが明らかになった。
雲仙地獄全域にわたるシリカ鉱物の分布は、現在露出する全ての変質岩が一様に珪化を受けたことを示している。浅部低温熱水系におけるQuartz-Cristobaliteの相転移は100℃付近が閾値であることから、このQuartzの存在する珪化帯は地上で形成されたものではないと考えられる。
酸性変質帯の分布は、噴気活動の特に活発な領域と概ね一致した。また温泉水の化学組成を用いた溶存鉱物種の安定度計算から、SO4型で酸性の現世温泉水ではPlagioclaseやK-feldsparが溶解しKaolinite, Aluniteが生成する反応が進行することが示唆された。このことから明礬石帯, 粘土化帯は、温泉水が地表で及ぼす酸性変質作用によって現世で形成されていると考えられる。
変質帯区分から、Quartz-Cristobalite境界と明礬石帯, 粘土化帯の境界は斜交することが確認された。この産出状況と珪化作用及び酸性変質作用の進行条件とを併せ考えると、珪化作用を経た岩石が地表付近でさらに酸性変質作用を受けることで形成された、熱水変質作用の重複が存在することが結論づけられる。
野外調査では変質岩の産状を観察し、複数地点で試料を採取した。また恒常的な湯だまりでは泉温, pH, ORP, ECを測定した後、温泉水試料を採取した。変質岩試料は肉眼および顕微鏡観察による産状記載と粉末X線回折分析による鉱物同定を行った。あわせて温泉水試料の溶存イオン種濃度を分析し、化学組成による分類と溶存する鉱物種の安定度計算を行った。
変質帯の地表観察から、噴気活動は北部地域でより活発であることが確認された。温泉湧出時の泉温もこれに対応し、北部の方が高い傾向を示した。
XRD分析によって明らかになった構成鉱物組み合わせでは、全ての変質岩にQuartzかCristobaliteのいずれかが含まれ、その分布に偏りがあることが明らかになった。Quartzが含まれる場合鏡下において不定形を示し、熱水変質による二次的な生成が示唆された。さらに変質鉱物であるAlunite, Kaoliniteについても偏った分布が認められた。これらの鉱物の分布に基づき、雲仙地獄全域を珪化帯として定義した。さらにその下位区分としてAlunite, Kaoliniteが分布する領域を酸性変質帯、これらが含まれずシリカ鉱物のみからなる領域を珪化残留帯とした。酸性変質帯はさらに、Aluniteを含む領域を明礬石帯、Kaoliniteを含む領域を粘土化帯に区分した。
温泉水の化学組成は、全て硫酸に著しく富む(SO4 > 300ppm)特徴を示した。対照的にClは1~7ppm程度と乏しいことから、本地域の温泉水は全て火山性熱水から分離された蒸気によって二次的に生成された蒸気加熱水であることが明らかになった。
雲仙地獄全域にわたるシリカ鉱物の分布は、現在露出する全ての変質岩が一様に珪化を受けたことを示している。浅部低温熱水系におけるQuartz-Cristobaliteの相転移は100℃付近が閾値であることから、このQuartzの存在する珪化帯は地上で形成されたものではないと考えられる。
酸性変質帯の分布は、噴気活動の特に活発な領域と概ね一致した。また温泉水の化学組成を用いた溶存鉱物種の安定度計算から、SO4型で酸性の現世温泉水ではPlagioclaseやK-feldsparが溶解しKaolinite, Aluniteが生成する反応が進行することが示唆された。このことから明礬石帯, 粘土化帯は、温泉水が地表で及ぼす酸性変質作用によって現世で形成されていると考えられる。
変質帯区分から、Quartz-Cristobalite境界と明礬石帯, 粘土化帯の境界は斜交することが確認された。この産出状況と珪化作用及び酸性変質作用の進行条件とを併せ考えると、珪化作用を経た岩石が地表付近でさらに酸性変質作用を受けることで形成された、熱水変質作用の重複が存在することが結論づけられる。