10:45 〜 11:00
[SVC31-07] 姶良カルデラ下の地震波速度構造のイメージング
キーワード:姶良カルデラ、地震波速度構造、マグマ溜り
姶良カルデラは九州南部の鹿児島湾奥に位置する東西20km、南北20kmの広がりをもった火山性陥没地形である。姶良カルデラ南縁に桜島火山が形成され、現在も活発な噴火活動を継続している。1992年以降、姶良カルデラ周辺の地盤の隆起・膨張が続いており、GNSS観測および水準測量から膨張源は姶良カルデラ中心下の深さ約10 kmと見積もられている(例えば,Iguchi , 2013 ; Yamamoto et al., 2013)。桜島および姶良カルデラの構造、桜島火山のマグマ供給系を明らかにするために、2008年11月にダイナマイトを用いた人工地震探査が行われた。人工地震による直達P波の探査深度は深さ3-4 km程度であり、姶良カルデラ直下10km付近に推定されている膨張源まで探査深度が及んでいない。また、地盤変動解析では点圧力源が仮定され膨張源の体積変化量は推定できるが、膨張源の絶対量は未知である。本研究では、自然地震データと人工地震データを併合して、姶良カルデラ下の3次元地震波速度構造の解析を行い、膨張源のサイズや形状の推定を行なった。
南九州一帯において臨時地震観測点を設置し(最大時17点)、自然地震観測を行っている。臨時観測点に既存観測点(桜島火山観測所、防災科学技術研究所Hi-netおよび鹿児島大学のJDXデータ流通網の観測点)のデータを含め、47点における自然地震431イベントのP波、S波到達時を用いて3次元地震波速度構造解析を行った。また、2008年人工地震探査データを合わせることで浅部構造の解像度を向上させた。波線数は自然地震でP波が16,110、S波が11,838、人工地震P波が3,121である。
深さ1 kmでは姶良カルデラ北東部の若尊カルデラ下において、S波速度が遅く、一方でカルデラ北縁ではP波の高速部分が見られる。深さ5 kmではカルデラ内のP波速度およびS波速度はそれぞれ、4.5 km/s~5.8 km/s、2.6 km/s~3.7 km/sにあり、顕著な速度異常は見られない。深さ10 kmでもカルデラ内のP波速度およびS波速度はそれぞれ、5.2 km/s~6.1 km/s、3.4 km/s~3.8 km/sにあり、P波、S波速度ともに顕著な不均質は見られない。深さ15 kmにおいては、カルデラ内のP波速度およびS波速度はそれぞれ、5.4 km/s~6.8 km/s、1.1 km/s~4.4 km/sにあり、姶良カルデラ中央部には特にS波速度が遅い領域がある(LS領域)。P波速度の低下は周辺に対して5~10 %程度であるが、S波速度は1.1 km/s~2.0 km/sまで低下しており、S波速度2.45 km/s以下をLSとすると、速度比で約18 %~55 %低下している。P波速度にはLSの外側の領域に対して5~10 %程度の低下しかないため、Vp/Vsは3.9と大きい。深さ20 kmにおいて、P波速度は姶良カルデラ南部から東部にかけて高速度で、中央部北寄りがP波速度5 km/sとやや低速度が見られる。S波速度については姶良カルデラ中央部に2 km/sと低速度の領域が見られ、Vp/Vs比においてもS波速度が低速のため高Vp/Vsが見られる。深さ25 kmにおける解像度の高い領域は姶良カルデラ内の中央部付近から大隅半島のみであるが、P波は深さ20 kmと同様に中央部北寄りでやや低速度である。S波速度は姶良カルデラ内では3 km/s前後で、東側の大隅半島下と比較すると低速度に見られる。為栗・他(2022)が示しているS波低速度異常LSの領域は、深さ20 km付近ではS波速度2 km/s程度の低速度が見られるが、速度低下は少なく、位置はやや東寄りとなっている。また,速度2 km/s以下の領域は東西南北で約2 kmと小さくなっている。鉛直断面で見るとLS領域は深さ12 kmから22 km付近で見られる。深さ35 kmにおいては、P波は顕著な速度異常は見られないが、姶良カルデラ周辺部は比較的速度が早い。また、S波については桜島南西部において速度が遅い領域があり、Vp/Vs比が3.2と高くなっている。深さ25 km~30 km付近で多数の深部低周波地震が発生しており(例えば,気象庁火山活動解説資料桜島)、高Vp/Vs領域はその震源の直下に位置している。火山下の深部低周波地震の発生メカニズムは流体移動が関連しており(例えば,Nakamichi et al., 2003)、この深さ35 kmの高Vp/Vs領域は流体を示唆している可能性が考えられる。
南九州一帯において臨時地震観測点を設置し(最大時17点)、自然地震観測を行っている。臨時観測点に既存観測点(桜島火山観測所、防災科学技術研究所Hi-netおよび鹿児島大学のJDXデータ流通網の観測点)のデータを含め、47点における自然地震431イベントのP波、S波到達時を用いて3次元地震波速度構造解析を行った。また、2008年人工地震探査データを合わせることで浅部構造の解像度を向上させた。波線数は自然地震でP波が16,110、S波が11,838、人工地震P波が3,121である。
深さ1 kmでは姶良カルデラ北東部の若尊カルデラ下において、S波速度が遅く、一方でカルデラ北縁ではP波の高速部分が見られる。深さ5 kmではカルデラ内のP波速度およびS波速度はそれぞれ、4.5 km/s~5.8 km/s、2.6 km/s~3.7 km/sにあり、顕著な速度異常は見られない。深さ10 kmでもカルデラ内のP波速度およびS波速度はそれぞれ、5.2 km/s~6.1 km/s、3.4 km/s~3.8 km/sにあり、P波、S波速度ともに顕著な不均質は見られない。深さ15 kmにおいては、カルデラ内のP波速度およびS波速度はそれぞれ、5.4 km/s~6.8 km/s、1.1 km/s~4.4 km/sにあり、姶良カルデラ中央部には特にS波速度が遅い領域がある(LS領域)。P波速度の低下は周辺に対して5~10 %程度であるが、S波速度は1.1 km/s~2.0 km/sまで低下しており、S波速度2.45 km/s以下をLSとすると、速度比で約18 %~55 %低下している。P波速度にはLSの外側の領域に対して5~10 %程度の低下しかないため、Vp/Vsは3.9と大きい。深さ20 kmにおいて、P波速度は姶良カルデラ南部から東部にかけて高速度で、中央部北寄りがP波速度5 km/sとやや低速度が見られる。S波速度については姶良カルデラ中央部に2 km/sと低速度の領域が見られ、Vp/Vs比においてもS波速度が低速のため高Vp/Vsが見られる。深さ25 kmにおける解像度の高い領域は姶良カルデラ内の中央部付近から大隅半島のみであるが、P波は深さ20 kmと同様に中央部北寄りでやや低速度である。S波速度は姶良カルデラ内では3 km/s前後で、東側の大隅半島下と比較すると低速度に見られる。為栗・他(2022)が示しているS波低速度異常LSの領域は、深さ20 km付近ではS波速度2 km/s程度の低速度が見られるが、速度低下は少なく、位置はやや東寄りとなっている。また,速度2 km/s以下の領域は東西南北で約2 kmと小さくなっている。鉛直断面で見るとLS領域は深さ12 kmから22 km付近で見られる。深さ35 kmにおいては、P波は顕著な速度異常は見られないが、姶良カルデラ周辺部は比較的速度が早い。また、S波については桜島南西部において速度が遅い領域があり、Vp/Vs比が3.2と高くなっている。深さ25 km~30 km付近で多数の深部低周波地震が発生しており(例えば,気象庁火山活動解説資料桜島)、高Vp/Vs領域はその震源の直下に位置している。火山下の深部低周波地震の発生メカニズムは流体移動が関連しており(例えば,Nakamichi et al., 2003)、この深さ35 kmの高Vp/Vs領域は流体を示唆している可能性が考えられる。