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[SVC31-09] 有限要素法を用いた姶良カルデラ下の低S波速度領域の形状を模した圧力源による地盤変動の検討
キーワード:姶良カルデラ、地盤変動、圧力源形状
姶良カルデラおよび桜島周辺では、GNSSや水準測量などによる地盤変動観測が行われ、茂木モデルを用いた圧力源解析の結果、姶良カルデラ中央部の深さ約10kmに圧力源の存在が示されている。一方、最近の地震学的な研究からは姶良カルデラの地下に低S波速度領域やS波反射面の存在が示唆されているが、これら深さは茂木モデルによる地盤変動観測圧力源の深さとは必ずしも一致しない。姶良カルデラ地下の圧力源モデルを地震学的な地下構造の特徴と整合性の高いものにすることは、姶良カルデラ地下におけるマグマの供給・蓄積量をより精密に推定するうえでの課題となっている。
これまでに我々は、姶良カルデラ地下に扁平率の異なる回転楕円体圧力源をおいたときの地表の変位量を有限要素法を用いて算出し、深さ15km付近に水平方向に長軸をもつ扁平な回転楕円体圧力源によっても観測された地表変位を説明できることを示した。今回、為栗ら(2022)が示した低S波速度領域の形状を模した多面体を姶良カルデラ下の地盤変動圧力源としたモデル計算を行ったので報告する。
有限要素法の計算にはFlexPDE7を用いた。計算領域は、水平方向は姶良カルデラ中央部から東西南北に60km(図1左下図の範囲)、深さ方向は海抜-50kmまでとした。モデル上端の形状は、陸域と鹿児島湾内については地形データを用いそれ以外の領域では海抜0 kmとした。媒質には深さにより剛性率の異なる水平成層構造を用いた。
姶良カルデラ下の圧力源(以下、LS)には、為栗ら(2022)の深さ10、15および20 kmのS波速度を按分して2.45 km/s以下の領域を抽出し、極端な凹凸を平滑化した多面体を用いた。また桜島南岳直下の深さ3.6kmに半径200 mの球形で体積変化量-0.8×106m3の圧力源をおいた。有限要素法の計算では、これらの圧力源の表面にある内部圧力を与え、Hookeの法則に従って節点の変位を算出した。そのうえで、FlexPDE7の最適化機能を用いてモデル計算による地表の変位と観測値の残差二乗和が最小になる圧力源LSの内部圧力を探索し、その時の体積変化量と地表変位を求めた。
このモデルによって計算された地表変位は、全体的には水平変位・上下変位ともにやや南北に伸びたほぼ同心円状のパターンを示し、茂木モデルから得られるものと大きく異ならず茂木モデル同程度に観測値を再現できる。他方、圧力源LSの体積変化量は茂木モデルから推定されるものより約20%大きい。
今回のモデル計算は最近の地震学的知見との整合性は高いと考えられ、このようなモデルによっても姶良カルデラ周辺の地盤変動を従来のモデルと同程度に説明可能なことがわかった。一方で圧力源の体積変化量はモデルによって異なっており、今回のモデルを用いると、姶良カルデラ下へのマグマ供給量は茂木モデルを仮定した場合より10-20%程度大きく推定されることになる。
謝辞:本講演は、原子力規制庁令和4年度原子力施設等防災対策等委託費(火山性地殻変動と地下構造及びマグマ活動に関する研究)の成果の一部です。記して感謝いたします。
これまでに我々は、姶良カルデラ地下に扁平率の異なる回転楕円体圧力源をおいたときの地表の変位量を有限要素法を用いて算出し、深さ15km付近に水平方向に長軸をもつ扁平な回転楕円体圧力源によっても観測された地表変位を説明できることを示した。今回、為栗ら(2022)が示した低S波速度領域の形状を模した多面体を姶良カルデラ下の地盤変動圧力源としたモデル計算を行ったので報告する。
有限要素法の計算にはFlexPDE7を用いた。計算領域は、水平方向は姶良カルデラ中央部から東西南北に60km(図1左下図の範囲)、深さ方向は海抜-50kmまでとした。モデル上端の形状は、陸域と鹿児島湾内については地形データを用いそれ以外の領域では海抜0 kmとした。媒質には深さにより剛性率の異なる水平成層構造を用いた。
姶良カルデラ下の圧力源(以下、LS)には、為栗ら(2022)の深さ10、15および20 kmのS波速度を按分して2.45 km/s以下の領域を抽出し、極端な凹凸を平滑化した多面体を用いた。また桜島南岳直下の深さ3.6kmに半径200 mの球形で体積変化量-0.8×106m3の圧力源をおいた。有限要素法の計算では、これらの圧力源の表面にある内部圧力を与え、Hookeの法則に従って節点の変位を算出した。そのうえで、FlexPDE7の最適化機能を用いてモデル計算による地表の変位と観測値の残差二乗和が最小になる圧力源LSの内部圧力を探索し、その時の体積変化量と地表変位を求めた。
このモデルによって計算された地表変位は、全体的には水平変位・上下変位ともにやや南北に伸びたほぼ同心円状のパターンを示し、茂木モデルから得られるものと大きく異ならず茂木モデル同程度に観測値を再現できる。他方、圧力源LSの体積変化量は茂木モデルから推定されるものより約20%大きい。
今回のモデル計算は最近の地震学的知見との整合性は高いと考えられ、このようなモデルによっても姶良カルデラ周辺の地盤変動を従来のモデルと同程度に説明可能なことがわかった。一方で圧力源の体積変化量はモデルによって異なっており、今回のモデルを用いると、姶良カルデラ下へのマグマ供給量は茂木モデルを仮定した場合より10-20%程度大きく推定されることになる。
謝辞:本講演は、原子力規制庁令和4年度原子力施設等防災対策等委託費(火山性地殻変動と地下構造及びマグマ活動に関する研究)の成果の一部です。記して感謝いたします。