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[SVC31-18] 焼岳火山,2022年5月の活発化前後の噴気活動の変化
キーワード:焼岳、火山ガス、熱水系
北アルプス南部に位置する焼岳は,気象庁の常時観測火山に選定されている活発な活火山である.近年では1907-39年に水蒸気噴火を繰り返し,1962-63年に山頂北側斜面で水蒸気噴火を起こして以降は噴火していないものの,周辺では数年おきに群発地震活動が起こっている(大見,2019).2022年5月末には浅部での地震活動が活発化し,噴火警戒レベルが初めて2に引き上げられるなど(成田ほか,2022),活動の活発化が懸念されている.我々は山頂の噴気活動に着目して2013年から噴気孔の温度・ガス観測や,山頂部の火口の観察を行ってきた(齋藤ほか,2019).今回は2022年に行った噴気分析結果について,特に5月の地震活動の前後での変化に着目して報告する.
焼岳山頂の北峰南に位置する噴気孔は,噴気孔の温度が106-110℃と2021年と比べて約10℃上昇した.7月に行った検知管による測定では,SO2/H2Sが2013年の観測開始以来最も高い値を示し,見かけ平衡温度(AET)が約310℃と2021年と比べて約50℃高い値が得られた.CO2,He,HClは2019年に最も低い値を示してから上昇傾向を示していたが,2022年の分析ではさらに高い値が得られた.山頂北斜面の1962-63火口も同様に,SO2/H2S,CO2,He,HClの上昇が認められた.AETは約300℃と2021年と比べて約30℃上昇した.山頂東の醇ヶ池火口噴気と山頂南西の岩坪谷噴気も2021年と比べてSO2/H2Sの上昇が確認された.これらの結果から,2019年夏前に山頂の噴気活動が低下し,行き場を失った火山ガスが2019年7~8月に山頂北西の黒谷火口で空振を伴う火山性地震活動を引き起こして以降,山頂周辺の噴気は再度活発化の傾向を示していたが,2022年の浅部地震活動に伴って,さらに噴気活動の活発化が促されたと考えている.CO2,He値の上昇から深部からの脱ガスの影響が強まり,水溶性のHClやSO2値の上昇からは浅部熱水系の影響が弱まった可能性が示唆される.
また今年度は産業技術総合研究所で開発された火山ガスの多成分観測装置(マルチガス:Shonohara, 2005)を用いた観測を行い,これまで信州大学で行ってきた検知管法との比較を行った.その結果,検知管による測定値と概ね整合的な結果がマルチガスによる観測で得られた(信大・産総研,2022,第151回火山噴火予知連絡会資料).さらに,岩坪谷噴気からは比較的高濃度のH2が検出され,AETが約410℃と推定された.岩坪谷噴気から得られたAETは,焼岳の噴気の値の中でも最も高い値であり,山体の南西部への高温の火山ガスの供給が示唆される.
焼岳山頂の北峰南に位置する噴気孔は,噴気孔の温度が106-110℃と2021年と比べて約10℃上昇した.7月に行った検知管による測定では,SO2/H2Sが2013年の観測開始以来最も高い値を示し,見かけ平衡温度(AET)が約310℃と2021年と比べて約50℃高い値が得られた.CO2,He,HClは2019年に最も低い値を示してから上昇傾向を示していたが,2022年の分析ではさらに高い値が得られた.山頂北斜面の1962-63火口も同様に,SO2/H2S,CO2,He,HClの上昇が認められた.AETは約300℃と2021年と比べて約30℃上昇した.山頂東の醇ヶ池火口噴気と山頂南西の岩坪谷噴気も2021年と比べてSO2/H2Sの上昇が確認された.これらの結果から,2019年夏前に山頂の噴気活動が低下し,行き場を失った火山ガスが2019年7~8月に山頂北西の黒谷火口で空振を伴う火山性地震活動を引き起こして以降,山頂周辺の噴気は再度活発化の傾向を示していたが,2022年の浅部地震活動に伴って,さらに噴気活動の活発化が促されたと考えている.CO2,He値の上昇から深部からの脱ガスの影響が強まり,水溶性のHClやSO2値の上昇からは浅部熱水系の影響が弱まった可能性が示唆される.
また今年度は産業技術総合研究所で開発された火山ガスの多成分観測装置(マルチガス:Shonohara, 2005)を用いた観測を行い,これまで信州大学で行ってきた検知管法との比較を行った.その結果,検知管による測定値と概ね整合的な結果がマルチガスによる観測で得られた(信大・産総研,2022,第151回火山噴火予知連絡会資料).さらに,岩坪谷噴気からは比較的高濃度のH2が検出され,AETが約410℃と推定された.岩坪谷噴気から得られたAETは,焼岳の噴気の値の中でも最も高い値であり,山体の南西部への高温の火山ガスの供給が示唆される.